第16話 勇者現る
――三日後。
俺はまず勇者から話を聞くことにした。そりゃ、そうだ。人類の敵である魔王よりは優先される。
というか、魔王がおっかなすぎてな。なにされるか分からんし。
今日には『転移』で来訪すると聞き及んでいる。
てか、転移なんて出来るんだな……。さすが勇者パーティだ。
プレセペの街の中央広場でしばらく待つ。
リディアとニキシーと共に話しに花を咲かせていると――目の前に大きな青白い光が現れた。……こ、これは?
「アウレアさん、あれは転移空間ですよ~」
ニキシーが教えてくれた。
ということは中から勇者一行が出てくるのか。
だが、いつまで経っても出てこない。
…………ん?
なんだ、誰も出てこないぞ。
俺はその転移空間を覗――『うわああああああああ……!!!』と、なんか飛び出てきたああああああ!?
「ちょ、えええッ!?!?」
ドコドコと転がってくる“なにか”それは小さな影だった。な、なんだぁ!?
そして、俺はそれを受け止めたんだ。
「ぎょふうううううん…………」
「いってえええッ!」
衝撃で俺は腰を打ち付けた。つか、転移空間から何が飛び出してきたんだよ。……ん、なんだこの柔らかい感触。
「……ひゃ! ひゃ、ひゃめてくださいましー…」
「お、女!?」
って、まさか今の感触は胸か!?
立ち上がらせると、その影の正体は奴隷のようなボロボロの格好をした少女だった。だが、とんでもない美少女だった。……え、これが勇者ゴッドフリート?
鎖ジャラジャラだけど……。
「あの、あのぅ」
「君、勇者ゴッドフリートなのかい?」
「は、はい。一応、そういうことになっていますです」
とてもじゃないが勇者に見えなかった。
あと、そういうことって、どういうこと!?
「悪いんだが、勇者っぽくないね」
「よく言われます、えへへ」
いったいどうなってんだか。
勇者らしき物体を観察しているとリディアとニキシーが駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか、アウレアさん!」
「この方がゴッドフリート?」
一人と一匹はこの状況に目を白黒させていた。俺も驚いているよ。こんな奴隷少女が勇者? なんの冗談だよ、これは。
「わたし、勇者ゴッドフリートなんです。本当です!」
「――と、言われてもなぁ」
「……ですよね。やっぱり信じられないですよね」
「本物の勇者はどうした?」
「…………死にました」
「は?」
「だから、殺されたんです。だから、わたしが二代目勇者ゴッドフリートなんです。勇者様にそう言われて……」
な、なんだってー!?
ということは魔王軍の幹部か魔王に殺されたってことなのか。そんなニュースどこも流れていなかったけどな。いや、秘密にされていたのかもしれんが。
「分かった。とにかく勇者なんだな」
「はい。ぜひ、我がパーティにアウレアさんを招きたいんです! あなたがいれば魔王をきっと倒せる」
志はあるようだな。てか、パーティは生き残っているんだな。その仲間たちの姿もないが、他の場所で待機しているのだろうか。
「話は分かった。だが、俺は慎重でね。他からスカウトも来ているんだ」
「そうだったのですか。わたしとしては、ぜひアウレアさんにはパーティに入っていただき、世界平和の為に共に力を合わせていこうと思ったのですが、即答とはいかないようですね」
俺はもともと勇者にも魔王にも興味がない。それは本当だ。けど、こういう機会は滅多にないだろうし、受けておかねばモッタイナイとも感じたんだ。
だからこそ、公平に勇者と魔王から話を聞こうとしたのだが……。まさか一代目の勇者がすでに死亡していたとは。
これは予想外すぎる展開だ。
とにかく、勇者の話は分かった。
次は魔王ルミノックスに話を聞いてみるか――。
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