第11話

「いーやだぁ!!」


「こら、冬人わがまま言わない!」


「そうじゃぞ、旦那。義母上様の事はちゃんと聞くんじゃ」



 俺には今味方がいない。


 そう、今日は保育園の日です。前までは凄く楽しみにしていました。それはそれは、楽しみにしていました。だがしかし、状況が変わったんです。

 そう、ソラという大事な大事なパートナーができました。そんな彼女を置いて保育園に行けると? 否。行けるわけがない。むしろ、50メートル離れたら俺が瀕死に陥いる。ぶっちゃけ、依存しているともいうが、仕方ないのだ。ソラがあまりにもかわいすぎるのだから。



「旦那よ、そんなに義母上様に迷惑をかけるのなら嫌いになってしまうぞ?」


「な!?」



 俺は真っ白に燃え尽きた。ソラに嫌われたら生きていけない。そうだ。死のう!



「待て待て待て! 今日はとりあえず大人しくゆけ。わしも今日は予定があって家を留守にさせてもらう。帰ってきたら、膝枕でも何でもしてやるから」


「な、何でもだと……!? 行ってきます」


「ふ、冬人待ってー!!」



 俺は疾風のごとくかけだした。早く保育園へと行くために。どんな困難が待ち受けようと必ずや、保育園へと着くために。待ってろ、保育園。そして、ソラにあんな事やこんな事を。ぐへへへへ。



「旦那ー!! わしができる範囲でかつこちらには拒否権がある事を忘れるでないぞー!!」



 釘を刺されました。ちくしょう。

 膝枕したり、一緒にフルーツ使ってパフェ作ったりしたかったのに!!

 あれー? いかがわしい事かと思った? ねえねえ? 思ったよね!! だが、残念。我、4歳児ぞ。普通に犯罪すからそこら辺は弁えてくだされ。この世界にそんな法律あるか知らないけどさ。それに4歳児なんだから性欲ないでしょ。いやでも、恋愛感情はあるわけだし性欲はあるのか? そもそも恋愛感情って性欲なのかな。



「ふ、冬人、待っててば!」


「うん」



 とりあえず、肩で息をしている母さんを待つ事にした。よくよく考えたら、母さんが迎えに来るまで帰れないわけだしあんまり早く行ったところでどうしようもない。あー、早くソラに会いたい。


 あ、そういえば、嫁が出来たことを保育園の子は知らないんだ。どうしようね。明らかに好意を向けてくる子もいるわけだし、泣かないかな?

 流石に保育園児を泣かせて喜ぶほど根性は腐ってない。回避できるなら回避したい。

 いや、考えたら別に言う必要はないのか。でも、態度でバレたりするかな? そういうの女の子は敏感っていうし。



◇◇◇


「冬人くん、えっとね。えっとね。……何かあったの?」


「葵もそう思うの! 今日の冬人くんおかしいの! 元からおかしいけど今日はもっとおかしいの!」


「ナニモナイヨー」



 やっば。一瞬でバレたんだけど。ところで葵さんや。罵倒は良くありませんよ? 違和感なく忍び込ませようとしてるが、思いっきりバレてるからね?



「ううん。おかしいの!! 葵は誤魔化せないの!!」


「あのね。私も葵ちゃんと同じだよ」


「フタリトモキョウハオカシイヨ」


「何言ってるの!! 冬人くんがおかしいの!!」



 あのですね、葵さんや。前文が無ければその発言ただの罵倒やさかい。気いつけてな。

 さてさて、別に俺は悪いことなどしてないのだ。なのに、何故こんなに追い詰められているのだろう。不思議でしょうがない。これは不思議な国へとご招待されても仕方がない案件。

 しかし、わざわざ言うようなことでもないし、と言うか、言わなくてもいいし。問題はどうこの場をおさめるべきか。



「冬人くんは馬鹿なの!! 葵たちに秘密を隠せると思ったら大間違いなの!! 悔い改めろなの!!」



 ちょっとー、葵ちゃんに言葉教えてるの誰?

 普通、4歳児とかはこんな事言わないよね。あー、女児向けアニメとかの影響かな。あるある。小さい頃は、何でも真似したくなるよね。魔法少女系とかのアニメだろうか。もしかして、首とぶやつちゅうよね? ひええ。前いた世界とそっくりそのままではないだろうけどね。たぶん、かなり男性が美化されていると見なくても間違いないと思う。

 今度、夏美たんとソラと一緒に見てみよー。



「2人とも、冬人くんが困っているからそれくらいにしておきましょう」



 ナイス先生。物思いにふけっていたらまさかのまさかの先生からの救いの一手。まさかこのような展開になろうとは。さすがの『智略の巨匠(自称)』と名高い冬人くんでもこの一手は思いつきませんでした。完敗です。



「「はーい……」」



 渋々ながらも2人はあっさり手を引いていった。しかし、2人は明らかに納得をしていない様子。これは問題を先延ばしにしただけで、根本的な問題の解決へとはいたっていない。まだ安心は出来ないぞ冬人氏。


 しかしだ。保育園に来たはいいものの何をすればいいのか。前と言っても、保育園には両手で数えれるほどしか行ってはいないが、保育園でどうやって過ごしていたのかわからない。生憎、今は室内で遊ぶ時間らしい。

 お絵描きは馬鹿にされるので、プライドの高い冬人くんはNGとなっております。

 積み木? ブロック? 何すりゃいいんじゃ。

 ソラの事妄想にふけりゃいいの?

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