第19話
「あ、そうだ。冬人」
「どうしたのお母さん?」
「冬人は、夏美の事好き?」
「うん!」
「……そうよね。でも、今はどちらかというと(ボソっ)」
母上が、何やら言っている。小声すぎて聞こえない。決して、決して! 難聴系主人公を気取ってるわけではないので、ご安心を。あんな野郎になってたまるか!
さてさて、さっきの質問からして。ふむふむ。あー、なんかわかったかも。でも、こりゃあ、知らない振りをするべきだわ。知らぬが仏? なんか、こんなことわざあった気がする。
よし、忘れよ。
オレハオレダカラココハセカイ。よし。完璧。
「にいに! すき!」
我が生涯にいっぺんの悔いなし。
い、いけませんぞ、夏美殿。その言葉は、容易く口にされては。でなくては、死人が容易く量産されてしまうでそうろう。
夏美たん自身はまだ、好意と家族愛の区別が全然付いてないからそこら辺はまだ安心できる。ただまぁ、口に出した事全て本心だからちと心臓に悪いのはあるけど。そのままお兄たんは夏美たんに純粋に育って欲しいぜお。
さてさて、こんな事を考えていたら保育園に着いてしまった。
「先生おはよー」
「冬人くんおはようございます」
「せんせ! おはよ!」
「夏美ちゃんもおはようございます」
我の妹が、キャッキャ言ってる。こういうところ、女の子ぽいというか、ふとみせるかわいさが、大変趣き深い。
いとあわれなり。
意味?
意味なんか、ウィ○ペディアで、調べんかい。うんにゃうんにゃ。なんや、わいは、ウィ○ペディアかいな。
えっとね、『とても感動的であるさまを表す語』だった気がする。トニカクカワイイと思って感極まった時に使いましょう。
「先生、今日もよろしくお願いします」
「はい。お仕事頑張ってください」
「それでは」
「まんま! バァバァ!」
「お母さん頑張ってね」
全力のキュン顔いただきました。俺はって? 俺がキュン顔したらキャラ崩壊もいいところなんで、唇噛んで耐えたに決まってんじゃないっすか。舐めないでもろて、ええですかいな。あ、唇めっちゃ痛い。血は出てないからよかったけど。
んん! 思い出しキュンが俺を襲って来やがる。なんてやつだ。
「2人とも、行こっか」
あら、先生? 指に爪の跡が……あ、察し。先生も、好きなんですね。ちっさい子。いや、この言い方だと、ロリコン認定合格者みたいじゃんか。
まぁ、うちの妹はかわいいからね。しょうがないよ。
「にいに! 行く!」
「…ん! あ、あー夏美、行こっか」
自然と手を繋いでくる。それが当然かのように。まぁ、当然なんですがね!! だって俺、夏美の"兄"ですから。ええ。ドヤ!
ところで、夏美さんや、あなたのクラスは反対側ではなくて?
あ、お兄ちゃんを送ってくれるの?
えらいねー。
その後、しっかりと妹にクラスまで送ってもらいましたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます