第15話
「やぁやぁ、僕だよ」
誰?
「忘れた?」
記憶にございません。
ほんとうに誰なのか。誰なのか。俺の記憶が正しければ少なくとも僕っ子にこんな人いなかったですとも。ええ。
「君は、人を1人称で判断してるのかな?」
実際どうなんでしょう。そうなんですか?
「いや、僕に聞かれてもわかんないって」
ふむふむ。僕っ子のこの雰囲気。はてはて。むむ? もしかしていつぞやのカミサマでござるか?
「やっと思い出してくれたね。あの時の僕だよ」
あー。どおりで、記憶にはなかったけど、懐かしい気配がプンプンと。おひさしゅうございますとも。
「はは、相変わらずだね」
ええ。相変わらずですね。これが私のアイデンティティ。あ、ここイケボ。
「おーい。自分のワールドに引っ込まないでくれるかな?」
失敬失敬。行き着く先は死刑。さらば、世界。また会おうグッバイ。そして帰還のマイワールド。
「……はぁ」
ひょっとして呆れてます?
「君はもう少し落ち着きを持った方がいいと思うよ」
無理っすね。俺のアイデンティティの崩壊じゃないですか。
「……もう、いいや。でさ、この世界楽しい?」
それはもう。と言いたいところなんですが、何とも言えない感じですね。それが、聞いてくださる奥さん。この前、保育園に行ったときなんか。
「あー……。長くなる? 手短にお願い」
わがままですねー。簡潔にいいますと、やはり人間関係が気薄なところと、外を自由に歩き回れないのは不満たらたら、たらのぬか漬けですよ。あと、何ですかこの身体。全然惰眠貪れないじゃないですか。
「こんな世界だからそこら辺はしょうがないよ。諦めな。それか、君が変えちゃえばいいんだよ。あと、文句は聞かないからね。出来るだけいい身体にしてあげたんだから。感謝はされども怨まれる筋合いはないよ」
あー。さっきのギャグスルーしましたね。まるで滑ったみたいじゃないですか!
「いや、滑ったんだよ」
うぅ。辛辣。あなたは悪魔ですか!
「もうそういうのいいから、話聞きなって」
聞いてますよ。身体は丈夫すぎるのが問題なんです。疲れたあとに惰眠を貪る、あの力がぬける感じがいいのにまるで疲れた気配がしない。
「いやいや、疲れはくるって。あれかな、社畜精神が、疲れを感じさせてないんじゃない?」
あ、ありうる!?
アリエール。じゃなくて、結局は自業自得って事ですか? そりゃ、ないですって。とほほ。
で、もう一つが、俺が世界変えろって事ですか?
「そそ」
うーん。どうなんでしょう。男だから多少は発言力あるかもしれませんが。どうなんでしょうね。
「そこは君が頑張るしかないよ」
根性論っすか。
「頑張りなよ」
あ、もう終わりな感じ?
「だねー。君のお母さんが起こしに来てるよ」
さすが、母上でございますね。
では、今回はこの辺で。
「いやいや、もう話す気ないからね」
えー。そんな殺生な。
「ほら文句を言わない。僕はお助けキャラじゃないよ」
えー。ほぼ、一緒じゃないですか。
「君、ほんと酷いからね? もう少し、発言気をつけなよ」
大丈夫ですって。
まぁ、ほどほどに。
「うん。じゃね」
ええ。さいなら。
◇◇◇
「冬人、朝だよー」
「お母さんおはよう」
「おはよう」
今日も一日が始まった。
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