第29話

 やってきました。神社!

 まさかまさかのリムジンでここまで来るとは。おばあちゃん何者?

 普通に目立ってたし、一般車両で来た方がよかったんじゃないかと思うわけでしてね。

 あとあと、黒服さんがいるわけよ。これは笑ったね。

 俺1人のためにこんな厳重なわけよ。ちょっとやりすぎ。そして今、夏美たんはおばあちゃんが相手をしている。夏美たんにっこにこ。おばあちゃんデッロデロ。孫が可愛くないおばあちゃんなどいないのだろう。

 しかし、こんな大人数で神社とは風情が些かないのではなくて?

 ざわざわ。いやいや、あの名シーンの『ざわざわ』ではなくて、森林を風が抜けるオトマトペですとも。


 はて?

 母さんとおばあちゃんはいずこへ?



「そう、慌てるでない」


「いやいや、慌てて……な……っ!?」


「どうしたんじゃ?」


「なん、だ……と……!?」


「き、急にどうした」


「結婚してください」


「……? っ!! ……ふぇ!?」


「結婚してください」


「…………」



 頬を赤ております。大変可愛らしい事この上ない。今、攻めずして何になる。むしろ、今こそ攻め時である。そうガンガン行こう!



「結婚してください」


「あー、えーっとじゃな。うーんとな」


「結婚してください」


「だからちょっと待つのじゃ!!」


「はて?」


「まず、順を追って話をさせて欲しいのじゃが」


「分かりました」


「んん!」



 場を改めようとして咳払いをしているのもとても可愛らしい。全然改まってないけど。



「まずは言わせてもらおう。おぬしは何者じゃ?」



 あらやだ。同じこと考えているなんて運命感じちゃうな。俺たちは赤い糸で結ばれた運命共同体なのだろう。きっと。



「何と言われまして一般人としか応えようがありませんね」


「わしが求めているのはその返しでない事をわかっておるのじゃろ?」



 はて? 全くもってわからない。

 俺が何者であるか知りたいイコール、俺を知りたいイコール、私の事も知って欲しいイコール、結婚したい。完璧な方程式が成立してしまった。つまり彼女から暗に示唆されているという事だろう。結婚したいという事を!! なら、これに応えなくては男が廃るって物よ。



「ええ。分かりましたとも」


「そうかそうか。わかってくれたか」


「はい! 式はいつにしましょか!」


「うむうむ……は?」


「え?」


「は?」


「いやだから、結婚するためには式をあげますよね。つまりそういう事でしょ?」


「いや、違うが?」


「式あげたくないんですか?」


「いやいやいやいや、その話ではなかろう! 話の脈絡が無さすぎて一緒わからなかったぞ!」


「いや、バッチリ繋がってましたって」


「ダーメだ。話にならんぞこやつ」


「そんな褒められても照れますって」


「……はぁ………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る