第3話

「ねぇ、おねぇこん大丈夫?さっきからキョロキョロしてたでしょ。もしかして道に迷っちゃった?オレらさっきからおねえさんのこと見てたけど心配になっちゃってさ。 この辺、変なヤツも多いから」


「あの、本当にそのとおりで。私、東京は初めてで道に迷ってしまって。スマホの電池もなくなっちゃったし、 どこをどう行ったらいいか分からなくて」


ニヤニヤした男がもう一人に目配せする。


「えーそれはタイヘンじゃん!オレたち充電できるとこ知ってるよ。 ね、そこ案内するからさ、充電してる間オレたちと飲もうよ。 そこ酒もあるし。もち、オレらのおごりだから。おねぇさんは何も 心配することないって。ねっ」


「親切にありがとう。でも私ちょっと用事があって。明日も早いし、最寄りの駅を教えてもらえたら、それでいいですから」


「そんな遠慮しないで、1時間くらいぜんぜん平気でしょ。終電だってまだ先だよ」


 いえ、本当に大丈夫…と断っているのに男たちは執拗にさんごを誘ってくる。


(うおぉ、これはなんだか良くないような気が)


押し問答をくり返すうちに、 気がつけば男たちはさんごの左右両側を固めるように立ち、さらに人気のない暗がりの方へじりじりとさんごを追いやっていた。


この二人には何か違う目的がある。

いよいよ鈍感なさんも、自分の危機的状況が理解できてきた。そして自分がいかにてバカだったかも。


(ああ、どうしよう、どうしよう。まだ何も出来てないのに)


あのままおとなしく店についていった方が逃げるチャンスがあったかも。

でも店もグルかもしれないし... まとまらない考えが頭の中を滑っていく。


 二人の男が目の前に立ちふさがり、品性の欠片もない目でさんごを見下ろしている。 獲物をすでに手にした捕食者の目だった。

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