第42話

「ソラ、手」


「う、うむ」



 恐る恐る手を出してくるソラ。その手をぎゅっと握った。どこかひんやりとしていてちょっとほっそりとしていて、これがソラの手なのかとしみじみと感じた。今はいわゆる恋人繋ぎというものをしており、ぶっちゃけると俺自身もかなり照れてはいる。ソラもソラで照れているはずだ。

 2人でいる時は自然と会話できているのに、今は口数が少ない。気恥ずかしくてお互いどう接していいのかわからなくなっているのだと思う。



「ありがとう」


「急にどうかしたか?」


「いや。ただの独り言」


「そうか」


「そう」



 と会話は区切れてしまうがこの沈黙も悪くはない。むしろ好きな部類だと思う。



「のう」


「何?」


「ぱふぇとはどんな味なんじゃ?」


「想像通……って、アイスとか生クリーム知らないんだった。うーん。結構難しいな」


「どうなんじゃ?」


「うーん。わからん」


「わからんって」


「じゃあ、食べてからのお楽しみで」


「それは逃げじゃぞ、旦那よ」


「あ、ソラ」


「なんじゃ?」


「今は冬人って呼んで欲しい」



 照れたような困っているようななんとも言い難い表情をされた。だが、呼んで欲しいのだ。こればかりは譲れない。我が強いのが冬人くんの利点であり欠点、要はプラマイゼロで何でもない。

 どゆこと? ダメだ。これ以上考えるとバカになる。え? 元から頭おかしいって? HAHAHAHA! 君は何を言っているんだい!!(圧)



「ふ、冬人」


「よく言えました」


「ふん! べ、別にこれくらい朝飯前じゃ」


「その割には顔が赤いような」


「あーあー!! 聞こえないのじゃー」


「聞こえてないんじゃしょうがないなー、パフェは諦めてこのまま帰ろーか!」


「冬人卑怯じゃぞ!!」


「……っ」


「あー! 照れておる照れておる!! かわいいのう」


「う、うっさい。スーパー行くよ」


「あ、待つのじゃ」



◇◇◇



「あいすというのはどれを買うべきなんじゃ?」


「パフェを何メインで作るかによるかな。無難なのはバニラだけど、それじゃあ面白くない。何か合わせたいフルーツとかある?」


「うーん。やっぱ、いちごかブドウかのう」


「なら、いちご味とかブドウ味もあるね。変わり種だったら、レアチーズケーキ味か」


「れあちーずけーき味?」


「チーズのケーキの味」


「そのまんまじゃな」


「まんまだな。ま、時間はあるから決めてて。他の材料買ってくるから」


「うーん。どうしようかのう」



 話聞いてねー。どれだけ楽しみなんだ。

 さてさて、パフェには何あったっけな。スポンジ生地はなくてもいいか。ゼリーとかかな。あとはフレークだったり、生クリームはいるね。あと何か欲しいな。

 あ、ソースか。ソラが選んだのに割と合いそうなのはチョコ……うーん。違うか。

 ブルーベリーにいちごか。うーん。合うだろうけどなんか違う気がする。他は無いか。ならこの2つ買うか。予算足りるかな。1500円持って来たけど。



「ソラ、決めた?」


「あともうちょいじゃ。このいちごとれあちーずけーきとやらで頂上決戦を繰り広げておる」


「そ、そっかー」



 案外、ソラはユーモアのセンスあるかもしれないね。



「2つともで別にいいよ」


「よ、よいのか!!」



 そんなに期待に溢れた顔されたらNOとか言えないじゃん。俺は嫁さん全肯定人間です。さぁ、応えるのです。



「うんいいよ」


「やった!!」



 こちじゃどっちが子供なのやら。ほんとかわいいな。もう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る