第2話
さんごは薄情なネオンの光を薄ぼんやり反射させている空に向かって助けて!!と叫びそうになった。 その時だった。
「おねえさん」
さんごの後ろから声がした。
ぱっと振り向いた。さんごのポニーテールで風切る音が出たくらい。 助け舟、天のはからいとばかりに期待を込めて声の主を見た。
後ろには二人の男がいた。
一人が声をかけた方で、もう一人が振り向いたさんごをニヤニヤして見ている方だ。
どちらも甲乙つけがたいほど似たり寄ったりの風体だった。
どちらも日に焼けており、だぼっとしたシャツに体に合っていない(とさんごは思った)ジーンズ。
ビルのネオンに負けている電灯の下でもピカピカと発光する大ぶりの腕時計を身につけ、もう一人のニヤニヤしている方は腕時計に重ねて一粒がブドウぐらいある石の茶色の数珠をはめていた。
そして二人とも真新しいキャタピラみたいなゴツゴツしたスニーカーをはいていた。
ところで鈴野さんはかわいい、というかわかりやすく美人の部類に入る容姿をしていた。
背丈は160cmほどで胸もそこそこにあり、スタイルも良かった。
彼女がスキニージーンズをはいても決して無理してはいているとは誰も思わないだろう。
ただファッションセンスだけは、周囲にいまいち違う印象を与えているかもしれない。
なんというか20年か30年前ならしっくりとこの街に馴染んだろうに。
良心のある人間が、あるいは嫌味な人間が評すれば彼女は海外育ちなのね、とフォローするかもしれない。そういう服だった。
さんごに声をかけた男二人も、コレじゃないんだよな…という感覚を味わっていた。いや、でもここは東京。しかも渋谷。
ありとあらゆるセンスとモラルの人間が服を着て歩いている。
時代遅れの服を着た女なんて脱がせてしまえばたいした問題ではないではないか。
それに別の観点に立ってみれば、たいへん都合の良い服だった。
その日さんごは大きめの襟のついた、膝よりも短いぴったりとした白いワンピースを着ていた。
どこかズレたセンスの白いワンピースは薄暗い路地にさんごの体の線を見事に浮かび上がらせていた。
くだらない絆で結ばれている仲だけあって、二人は同じことを考えていた。
(この女は上玉だ!)
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