第20話

「あのねあのね、冬人くんおはよー」


「凛ちゃんおはよう」


「あー、凛ちゃんばっかりずるいの! 葵もなの!」


「えっと、葵ちゃんおはよう」


「やったーなの!」



 『なのなの』うるさいのが、葵ちゃんです。そうです、葵ちゃんです。初日から目立ってたからねー。

 一瞬、名前忘れてたけど、1人称が参考になりました。ありがとうございます。

 さてさて、今日は、朝からの保育園だったり。2日目にして、フル保育園の可能性あり。母上がいつ迎えに来るか知らないけど。



「冬人くん、ここに座ってなの」


「あのねあのね。私の横空いてるよ」



 ふむふむ。修羅場じゃのう(他人事)

 いやはや、おそろしや。

 キレーに、2人が2つ離れて座ってやがる。まじどうすんのよ。これ。え? あなたたち、4歳児だよね? あれ? いつから、女の闘いが始まってました?

 あれれー、おっかしいぞー。こりゃあ、ピンチちゅうやつやろ、○藤。

 "悲報"

 冬人氏、女の闘いに巻き込まれる。

 お前が始めた物語だろ? って?

 いやいやいや、知りませんって。こんなの知りませんって。怖いですって。厳しいですって。


 はぁ……。まじどうすんのさ。これ。

 まぁ、いいや。座ろ。


 俺は凛ちゃんの隣に座った。



「ふ、冬人くん!」



 あ、なんか嬉しそう。かわいいねー。ほんの数秒前まで女の闘いをしてた子に見えないよ。ほんとに。

 あら?

 葵ちゃんが、横に座ってきた。あらあら。結構、グイグイ来るな、葵ちゃん。



「冬人くん、葵ともお話しするの!」


「えっとね、冬人くんは、私の!」



 おっとー。冬人くんは、冬人くんのものです。決して、凛ちゃんのではありません。

 さて、闘っておる。闘っておる。バチバチに闘っておる。これは火に油を注ぐのも一興か。いやしかし、その仕打ちが俺に帰ってくるのは火を見るよりファイヤーだな。うーん。ほんまどうしよう。

 いっそのこと、『お、俺の為に争わないで!』とか悲劇のヒロインを装うのもありかもしれない。ただ、自分のキモさに胸焦がれるのは必然か。


 さて、どうしましょ。



「ねえ、冬人くんはどう思うの?」


「えっとね。冬人くん!」



 おっと? キラーパスだよ?

 しかもさ、冬人くんは前述してたこと聞いてなかったよ? そんなオイラにどうしろゆうねん!


 あー、詰んだ。どうにかしてクレメンス。



「何が?」



 やばいミスったな。これじゃ鈍感系じゃんか。素直な子は功をなす気もするけど、この応えじゃなかったな。はぁ……どうしよう。

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