第17話 魔王ルミノックス
更に三日後。
プレセペの街の中央広場――ではなく、港を指定されたのでそこへ向かった。
港は船がたくさん横づけされ、活気や熱気に圧倒された。すげえな。
しかし、こんなところに魔王ルミノックスが来るのだろうか。
てか、魔王が来ちゃって大丈夫なのかな。
相当な数の人類から恨まれているだろうし、ボコボコされないといいが……あ、いや。魔王だから大丈夫か。力はあるだろうし。
「緊張されていますね、アウレアさん」
「ああ、そうなんだ、リディア。俺、柄にもなく緊張してる。だって相手は魔王だぜ?」
「そうですよね。あの魔王ですもんね……」
リディアも顔を青くしていた。下手すりゃ殺されるだろうしな。ニキシーは恐れて逃げ出したし。
あとは頑張ってくださいにゃ~とか言って消えた。おのれ、ニキシーめ! おやつ抜きだ!
そうして指定された座標にたどり着いた。
そこでしばらく待つと船がやってきた。
あの黒船か?
でけぇ船だなぁ……。明らかに魔王軍らしき帆がはためいているし、邪悪な気配をレベルがマイナスな俺でも感じた。
様子を伺っていると船の中から人影が。あれが魔王か?
それはシュタッと身軽にこちらに降りてきた。
「汝、アウレアか」
フードを深く被り素顔は伺えない。なんだろう、妙な感じがする。あ、いや魔族だから当然だろうけど。
思ったより恐怖は薄まった。なぜだろう。
「そうだ。俺がアウレアだ。手紙はちゃんと目を通した。俺に幹部になって欲しいって?」
「そうだ、アウレア。お前はレベルがマイナスになると聞いた。なのにギガントバッファローを討伐した。正直、意味が分からなかったよ」
「俺も分からんよ」
「なるほど。どうやら、その“呪い”をまだ理解していないようだな」
「そうだ、その為に俺は冒険を続けている。てか、スローライフしたい」
「なにを言う。その力は偉大だ。お前にしかない特別なスキルなのだぞ。可能性の塊だよ」
魔王にそこまで絶賛されるとは思わなかった。大幹部が全滅して人手不足なんだろうけど。だからこそ、俺のような特異体質の人間を魔王軍に迎え入れたいのだろうけど。
いや、けどなぁ……人類の敵になってどうするよ、俺?
いやしかし、人類の希望になる俺でもない。そう、俺まだ何者でもない。ただの村人なんだ。魔王でもなければ勇者でもない。
俺は何になりたいんだろうなぁ。
「ありがとうよ。で、ここで話していていいのか。街の人が気づいて通報されるぞ」
「それは困る。ここで人間たちと戦争を起こすつもりはない。船へ来られよ」
びゅんと飛んでいく魔王。まてや、俺もリディアも飛べないんだよ!
どうしたものかと考えていると縄梯子が降ってきた。これを登れというのか。だりぃ~。
「俺、行ってくるよ。悪いんだがリディアはここ待機していてくれ」
「いえ、私も行きます」
「マジか」
「はい、あなたのそばを離れたくないので」
そこまで真剣な眼差しを向けられては断れんな。よし、行くか。
◆
甲板へ上がると魔王ルミノックスがいた。船の中に案内され、ついていく。
そこで魔王はついにフードを脱いだ。
……え。マジかよ。コイツが魔王だって……!?
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