第35話

「本当は何を考えておった」


「えー」


「もったいぶらずに言わんか」


「ソラってチョコイケるのかなぁと思って」


「大好物の部類じゃぞ?」


「マジで?」


「マジ」


「というか食べる機会ある?」


「神社からお賽銭箱を少々拝借してたまに町へと買い物しに行くぞ」


「何してんの!」


「はて?」


「……いや、そこら辺は価値観が違うのか。なら、大丈夫か」


「大丈夫じゃ」



 ソラはドヤ顔をしている。無性に腹が立って仕方ないが、それを上回るくらいかわいいが来てしまう。なんだこの生き物。そうです。俺の嫁さんです。声を大にして言わせていただきます。俺の嫁さんです!!



「して、何故、チョコを食べる事に疑問を持ったんじゃ?」


「チョコって動物には身体に悪いっていうからさ」


「おほお、嫁の身体の心配をしてくれておったのか! ありがとうのう」



 ぐはっ!

 心臓部へのダイレクトダメージ。必中クリティカルで俺は死に絶える寸前だ。むやみに、笑顔は控えていただきたい。一体、何人の冬人くんを殺せば気が済むのやら。だが、安心してくれ。残機は無限にある。先に死んでソラを悲しませることは絶対にしないと言えよう。



「じゃが、心配はいらんぞ」


「どして?」


「今は人間色が強い姿をしておるだろ?」


「たしかに。たし"カニ"」


「……。で、この姿の時は基本的に人間の性質が強いんじゃよ」


「ほへー」


「理解してくれたか旦那よ」


「あたぼうよ」


「ならよい」


「ソラ他に好きなのある?」


「それ、それを待っておった!」


「お、おう」



 嫁さんの食いつきがすごいです。かわいいです。おっと、本音がポロリと。

 何が好きなんだろう。おあげ? やっぱおあげ?



「狐じゃからって、おあげが1番好きとか思われがちなんじゃがな、違うぞ! 全く持って違うからな! そこは覚えておくんじゃぞ!」


「肝に銘じます」


「よろしい。わしは、ブドウとかりんごとか人間が育てたフルーツだとかかなり大好きじゃ。他にも、お菓子も大好きじゃぞ」



 マジっすか。フルーツ好きなんすね。かわいいっす。

 うちの嫁さんかわいすぎではなかろうか? これはこの世の真理だから当然か。

 フルーツまだあったかな。食べてるところ見たすぎる。母さんに聞いてみよ。



「ソラちょっと待ってね」


「き、急にどうした……ま、まさか!」


「期待はしないでね。あるかわからないし」


「わかったのじゃ!」



 あちゃー。お目々、キラッキラしてますやん。尻尾めっちゃ揺れてますやん。がわいい!!

 なんだこの可愛さ。

 だがしかし、なかったらどうしよう。マジで。シュンとした嫁さんちょっと見てみたくもあるけど、とにかく喜んで欲しい。

 とにかく今言える事はうちの嫁さんがとにかくかわいい。



 俺はスタスタと階段を降りている。ソラのために旦那として頑張ります。



「お母さん、スイカの残りとか他にフルーツってある?」


「あら、あるわよ。スイカとぶどうはあるわねー」


「冬人、どうかしたかい?」


「ソラと一緒に食べたい」


「そうかいそうかい。ちょっと待っててね」


「お、お母さん!? 孫の為に何かしたいのはわかるけどやりすぎないでね!?」


「孫と孫の嫁さんに貢げるなら本望だよ」



 おばあちゃんが暴走し始めましたー。あちゃー。冷蔵庫にあるスイカとりんごだけでよかったんだけどな。

 何やら、電話している。冬人くんは鈍感じゃないからわかりますとも。お貢ぎされるのですね。最高級フルーツとやらを。ありがとうございます!!

 冬人くんは欲望に忠実なので、ありがたく全部受け取りますとも。決して、横で『お母さーん』と止めようとしている母上が見えないわけではない。だが仕方ないのだ。俺もソラのためなのだ。仕方ないのだ。

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