第17話 誕生日回②

「旦那、2人と話をしてきたぞ」


「おかえり」


「うむ。して、気になったりはせんのか?」


「いいかな。だいたい予想はつくし」


「そうか……。面白くないのう」


「そんなところに面白さいらないでしょ」


「それもそうか」



 納得したのか、ソラは首を大きく縦に振っている。

 先程の事だが、多分『俺のお嫁さんにー』とかいう話だろう。ちょっとばかし、修羅場になるのではと思って、外野から高笑いする準備をしてはいただけに残念だ。しかし意外にあっさりしすぎているような。まぁ、2人はまだ4歳だもんな。これ以上は難しいか。期待しすぎるのもあまりにも酷か。



「冬人、ソラさんや、ちょっとこっちへ来てくれるかい?」


「うん」「うむ」



 それから、親戚の人達に軽い挨拶とソラの紹介などを行った。


 途中、テレビに出てた記憶がある人がチラホラいたような気もしなくもないが、考えないでおこう。『おばあちゃん何者?』とは決して思っておりません。ますます、おばあちゃんが何してる人なのかわからなくなってきた。あぁ、恐ろしやー。



◇◇◇



「あぁぁぁー。づかれだー」


「まったくじゃー。多かったのう」


「それな。どんだけいんだよ」


「わしの親戚含めた家族じゃって、あんなにおらんぞ」


「ソラの家族か…………いつか挨拶いける?」


「………そうじゃな……いずれな」


「りょうかい」



 どこか含みがあるような言い方だったが、こういうのはあまり踏み込みすぎない方がいいとは経験上わかる。本当に一瞬だが、ソラの顔が曇ったのも確認できた。まぁ、いろいろあるかと今は納得しておく事にした。


 さて、今は控え室というか、スタッフルームというか、とりあえずくつろげる場所でダラダラしている。ここにいるのは、くつろぐ目的もあるが、新しい服に着替えるという目的もある。夏美たんも別室で着替えております。お兄ちゃんとしては、いち早く妹の晴れ姿、晴れ姿? まぁ、いいか。とりあえず見たい!



「旦那、似合っておるな」


「俺的には孫にも衣装って感じだけどね。5歳児にスーツはまだ早いと思うんだけど」


「先入観じゃぞ!」


「ソラ、ちょっと楽しくなってきてるだろ……」


「普段見ぬ姿ではあるからな。いろいろ、見てみたくなるもんじゃろ。ちょっと新鮮で興奮するのう」


「そうですかいな」


「そうじゃぞ」


「ソラも似合ってる」


「そうかいそうかい」



 ソラは嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。最近ではあるのだが、ソラのデレ期に突入したのではないかなと思っている次第であります。

 素直に喜んでくれるし、頻繁に褒めてくれる。俺としては嬉しいけど、照れたソラを揶揄うのがなかなかに楽しかったので復刻もとい、たまにでいいから照れて欲しい……最近、カウンターくらってばっかりだから、ちょっと悔しいのもあったりする。



「行くか」


「えー。もうちょっとダラダラしてようよー」


「夏美も準備出来ておるようじゃぞ。それに、旦那も主役ではないか」


「へーい」


「ほら、行くぞ」


「りょーかい」



 それから、ソラに連れられ楽屋(?)を出た俺とソラ。廊下ではおばあちゃんとお母さん、それから本日の主役である、夏美も待っておりました。おっと、俺も一応は主役だったね。



「夏美かわいい!!」


「おぉ! 夏美かわいいのう!」


「にぃに!」



 そう言う夏美におばあちゃんが耳元で何か伝えていた。


 そして、しばらくしてその場をクルりと回る夏美たん。からの、ニコり。あきまへん。あきまへんわ。完全にヤりにきている。お兄ちゃんのライフはもうゼロよ。


 俺はかろうじてサムズアップをする事ができた。

 どうやら、ソラも同じようでともにヤられたらしい。


 全く、恐ろしい妹さんです事。誰ですか、こんなかわいい妹を持っているのは! そう私です。私なのです!



「夏美かわいいね」


「うむ」



 少し、冷静さを取り戻しやっとの思いでこの一言がでた。



 そんなわけで着替えを済ませた俺たちは記念にパシャり。こちらもパシャり。あー、こちらも、あ、こっちも。え、こっちも?

 とまぁ、写真を撮られてる。

 俺の写真に価値なんて……あるか。あるか。

 あー! うるせー!! シャッター音うるせー!!


 それから、親戚やらパーティーに来ていた人にツーショットを求められて全員と写真を撮らされました。拒否権?

 HAHAHAHA!

 キミオモシロイコトイウネー。あると思う?



 そんなわけでいろいろ。本当にいろいろあって誕生日会は終わった。結論から言わせていただこう。

 ごくり……。

 もう、2度とごめんだね。来年からは家族だけの小ぢんまりとしたパーティーを所望する。



「あー、しぬー」


「じゃなー。わしですら、疲れておるのに旦那はもっとじゃろ」


「なんかこの会話前にしなかった?」


「そうか?」


「あー、だめだ。記憶すら曖昧になってる」


「旦那そこで寝たら風邪引くぞ」


「ソラ抱っこしてベッドに」


「仕方ないのう………ふむ。旦那意外に軽いんじゃな」


「そう?」


「うむ。わしですら軽々持ち運べてしまう」


「ソラがムキムキなだけなんじゃ……いたいいたい」



 ソラに怒られました。俺の頭にはソラの正義の裁きを喰らった後がくっきりと残っております。女の子にムキムキは禁句です。ソラが女の子? 女の子?



「おい」


「ん?」


「何か、失礼な事は考えておらぬか?」


「まっさかー」


「目を見て言えるか?」


「さーせんでした」


「まったく……」



 ソラに呆れられてるね。そんな姿もかわいいよ。アイラブユー。


 そして、ソラに本当に抱っこしてもらいベッドへと連れて行ってもらいました。



「旦那、実はかなり眠いのではないか?」


「よくわかったな……ふわぁ」


「……旦那、先に寝ておれ。わしは、少々六花さんと話がしたいのでな」


「おれも」


「ダメじゃ。子供はもう寝る時間じゃ」


「ぶぅぅ」


「ダメじゃ。寝ておれ」


「わかったって。おやすみ」


「うむ。おやすみ」



 そう言って、ソラは部屋を出て階段を降りていく音がした。

 そこで俺の意識は途切れた。



◇◇◇



 次の日、家のどこにもソラの姿はなかった。




ーーーーーーーーーーーーー


大変お待たせしました。

久しぶりに書いたので、キャラ設定がブレていると思います。

それがあればご指摘いただけたら嬉しいです。

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