嫁と姑(別視点)

「ソラちゃん、冬人迎えに行くんだけど、一緒に来る?」


「良いのか?」


「ええ」


「なら、御供させていただこう」


「ふふ」



 ソラは六花に連れられて冬人がいる保育園へと向かう事にした。



「あら、耳とか尻尾は隠せるのね」


「まぁ、そこは気合いじゃな。それに、大ごとにしたくもないしのう」


「別にいいのよ?」


「いやいや、わしの身のためじゃ。そこら辺の自己防衛はしっかりせねばならん。義母上様らにも迷惑をかけるわけにはいくまい」


「そう」



 2人の間に沈黙が広がる。お互いがお互い、何を話しに切り出せば良いのか困っているようだ。どこまで踏み込んでいいのか2人にはまだ把握できていない。



「あのじゃな、義母上様」


「どうしたの?」


「ええっとじゃな。わしの口調というか、語尾というかそこら辺は無礼ですまんな。決して礼を欠いておるわけではないんじゃよ」


「ええ。大丈夫よ」


「すまんな。実は言うと人間の言葉はまだ不慣れなのもあるんじゃが、1番最初に覚えたのがこれでのう。多様しているうちに染み付いてしもうて、もう取り返せないところまで来てしまったんじゃよ」


「そういう事だったのね。なら、なおさらそのままでいいわよ。それに冬人もその口調気に入っているみたいだし」


「ま、まぁ、旦那は、義母上様の前で些か無礼かもしれんが、感覚がズレてるおるからのう」


「そうね。ほんとうにそうね。この先がちょっと心配になってくるほどね」


「ほんと旦那はのう!」


「そうね!!」



 と何かと意気投合して2人は冬人についての話に花を咲かせていた。なんだかんだで2人とも冬人のことが好きなのだ。なら、話は早い。

 2人の話は保育園に着くまで続いた。



◇◇◇


「冬人、迎えにきたよ」


「あ、母さ……ソ、ソラ!? わーいわーい!!」


「旦那よ、いきなり飛びつくでない」


「あー!! ソラの匂いがするー!!」


「い、いきなり気持ち悪い事いうでない!!」



 冬人は、迎えに来たソラに驚愕しつつも、いの1番にソラに飛びついた。そんな冬人に寂しさを感じずにいられない六花ではあったが、夏美の稚拙ながらも一生懸命自分のところまで来る姿に喜びを感じていた。六花は案外単純なのかもしれない。


 しかしこれが終わりの始まりだと知らなかった。その光景を見ている者達がいたのだった。



「……ね、ねぇ。凛ちゃん。冬人くんが女の人に飛びついてるの!」


「え、えっとね……。凄く嬉しそう……」


「「……」」



 さぁ、時は来た。

 開幕じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

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