第2話 スライム討伐クエスト!?

 少し歩くと隣の村に到着。

 俺が住んでいた村よりも少し大きく、人の往来も多い。


 お店もすぐ見つかった。

 武具店もあるようだな。


 だが、先にお金を稼ぎたい。

 俺は一文無しだからだ。

 簡単なクエストを受けられる冒険者ギルドへ向かった。


 こんな村にも冒険者ギルドがあるとはな。


 中に入ると美人の受付嬢がいた。


「いらっしゃいませ、冒険者様。ご用件を伺います」

「クエストを受注したい」

「では、この中からお選びください」



 ①スライム討伐クエスト

 ②畑仕事(重労働)

 ③多分おつかいクエスト



 ……この三つか。

 って、②と③は論外だろう。なんだよ“重労働”って。あと“多分”って……。

 怪しすぎるので却下だ!


 ここは①でいくか。



「じゃ、①でよろしく」

「分かりました。村周辺で暴れまわっているオークの討伐をお願いします」

「おう――って、オーク!?」


 受付嬢さんはボードの【スライム】という部分のシールをめくった。そこには【オーク】と書かれていた。


 なんだそりゃあ!?


「二十体の討伐をお願いしますね!」


 んな、笑顔で!

 まあいいか。

 レベルダウンしまくって強くなっている俺なら、オークをぶっ倒せるはずだ。多分な!


 冒険者ギルドを去り、村の外へ。



 外は少し日が傾いているが、まあ大丈夫だろう。


 オークを探すと、すぐに出現。

 こんな近くにいるんだな……。



『グオォォォ!』



 白目をむき、ヨダレをダラダラと垂らすオーク。こ、怖っ!

 そういえば聞いたことがある。

 オークは村人を襲い、特に女性を狙うとな。

 酷い目に遭っていると聞いている。

 そうか、この村はオークの被害に。

 だから、あの受付嬢のお姉さんはオークと討伐して欲しかったわけだ。てことは、②も③も結局【オーク】かよ! ふざけやがって!



「うおおおおおおおおおおお!!」



 むかついた俺は“素手”で向かった。

 人間、最終武器は『ゲンコツ』しかねぇッ!



『グオオオオオオオオオオオオオ!!』



 オークも斧を振り上げて襲ってくる。



「そんなものォ!!」



 拳をオークの腹にぶちこみ、物理ダメージを与えた。

 オークは吹き飛び、転がり、そして倒れた。


 すぐに塵となって消えた。



【LEVEL DOWN!!】


【アウレア:Lv.-15】 → 【アウレア:Lv.-16】



 分かっているが、レベルがマイナスになるって悲しいな。だが、これが俺の強みでもある。レベルダウンすればするほど強くなっていると実感があった。


 この調子でオークを倒していく!


 奔走を続け、俺はオークを素手で次々に倒していった。

 日が暮れる頃には二十体のオークを完全討伐した。



『ギャアアアアアアアアアアア!!』



 最後のオークが塵となって消えた。



「よしっ!! ふ~、終わった!」



 体を伸ばしていると、拍手が巻き起こっていた。なにごと!?


 振り向くと、村の住人たちが俺を歓迎していた。



「すげえよ、兄ちゃん!」「マジかよ。あの狂暴なオークをやっつけちまったよ!」「これで村が平和に!」「これでもう娘たちを生贄にしなくていい……」「あの人こそ英雄よ!」



 えぇ……。


 とにかく俺は冒険者ギルドへ向かった。


 帰って分かったことだが、そこは正規の冒険者ギルドではなかった。受付嬢もニセモノ。どうやら、村長の娘のようだった。



「どういうことだよ」

「騙すことになって申し訳ありません。でも、あなたのような英雄を村はずっと待っていたんです」


「なるほど、オークによる被害が甚大すぎてクエストような形でヘルプを募っていたと」

「そういうことです。本当にごめんなさい」

「報酬は貰えるんだろうな?」


「もちろんです。テスラ金貨を10枚です」

「マジで!?」

「はい。私の恋人が残してくれたものです」



 彼女の恋人はオークに立ち向かって命を落としたという。なんてことだ。



「そんなものを受け取れないよ」

「いいんです。あなたような英雄に使ってもらえるなら嬉しいです」



 お嬢さんは笑顔で祈るよう言った。

 まあいいか。オークを討伐したのは事実だし。

 俺はありがたく受け取った。



「じゃ、俺は村を出る」

「その一泊しませんか。歓迎しますよ」

「うーん。そうだな、一泊くらいなら」

「よかった。では、私の家に案内します」



 村長のお嬢さんの後についていく。

 彼女の家は村でも一番大きい。そりゃそうか。


「ところで名前は?」

「私はクリーミーです」


 なんだか甘そうな名前だ。でも彼女らしい。

 俺はクリーミーの家のお世話になることになった。


 美味しい料理、温かい風呂、ふわふわのもこもこの寝床。さすが村長の家だけあって快適すぎた。なんだこれは……。俺は今までこんな温かみのある家で過ごしたことがなかった。


 そして、驚いたことに村長の家には不思議なペットもいた。なんだこの猫は。


「ども。ボクはニキシーです」

「シャ、シャベッタアアア!?」

「はい。喋れるんです。この度はクリーミーお嬢様を助けていただき、ありがとうございます」


「いや、助けたというか、俺がハメられたというか」

「結果的にオークを倒し、多くの若い女性を守った事実は変わりません」


 この猫……あ、いや、ニキシーは知性が高いようだな。なるほど、つまり妖精だとか精霊の類か。


「そりゃよかった。でも、俺はひきこもりのニートに変わりないさ。英雄だなんて……」

「レベルもダウンし続けているようですね」


「……!? なぜ、それを!」


「あなた、呪いに掛かっていますね」



 お、俺が……呪いに掛かっているだと!?


 この猫、なにか知っているらしい。聞き出さねば、俺のこの謎体質のことを。

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