第28話
それから4日後。
決められた入院期間を過ごした姫奈は、予定通り復帰した。
どうやら入院は姫奈を過充電状態にしてしまったらしい。
朝、いつもの駅前で会って「おはよう!」と背中を叩かれたとき、翔は肩甲骨が潰れたかと思った。
姫奈のスクールバッグには、みみちゃんから貰った白いもふもふストラップが揺れている。
翔も同じ物をスクールバッグにつけている。そらちゃんのこともあるわけで、つけることを躊躇っていたのだが、せっかくみみちゃんがくれた物だからつけないと悲しませてしまうと思って、つけることにしたのだ。
それからは、姫奈が再びダウンすることもなく、穏やかな日常が続いた。
翔と姫奈は土日もバイトで顔を合わせていたから、会わない日がなかった。
バイトまでの道中や通学路で話しているうちに、岡山でやりたいことが積もっていった。
岡山のスイーツ食べ歩き、遊園地にいくこと、海水浴、など。
うみかぜ公園に行くことを第一として、それ以外の場所でもそらちゃん探索のヒントになる可能性があるので、二人が行きたいところには出来る限り行ってみることにした。
そして今日、終業式が行なわれた。
授業は午前中で終わり、部活がある生徒は部活へ行き、それ以外の生徒は教室に残って勉強をしたり帰宅したりで、皆散らばった。
教室の人が少なくなって席が余っていたので、いつもの仲良し四人組で集まってお弁当を食べた。
クラスの女子人気はあるが無口で友達が少ないイケメン、真面目で友達想いな鉄道オタク、クラスの太陽のような存在の天真爛漫お姫様に、可愛らしいうさぎ系女子。
傍から見たら、どんな接点があるのか不思議に思われそうな四人組だが、どうやら息が合うみたいで、ただ一緒にお昼ご飯を食べているだけなのにとても盛り上がった。
その後、哲太は明日の早朝から電車の写真を撮りに行くらしく、その準備のために一足先に帰ることになった。
「では皆さん、小生はこれにてお先に失礼します。お互い御達者で」
頭を下げて帰ろうとする哲太を、姫奈が「待って」と呼び止める。
「そういえば、哲太くんはみみちゃんの連絡先を知らないんじゃない?」
「は、はい。そうですが」
「それなら、この際だから連絡先を交換して、ついでにみんなでグループ作りましょうよ!」
そう言いながら、すでに姫奈は自分のスマホを取り出していた。
ここにいる四人の中で、お互いに連絡先を知らない組み合わせは、哲太とみみちゃんだけだった。
二人はこの間パンを一緒に食べたときも、連絡先を交換していなかったのだ。二人はあまり自分から声をかけるタイプではないから、きっかけを作れなかったのだろう。
こうして哲太とみみちゃんが連絡先を交換し、四人はグループになった。
哲太は照れ隠しのつもりか、お礼だけしてすぐに帰ってしまった。
みみちゃんは新たに哲太の名前が追加されたチャットアプリの友達リストを見て、「ほわー」と喜んでいた。
「姫奈ちゃん、ありがとうなの!」
「ううん、私はみみちゃんの役に立ちたかっただけよ」
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