第28話
「お母さんどっか行きたい」
「え、えっとね。うーん」
母上が大変困っていらっしゃる。しかし仕方がないのだ。俺は外にでたい。欲望には逆らえらないのだ。
そもそもの話、俺はほぼほぼ外に出た事がない。だから、家の周りすらよく知らない。もちろんご近所さんとかもいるはずなのにいない。そういないのだ。
改めて考えてみると、母さん、案外緩めに見えるかもしれないけどこういう所はキチンとしている気がする。
はっ!? これがいわゆるギャップ萌えというやつなのか。いかんぞ、冬人。相手は実母。どんなに可愛かろうと実母。犯罪やぞ。
「神社とか池とか行きたい」
「ちょーっと待っててねー」
「うん」
あらあら、携帯を持って廊下へと向かわれました。
あー、暇ー。残念ながら、夏美たんはお昼寝中。なので俺は暇を持て余している。だから外に出たいと言うか。
「冬人、おばあちゃん達が来てくれるから神社に行けるって」
「やったー!!」
おばあちゃんが家に来ます。
◇◇◇
チャイムが鳴った。どうやらお婆様が来なさったようです。
「冬人ー、おばあちゃんだよ!」
「おばあちゃん!」
「久しぶり。うーん。少し大きくなったようじゃないか」
「わかる? 2センチ伸びた」
「大きくなったね」
「えへへ」
おばあちゃんとは2ヶ月ぶりに会ったのです。実はおばあちゃんは仕事がなかなかに忙しく、時間がなかなか取れない。会えるのはとても嬉しい。ちなみに何してるかは知らない。
「冬人はどこ行きたい?」
「神社!」
「お、おー、なかなかに変わってるわね」
「ふふ、お母さん、そこは冬人だし」
「そうね。冬人だからね」
ちょっとそこー、まるで『冬人』というのが悪口かのように扱うのはやめてくだされ。俺はれっきとした『冬人』であり、『冬人』なのです。お分かりいただけましたかな? と抗議の目を向けておこう。
「冬人ごめんごめん。機嫌を直しておくれ」
「冬人ごめんなさいね」
わかったならよし。
ほんとうに今いう事じゃないけど、母さんは20代前半。おばあちゃんは40代前半だ。女性の年齢を聞いたり教えたりするのは充分マナー違反だ。そこら辺は冬人くんも弁えてますとも。だが、母上とお婆様の人物像が捉えづらいかと思っての妥協点でこれ。
しかし、若いよね。
しかも、これにひいお婆様もひいひいお婆様も在命ときた。前は、ひいひいおばあちゃんとかひいおばあちゃんって遺影とかでしか見たことなかったからさすがに在命してるのがすごいのは俺でもわかる。だってひいひいおばあちゃんからみたらおばあちゃんは孫なわけで俺は孫の孫なわけよ?
意味がわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます