第18話 絶望の聖女
魔王ルミノックスは女だった。
しかもイメージとはかけ離れた女性だ。
な、なんでシスター服?
「アウレア、余の姿に驚いているようだな」
「そ、そりゃな。まさか女とは思わなかったよ。てか、ほぼ人間じゃん」
「そうだ。余は元は人間なのだ。元々は『聖女』と呼ばれていたが、ご覧の通り今は魔王である」
聖女って、あの聖女だよな。教会とかにいる、数少ない聖なる女性。高位の聖属性魔法で奇跡を起こすとまで言われている。それくらいのウワサは聞いたことがあった。
しかし、この女は紛れもなく魔王だ。
レベルがマイナスになっている俺ですら、その気配は分かった。
「驚きました。まさか魔王が女性だなんて」
リディアも同じようにビックリしていた。そうだよな。
「魔王ルミノックス、なぜ聖女が闇落ちして魔王なんかやってるんだ?」
「世界に絶望したからだ」
「なに?」
「この世界の人間はあまりに醜い。この余をもてあそび、道具のように捨てた。だから世界を、人間を恨んだ。そして、余は『絶望の聖女』と呼ばれ、次第に魔王として認知されるようになった」
復讐心が強すぎて人間を襲っていたようだな。その結果がこれか。まあ、人間も悪いかもしれんがなぁ……。
まさか、元が聖女とは思わなかった。
「戻れないのか」
「無理な相談だな。余はこの世界を支配するまでは止まらぬ」
交渉は難しそうだな。
「すまんが、力になれそうにないな。やっぱり俺は悪に堕ちる気はないしな」
「……アウレア、こちら側に来い。お前には特等席を用意してある」
「俺よりもっと強いヤツはいるぜ?」
「いや、お前でなければダメだ。お前のレベルダウンは稀有だからな」
そんなレアな存在だったのか、俺は。
でもなぁ、魔王よりは勇者かな。
……ああ、いや、魔王も美人で魅力的ではあるけどね。
ともかく、俺は断ることにした。
「いや、やめとく」
「どうか頼む。この通りだ……」
ウソだろ、そこまで俺を必要とするのか。意外すぎて困惑したほどだ。
勇者もあんな奴隷娘だし、どうしたものかね。
「うーん、ちょっと考えさせてくれないか」
「本当か」
「ああ、少しだけな」
「それでいい。では、考えがまとまったらこの葉を使うといい」
俺は不思議な葉っぱをもらった。
これはなんだ?
首をかしげているとリディアが教えてくれた。
「それはアオベの葉ですね!」
「アオベの葉?」
「はい。それは座標を記録できるアイテムです。使うとこの船に来られるのでしょう」
なるほどね、転移アイテムというわけか。はじめて見た。じゃ、次に会う時はこれを使えばいいんだな。
「おーけー。じゃ、いったん考える」
「いいだろう。では、また会おう」
俺は魔王の船を後にした――。
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