第34話

「ふ、冬人。ちょっとお母さん達に時間をちょうだい」


「いいよ」



 母さんとおばあちゃんは作戦会議を始める。何やら、ゴニョゴニョ言ってて聞き取りはしづらいが部分部分でちょっと聞こえてくる。ほんと大変そう(他人事)

 ソラさんやおいで。

 手招きするとこちらに来た。

 夏美たんとソラに囲まれて幸せ。

 ここは天国か。部分的に地獄と化してるけど。

 ホントダレノセイナンダロウネー。冬人くん4歳だからわかんない。いで。ソラさんに怒られました。



「(ち、ちょっとお母さんどういう事!?)」


「(私にもさっぱり)」


「(どうしましょう。どうしましょう。どうすべき?)」


「(知ってるか。知ってたら、私も、動揺してないわよ!)」


「(それもそうね)」


「(こういう時はネットに頼りましょう)」


「(そうね。そうしましょう)」



◇◇◇


 結論から言わしてもらおう、ソラとは同棲できる事になった。あまりにも話が出来すぎているとは思わないでくれ、現実は時に厳しく、時に甘い。そういう物なのだ。



「ソラー」


「んー?」


「はいあーん」


「ん」



 今は俺の部屋に2人でいる。母さんとおばあちゃんは下でもう少し心を落ちつかせる時間がどうたらと言っていた。

 で、俺の嫁さんのソラは俺の部屋のソファーに寝転んでいる。完全に和んでいる。俺の嫁さんの適応力凄いなと驚きつつも俺もだらけている。

 ソラに長い棒状の焼き菓子にチョコがかかった、いわゆる○ッキーを与えようとしている。決して、あの有名遊園地で薄情そうに笑うネズミさんではない。しかし、チョコは食べれるのだろうか。元は狐。狐は犬の仲間とも聞く。俺の記憶が正しければ犬にチョコは禁忌とされていたはず。



「そこんとこどうなのかね、ワ○ソン君?」


「いきなりどうした?」


「脈絡なく返事を求めても嫁さんはどこまで応えてくれるのかと思って」


「おぬしの求める嫁像はちとハードルが高くはなかろうか?」


「さぁ、どだろうね」


「さしあたって推測するにその菓子をわしが好きか嫌いかというのでどうじゃ?」



 と嫁ちゃんはキメ顔でそう言った。



「おー。さす嫁。ニアリーイコールでほぼ正解。及第点だね」


「で、何を考えておった?」


「ソラかわいい! かわいすぎ! 最強!」


「当然じゃろ」


「あら、照れなくなったね」


「じゃって……わしもおぬしの事がかっこいいと思っておるぞ」



 身体がこわばってしまった。咄嗟の事に驚きを隠せない。何をされた?

 そう、反撃をくらったのである。あろう事かこの俺が。たかが、耳元で愛を囁かれたくらいで。



「どうした旦那よ。顔がちと赤いぞ?」



 したり顔で言われた。そう、言われてしまったのである。俺は反射的に顔を逸らし口元を手で隠す事をするだけで精一杯だった。判断を見誤った。どこで間違えた。


 だがたまらなく嬉しい。俺もソラが好きでソラも俺が好き。俺たちはそんな両想いという一見ありふれたそんなカップルへと成り果てたのだ。

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