第4話 木曜 ~アツアツ!!ラーメン定食~


◆◆◆


♪始業のチャイム♪



「部長ぉ~。」


―お、坂下ちゃんおはよ。どした?元気ないな。


「さっき下で転んじゃって。ランチバック思いっきりひっくり返しちゃったんです…。」


―え?今日お弁当だったの?珍しい。


「はい。たまには手作りもいいかなーって。」


―へー。いいじゃん!見せてよ。


「いやですよ。もう、ぐちゃぐちゃになっちゃったし…」


―いいじゃんか。見せてくれたって。別に減るもんじゃないし。


「絶対にいやですぅー。」


―そうやって言われると、余計見たくなるじゃないかよ。


「……部長。しつこいと、"アレ"ばらしますよ?」


―なんだよ、アレって…あっ!!!


「いいんですか?ばれても」


―いやいや、ごめん、悪かった。ほ、ほら!!弁当食わないんだったら、今日はラーメンおごるよ!!ちょうど新しくできた店のオープン記念の割引券持ってるし!!


「どこですか??」


―魚介系ラーメン屋、その名も【輪理引軒わりびきけん】だ。定価980円のところ、割引価格で630円!!超お得だろ??


「部長、またオヤジギャグ発動ですか?…でも、いいですね♪お昼、楽しみにしてます♪」



◆◆◆


♪食器を洗う音と、流行りのJ-POPの流れる店内♪


―いやー、それにしても、今なかなかこの価格でラーメン食えないよなぁ。昔は安かったんだぞー。ま、俺はラーメン&ギョーザ定食だから通常価格だけどな。


「フー、フー。」


―え、何してんの。


「フーフーに決まってるじゃないですか。」


―1人でラーメン食べに行くくせに、猫舌なのかよ。


「なんか文句ありますか?」


―冷めてから食べればいいじゃん。


「我慢できるわけないじゃないですか。猫舌でも、アツアツのうちに食べるのがいいんです。」


―ふーん。あれだ、子どもの頃、親に魚の骨とか全部とってもらってたタイプだろ。


「そうですよ。悪かったですね。」


―ぷっ。俺がフーフーしてやろっか?


「えっ!!??ちょ…ちょっと部長、何言ってるんですか…!!!やめてくださいっ!!!!」


―ふふっ。坂下ちゃん、いじりがいあんなー。すげー楽しいわー。


「恥ずかしいんで、やめてもらえます??」


―やだ。(笑)


「じゃあ、ファイルの事、ナカムラさんに話しますから。」


―ご、ごめん……


―あ、それより、水、おかわり入れてくんない?はい、コップ。


「聞いてました?ほんとに反省してます?」


―してるしてる。あ!!ちょっと、もう少し丁寧にやれよ…こぼれちゃったじゃねぇか。


「知りません。自分で拭いてください。」



◆◆◆



♪ガラガラと扉が開く音。元気にお礼をする店員の声♪


―あー、うまかった。


「おいしかったです♪ごちそうさまです♪」


「あ、今度は、私におごらせてくださいね♪」


―おー。ありがと。午後からはまた、オンライン研修だったよな?明日さぁ、朝から俺、物件めぐりで外出なんだけど、良かったら一緒にいかね??結構あちこち回る予定だから、雰囲気とかも色々わかると思うし。


「そうなんですね!!ぜひ、同伴させてください!!」


―…ん???同行の間違いじゃね?


「ど…同行っ!!!同行ですっ!!!!すみませんっつ!!!!!」


―いや、わかるけどさ…。じゃあさ、朝8:30に待ち合わせの物件あるから、朝まっすぐ迎えに行くよ。どこに行けばいいか教えて?


「えっ!?」


―あ、ごめんごめん、会社の人に家知られるとか嫌だよね。普通に会社出勤の方がいいよな。ちょっと早くなっちゃうけど、7:50にビルの1階で待ち合わせでもいい?


「あ、いえ、すみません嫌とかそういう意味ではなくて…」


―マジ?じゃあやっぱり迎えに行くよ。俺今日車で直帰するから、その方がタイムロス少ないし。家、同じ方角だったよね?


「はい、清環線しんかんせん早手はやて駅の近くです。わかります?」


―あ、わかるわかる。あの辺、俺の庭だから。


「なんですかそのラッパーみたいなセリフ。」


―じゃあさ、明日8時くらいに早手駅の向かいのロンリーマートに行くわ。ついたらさ、あの名刺の番号に電話すればいい?…てかアレ、マジもん?


「え、嘘だと思ったんですか?」


―いや、そういうわけじゃないけど…なんつーか……



「本物ですよ?なにかあったら、いつでも電話してください♪」



―え!?いつでも!?えっ…と、とりあえず、朝、コンビニ着いたら電話すっから。知らない番号だからって、無視すんなよ??



「もちろんです♪じゃあ、8時頃に電話、待ってますね♪部・長♪」








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