第14話

「冬人、ソラさんご飯出来たから運ぶの手伝ってー」


「うん」「了解したぞ」


「あぁ!」


「夏美はもう少し大きくなってからねー」


「あだぁ!!」



 うちの夏美たんは聞き分けが良い子でお兄たんは大変嬉しおす。ようここまで育ってくんさいました。ありがとおす。

 夏美たんは、ソラに手を引かれて食卓の自分の席までよちよちと……俺を殺す気ですかいな? これは1種の宗教画でしてよ。こんな光景が目の前に広がっているとは圧倒的感謝の意をここに。アーメン。



「……ゆと、冬人、これお願い」


「うん」



 やべべのべ。周りが見えてなかったでござんす。拙者、迂闊でござんした。尊きものに意識を向けすぎて周りが見えなくなってた侍と申しますで候。

 さと、俺が運ぶのはお汁。ちゃんとお盆に乗せられておりアフターケアも至れり尽くせり。直触りなら、『あっち』とか言ってそこら辺が大惨事。冬人くんの大変珍しいやっちまった顔をお届けする事になっていました。



「旦那、ありがとうのう。わしが机に並べておく」


「うん」



 後はソラに任せるという事で、お汁を取ってもらって机に置いてもらった。俺じゃあ、若干机に届かないので仕方なく。ソラの方がまだ身長は高い。まぁ、『まだ』だけどね。見た感じ、ソラは150後半くらいはあるのかな。でっかいのにちっちゃい。身長がね。やっぱ今は見上げるような高さだから。でも一般的に考えたら小さい方だし。

 あ、決してソラの1部分に向けていったわけではない。というか、ソラのそこは未発達だけど、大きすぎずかといって小さすぎずといったちょうどいい塩梅になっております。正直めっちゃ好みなサイズ。

 おぉっと、ここでソラからのレッドカード。冬人くんは退場とのことです。ありがとうございました!!



「旦那、丸わかりじゃからな」


「何のことやら」


「白々しいわ」


「さーせん」



 母さんに聞こえないよう配慮をしつつしっかりと怒らました。心から反省しております。セクハラダメ絶対。みなさんも気をつけましょう。

 夏美たんが専用イスに座りながらこちらをガン見しております。やめて、その精神攻撃。結構ダメージ入るやつ。

 何を考えてるかわからないし、何も考えてないのかもしれないけど地味に高威力の視線でしたね。

 解説の冬人さん。

 ええ。全くですよ。

 司会の冬人さん。


 さてさて、準備は整った。飯の時間。さぁ、心を込めて『いただきます』



「いただきます」


「「いただきます」」「あだぁ!」



 うんまうまうまうんまうまむ……おぉっと。それ以上はいけない。



◇◇◇


「「「ごちそうさまでした」」」「あだだぁ」



 夏美たんも言えて偉いねー。

 さてさてさてさて。さぁ、ついにデザート作りだね。今は19時。早めに作ってお風呂入って、歯磨きして寝よう。



「旦那ついにじゃな!!」


「だねー」



 食器を運びながらそんな会話を交えてみる。言葉にしなくてもわかるぜお。ソラたんはたのちみなんだね。きゃわいいねー。尻尾ふっさふっさふっりふりでお耳ぴんぴんでございやす。わっかりやす。



「さて、まずはパフェを入れる容k「持ってきたぞ」うん」



 うん。早い。今こんな顔→^_^



「そしていろいろ入れるからm「持ってきたぞ」うん」



 うん。早い。今こんな顔→^_^



「じゃあまずは何を入れよu「入れたぞ」うん」



 うん。以下略。



◇◇◇


 とまぁ、日頃より1.2倍増しな嫁さん以外は特に問題なくパフェ作りは滞りなく出来ていったとさ。

 で、出来たパフェを見たとおり嫁さんのパフェが1番大きいです。知ってた。で母さんが普通盛り、俺が子供サイズに夏美は生クリームほんのちょっとだけ乗ったフルーツの盛り合わせ。

 母上曰く『夏美には甘すぎるのはまだ早いわ』とストップをかけられ、せめてものでと気分を味わうためにほんの少しだけという事に。その代わりとしてフルーツ多め。夏美たん本人はパクパクと貪り食っていらっしゃるようなのでどうやら大丈夫みたい。

 で、問題はソラさんでございます。デカすぎ。欲張りすぎ。食べ過ぎ。見事に七つの大罪の2つを豪語している。



「な、なんじゃこりゃあ!!」



 とまぁ、わかってたとおりの反応をしておる。いたいたいたい。肩揺らさないで。美味しかったのはわかったから。そんなソラも好きだけどちょっと待って。



「何?」


「うまいぞ!」


「知ってる」


「旦那のもちょっとくれ」


「ん」


「んーー!! うまい!!」



 ナチュラルに間接キスしたような。ま、細かいことはいっか。ちなみに、俺とソラのは若干違う。アイスとかかってるソースが。食べ比べはグッジョブってわけ。



「ソラのも「やらんぞ」いや、1口くらいいいじゃん」


「仕方ないのう。ほれ。あーん」


「あーん。うん。うまいね」


「じゃろ。やはりこの組み合わせにして正解じゃったわい」



 喜んでもらえて何より……あ。そういや、母さんいたんだ。忘れてた。ほら、絶句してるよ。口パカーンと開けていらっしゃる。普段見せないような顔だからちょっと面白い笑

 ぶふぅー。ソラに足で怒られました。こお、足で足の皮をつねられるというなかなかにテクニシャンな感じで。本当凄いな嫁さん。俺の考えてることわりかし筒抜けじゃんか。エスパーの才能があるんじゃなかろうか。



「ふ、2人はいつもそ、そんな感じなの?」



 と、平静を装いながらも若干言葉が震えているし、持っているコーヒーのカップもグラグラと。今にも倒れそうな感じな母さん。ここは、トドメを刺すべきか否か。重大な選択を迫られて……いった。またまた怒られました。ほんと隠し事は出来ないな。よし。後は任せた。

 ため息をつかれましたよ。誰にって? そりゃあ、ソラさんに。いいなぁ夏美たん。蚊帳の外じゃんか。今も一心不乱にもぐもぐしてる。かわいい。

 あら?



「そ、そうよね。そうなのよね。うん。そうよ」



 と、母さんは自己解釈の上、何やら納得している様子。何故か嫌な予感がしなくもないがなってしまったものはしょうがない。忘れよー。

 って、パフェなくなってるやんけ!?

 は!?

 ま、まさか!? とソラの方を見てみる。すると、目を逸らされました。確信犯です。やりやがった。いや、別に俺の分食べたことは気にはしてないけどさ、あの量にプラスで俺の分もだよ? ちゃっかり自分の分は食べ終わっているわけだし。



「太るよ」


「っ!! だ、大丈夫じゃ。わしはたくさん動くからのう」


「ふーん。そのうち、ぶくぶくと太って、ぽっちゃり狐の完成か(ボソ」


「き、聞き捨てならんぞ!!」



 襟元を掴まれ、前後ろとふりふりされる。力加減はしっかりしてくれてはいるけど、脳が揺れるー。あーれー。ほーれー。よっこらせー。



「デリカシーのない旦那は嫌いじゃ。ふん」


「な、何だと!? 死のう」



 ソラに嫌われたのなら生きている意味がない。そう死ねばいい。何もかも楽になって綺麗さっぱりおしまいだぁー!!



「待て待て待て。好きじゃから」


「ほんとうに?」


「うむ」


「ならよし。さっきはごめん」


「別によい。わしを気遣ってなのはわかっておる。言い方はあれじゃが」



 とまぁ、とりあえず和解。ここに和平が締結された大切な瞬間です。みなさま、ご起立の上盛大な拍手を! パチパチパチパチ。



「あぁー!!」



 と、母上が漫画でしか見たことないような頭を押さえながら倒れてしまった。どうやら母上のキャパをこえてしまったらしい。どこにそんな要素が?



「あ、あ、ど、どうすればよい?」


「ソラ、落ち着いて。大丈夫だから」



 こういうときは落ち着くのが1番。さー、吸ってー、吐いてー、吸ってー。

 ひぃひぃふぅ。


 うお、すげ。母さんをお姫様抱っこしてる。見た目の割になかなか力持ちだなソラ。母さんの方が身長それなりに高いのに。



「どこ連れてゆけばよい?」


「ソファーにでも寝かしておいて」


「うだぁー!!」



 うちのお姫様は何故かテンションマックスで雄叫びをお上げになった。夏美もお姫様抱っこされたいのだろうか?



◇◇◇


 しばらくして、母さんは立ち直ったのか。身体を起こし、今はソラに介護されている。見た目、ロリに近い子に成人女性が介護されているのか。これがいわゆるオネロリとかいうやつ?



「2人とも迷惑かけてごめんなさいね」


「いやいや、元を辿ればわしらのせいで心労をかけておったようじゃし。こちらこそじゃ」


「ソラさんありがとうね」



 2人がお話しをしていて正直暇。まぁ、確かにソラの言う通りかもしれない。母さんを頑張らせ過ぎていたのかもしれない。もしくは、俺の嫁さんだから誠心誠意おもてなしをと、どこか思い詰めていたのかもしれない。

 どちらにしよ、俺のせい。ちくしょう! 何でこうなった! 後悔も反省もしてません! ソラと居られる事に万々歳ですとも! 決して、ソラを迎えない世界線などあろうか。いやない!

 ここ反語用法なので、テストにでまーす。しっかりと復習するように。

 キーンコーンカーンコーン。じゃあ、今日の授業はここまで。復習しっかりしとけよ。じゃあな。


 と、話が逸れてしまった。閑話休題。


 デザートも食べたし、次はお風呂。



「ソラ、お風呂入ろ」


「うむ。少々待っておれ」



◇◇◇


 そんなこんなで、ソラとお風呂入って来ましたぜ。ソラの裸見えると思った? 見えるわけないじゃん。分をわきまえろよ? なんで、俺の大事な大事な大事な大事な大事なソラを有象無象のゴミに見せないといけないわけ? ねえ? なんで?



「おーい。旦那聞いておるかー」


「聞いてる聞いてるー」


「それ聞いてないやつじゃろ」


「そうとも言うかもしれないし、そうじゃないかもしれない。つまりそういう事さ」


「は? まぁ、よい。というか先程から目が怖いぞー」



 と見上げるために顔を上げて俺を見る。そこの君『あれ?』おかしいんじゃないと思ってる? 思ってるよね!

 ヒント、俺がソラを拭いてあげてる。俺の方が今は身長が高い。わかるよね。わかったならよし。



「有象無象への警告、牽制および、嫁さん自慢」


「何じゃそりゃ」


「あー、もう動かないで拭きにくい」


「はーい」


「ソラ、ドライヤーとか大丈夫?」


「あー、あのうるさいやつか。耳元から遠ざけてくれるなら大丈夫じゃよ」


「難しいご要望だねー」


「仕方ないじゃろ、うるさいんじゃし」


「あー、そう言えば狐って耳良いんだっけ」


「まぁ、人間形態の時よりかは、はっきり聞こえるのう」


「そうなんだ。とりあえずタオルでしっかり拭いて、弱めのにするか」


「えー、うるさいの嫌なんじゃが」


「我慢しなさい」


「えー」


「うるさい」


「う……旦那に言われるとなぜかイラっとするのう」



 嫁さんはちと理不尽です。だが、仕方ないのかもしれない。まさかここで、日頃の行いが響いてくるとわ。え? 『自覚してんの?』って? もち。してるし、直す気はもうとうありません!! 全部ソラがかわいいからなんだ。つまり嫁さんのせい。おい! 誰だよ! ソラのせいにしたやつ! ぶっ○してやる!!!! 出てこいやがれ!!

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