第39話

「旦那よ」


「ん?」


「迎えに行く時、義母上様から聞いたんじゃがな」


「うん」


「旦那はあと4人嫁作らねばならぬそうではないか。どうするんじゃ?」


「嫉妬嫉妬?」


「違うわ!」



 嫁さんのヤキモチかと思ってちょっと……いや、かなり嬉しかったけど、違うらしい。ほんとかなー?

 しかし、嫁さんからこの話題出されるのは何とも息苦しさを感じる。ちなみに今は部屋で2人きりどす。



「で、どうなんじゃ?」


「ソラさえいればいらない!!」


「…っ!! じゃなくて、真面目に応えんか!!」


「大真面目だよ」


「お、おうそうか。じゃがな、そうはいかんじゃろ」


「いやだいやだいやだいやだいやだ!!」


「……。駄々をこねるな。あのじゃな、わしとしては、わしの事を一途に好いてくれるのは大変嬉しい。じゃがな、それとこれとは話が別なんじゃ。旦那もわかっておるだろ?」


「………わかってはいるけどさ。俺はどうしようもなくソラが大好きだし、ソラだけを愛してたい。そしたら、他にお嫁さんが出来ても、せっかく好きでいてくれてるその子達にちゃんと向き合ってあげれないんだ。それは失礼だし、絶対悲しませると思う。だから安易にソラ以外の子と結婚はしたくない」


「んーー。難しいのう。わしに向ける愛は分割できんの「無理」……そうか」



 ソラと話しててこんなに息苦しいのは初めてだ。いずれ向き合わねばならない問題ではある。それを否定し続けていても何も生まれないのはわかっているし、あまりにもソラに対する想いが重いのは自分でも自覚しているつもりだ。



「いずれ、旦那が嫌がろうが嫁は増やさねばならん。そこはわかってくれ」


「そんなの」


「いいか旦那。わしは狐じゃ。わしら狐や他の自然に暮らしている者にとって1人の旦那に複数の嫁がいることは何ら不思議でない。むしろ、当たり前の事じゃ。それはオスの強さの証であり、子孫繁栄であるからのう。じゃから、わしは旦那に嫁を複数作ってもらいたい。無論、旦那の意見は尊重する」


「だからそうですかとはいかないんだよ。この世界の常識的に考えたら俺の方がおかしいのはわかっているけどさ、それを素直に飲み込めるほど俺は人が出来てない」


「全く、困った旦那じゃのう」


「そういう男なんだよ。俺は」


「めんどくさいわい」


「俺もそう思うよ」


「まぁ、頭の片隅にでもおいて考えてくれればよい」


「もし、俺が結局ソラだけを選んだら?」


「その時は山にでもこもって2人で悠々自的に暮らすのも良いやもしれんな」


「……そっか」



 自分から不甲斐なさにこの時ばかり虫唾を感じずにいられなかった。結局は、ソラ頼りで何もかも………。

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