第24話 カットアップ/「魔女旅に出る」「エビ星人の野望」
1. もうよせ。見つかる。嘘よ。なんで分かるの!? 車内の自由席はほとんどがら空きだった。背に腹は変えられないというやつで、僕はぶくぶくとうがいを始めた。 それから、黄ばんだエナメル質の欠片。僕はスマートフォンを手に取った。組の袋に手を伸ばした。
2. あの子きっと怖がっている。駄菓子のうそくさい香料で犯された口のなか、咀嚼を続ける上あごに鋭い痛みが走った。息苦しかった。田んぼと雑木林ばかりの風景。声もなにも感じられなかった。
3. 三日も経てば、なにかアイデアも浮かんでくるはずだ。三色そぼろ弁当、青森のホタテ弁当に食指が動きもした。叫びたくなる。母親がきれいといった手のひら。組の袋に手を伸ばした。僕はスマートフォンを手に取った。
4. こっち側はもうあいつらに占領され尽くしている。母親はそう評価した。ちがう。まずはここを逃げよう。どうにか橋の向こう側に行かなくては。 ひたすら貪ったからパックの袋はお腹と背中がくっつくくらいにしぼんでいた。
5. 電話を見つけないと……ミハルは、あれ?いつもとは感覚が違った。体のぬくもりも、心を踊らせるニオイもなにも感じられなかった。 しかし、弁当は一箱あたり千円以上する。
6. 無理に手を伸ばした。それはグミの包装パックだった。ご飯も当分お預けだろう。平日の昼間というのはこんなに利用客が少ないのだろうか?僕はこうして買い物を済ませ、新幹線に乗った。タケヨがいないの。
7. 僕は自分の手のひらをじっと見る。ミハルは顔を赤らめた。タケヨは生きている。新幹線よ、止まってくれ。長い髪の美しい少女。叫び出したりなんかしたらダメ。だってここにいるはずがないもの。冷たかった。
8. 水の鮮度が落ちていた。駄菓子のうそくさい香料で犯された口のなか、咀嚼を続ける上あごに鋭い痛みが走った。 じっと見つめている僕はもう戻ることはない。この景色を見るのは最後になるのだろう。
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