第15話 勇者パーティか魔王の大幹部か

 ――翌日。


 宿屋のマリンから呼び出された俺。なんと『勇者ゴッドフリート』と『魔王ルミノックス』から手紙が届いたらしい。



「俺宛てなの?」

「はい、そうです。勇者ゴッドフリート様と魔王ルミノックスに認められるだなんて、凄いですね! ていうか、魔王からも来ちゃうとか激ヤバです」


 マリンは少々引いていた。いやいや、俺も魔王から手紙が来るだなんて想定外だよ。てか、来るものなのか……。


 まずは手紙の内容を精査してからだな。


 部屋へ戻り、リディアとニキシーにも同席してもらう。


「わぁ、凄いですね。アウレアさん。勇者様と魔王から手紙だなんて」

「リディアもそう思うのか」

「はい。少なくとも勇者様は世界一ですからね。魔王の大幹部を全滅させ、今は魔王城へ向かっている最中だったとか」


「へえ、詳しいな」


「はい。冒険者ギルドに情報が度々入っていたもので」


 なるほど、そういうことか。元受付嬢のリディアなら知りえる情報なわけだ。俺は田舎の村にずっと引きこもっていたから、そんな噂もまったく聞かなかったけどね。

 そうか、世間では勇者と魔王が戦っていたんだな。

 知らなかったよ。

 正直、興味関心はほとんどなかった。

 俺にはどうでもいいことだったからだ。そんなことよりも、このレベルダウンの呪い体質の謎を解きたい、そう思っていた。


 だが、こう手紙が来てしまっては無視できまい。

 俺はさっそく手紙の内容に目を通していく。


 まずは勇者の方だ。



『はじめまして、私の名はゴッドフリート。勇者をやっている。さっそくだが貴殿の噂を聞いた。レベルがマイナスにもかかわらず、レベル50を超えるボスモンスターを討伐したそうだな。ぜひ、直接会って話をしてみたい。それともしよければ勇者パーティに招きたい。世界平和のためにどうか検討を』



 な、なんだって……勇者パーティに招いてくれる!? マジかよ。そりゃとても名誉なことだ。と、思いたいところだが俺はあんまり実感がなかった。

 うーん、どうなんだろうな。

 今よりも自由がなくなりそうな気がして腰が重い。


 ひとまず保留にして魔王の方の手紙も見てみるか。



『アウレア、汝の噂は聞いた。元大幹部のペットであるギガントバッファローを倒したそうだな。汝は我が魔王軍に相応しい。ちょうど大幹部の席が空いている。一緒に世界を支配しようではないか。返事を期待しているぞ』



 お、俺が魔王軍の大幹部に?

 そや、勇者が全部倒したんだっけ。それで俺を勧誘というわけだ。――いや、まてまて。なんで自ら人類の敵にならなきゃならん!

 世界の支配にも興味がねえな。


「勇者も魔王もアウレアさんが欲しいみたいですねえ」


 ニキシーはきゃっきゃと笑う。

 これ、喜ぶところなの?


「うーーーん。どうすればいいんだ」

「私としては勇者様のパーティに入る方がいいかと思います」


 これはリディアの意見。

 そうだな、無難に勇者パーティがいいかもしれない。どんな人なのかも気になる。それに、俺が強くなれるキッカケになりそうな予感がした。


「ボクは魔王軍でもいいと思います! 内部から組織を変える手だってありますよ~」


 マジかよ。ニキシーはそっちか。確かに魔王の軍門に下り、魔王を説得するのもありか。わざと貢献せず、わざと内部崩壊させるとか。いや、殺されるかな。



 どうしたものか……。



 勇者か魔王か。



 俺はもう少し検討することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る