第8話
「はい、冬人くん」
「先生、ありがとうございます」
「えらいねー」
咄嗟に敬語使ったけど、4歳児ぽくはなかったか。
さて、この紙をしっかり暗記するんや。
へー、このクラスは34人なんだ。つまり、俺は33人の女子に囲まれていると。多いな。いやでも、100人彼女作ろうとしてるやつもいるわけだし、そう考えると少ないのか? だってほぼ3分の1だぜ?
ようわからん。
「冬人くん、書けたの?」
「葵ちゃんは?」
「もちろんなの!」
「うま」
いやいやいやいや、4歳児の画力じゃないって!
え? やばくない? 普通にコンクール出せば、入賞はおろか最優秀賞だって狙えそうなんだけど。というか、クレヨンで書いたわけ? おかしくない?
いや待て。違和感がある。
はっ? いやまてまてまて、よく考えてみなさい、絵を描き始めて約30分。それでこのクオリティー?
やばいって。思わず、素がでちまった。
このクオリティーの後に俺の絵を出すわけ? 恥ずかしいんだけど。
「冬人くんのも見せてなの」
「は、はい」
「んー。冬人くん下手なの」
言いやがった葵ちゃん!
おいー。いやね、あなたに比べたら下手だとは思いまよ。はい。いやでもね、4歳児にしてはなかなかいいものを描けたと自負できると思うわけでしてね。
「えっとね、ふ、冬人くんの絵はちょっと変だけどいいと思うよ」
あのですね、凛ちゃん。全然、慰めになっておりません。むしろ、えぐられたぐらいですよ。それはもう、心に酷い傷を負いましたとも。シクシク。
そ、そんなに言うなら見してもらおうじゃねーか!?
「冬人くんあのね、見てほしい」
「よかろう」
「え?」
「んん。ごほん。見して」
……おっふ。あなたもですか。ですよねー。薄々わかっていましたとも。ええ……。
もしかしてこの世界の人って絵が上手いのか?
いや、まだ疑問点が残る。参考サンプルが少なすぎる。もっと、比較対象をもってして結論を出すべきだろう。
「先生、絵描いて」
「あら、いいわよ」
「こーで、うーん。これでいいか。はいどうぞ」
「……おっふ」
あなたもですか。薄々わかってましたとも。ええ。
いやいやまだだ!
「「「冬人くんこれ見て!」」」
そうだ。まだ絵が31枚あるじゃないか。そうだとも、まだまだ!
「…………おっふ」
ええ。ええ。……見せてもらいましたとも。ダメでした。みんな、うますぎ。
結論、この世界のみんな絵上手い(笑)
でしょうね! ほんとは、葵ちゃんの絵といい、俺の絵の感想的にわかってましたとも。見ないふりしてましたとも。
さて、俺の新しい目標に『絵の下手な仲間を探す』これを追加だ。いるかな。
そして、絵について何だが。……みんな、俺とその子が2人っきりで手を繋いでいる絵でしたとも。これについては見ないふりした方がいいやつっすよ。ほんとに……。
しかし、ほんとうによく描けてるはずなんだけどな。
このツヤツヤの卵肌。卵だから卵肌は当然か。いや、言い得て妙か?
オムライスを下手に描こうという方が無理なんだよ。
だって、枠描いて黄色く塗るだけ。何ということでしょう。あんなに真っ白。白白な紙はあっという間にオムライスの完成だい!
いいや、考えてみよう捉え方を変えてみるんだ。単調なオムライス。それはオムライスと言えようか? 否。つまりオムライスでありオムライスでない何かなのだ。そう思わないかね。葵くん、凛くん。
あ、はい。ド下手ですみません……。
だーめだ。話になんねー。
天才と凡人では埋まらない壁。そう無理難題。
「冬人くん、オムライスはもっとこおなの!」
「えっとね。こお描いたらいいよ」
うーん。無理(笑)
まずは手を見てみよう。手つきがこお何というか。
ふっ。冬人くんは察してしまったのだよ。ええ。
君たち4歳児ではないね。そう、4歳児の皮を被った化け物なのだ! HAHAHAHA! 正体見たり。お主らも迂闊であったな、この俺に正体を見破られるとは!
(おーい。そんなわけないじゃん。そんなほいほい転生させると思うかい?)
おっと、脳内に直接。やーん。エッチー。スケッチ。ワンダフル。ワン!
じゃなくて、なかなかにいい趣味をしてはりますな御代官様。ぐへへへ。悪い笑みが止まりませぬわ。
さてさて、親切にもカミサマから訂正をいただきましたとも。本当にありがた迷惑この上ない。というか、あなた俺に関わらないとかほざいてましたやん。あれー? 図星ですかー? やーいやーい。うーん。無視か。
俺は、『ド下手』と言われた心の痛みを虚勢を張って、無理矢理合理化しようとしてたのに論破されちゃいましたよ。全く、いらない助言でしたとも。
ちっくしょぉ!
この胸の痛み晴らさるべきか。いや、俺は大人。赤ん坊などというチンケな存在ではないのだ。耐えろー。耐えるんだ。冬人くんは頑張れる子。冬人くんはいい子。よし。
「先生、外で遊びたい!」
「え、えっと。そ、そうしましょうか」
そう。忘れるんだ。体を動かせ。脳筋へとランクダウンをしてしまうがこの際しょうがない。
決して、逃げているわけではない!
戦略的な撤退なのだ! 仕方ないのだ。渋々なのだ。不本意なのだ。そこら辺は充分理解してクレメンス。
「「「冬人くんあそぼー!!」」」
「うん」
さて、外へとLet's go
◇◇◇
さてさて。ほんとうにさてさて。俺は保育園児である。忘れてもらっては困る。
今は外。そう外である。何しよう。
この保育園の凄い所! ドンドンパフパフ!
その1
とにかく広い。サッカーグラウンドくらいあるんじゃなかろうか。しかしだ。少々保育園児にはもったい気がするような。しないような?
その2
遊具がもりもり。森森しすぎて森になるんじゃ……んん! じゃなくて、ブランコ、ジャングルジム、などなどエトセトラ。これは幼児もにっこり。俺もにっこり。みんなにっこり。これで世界平和も万事解決。よかったね。
その3
うるさい。とてもいい事です。ええ。決して、文句とかではありませんとも。ええ。
あっち見ても女児、こっちもあら不思議、女児。あらあらあちらにも女児。何という事でしょー、男児がおりませぬ。どうなってんだ!
そうだ、ここは男女比世界。なら納得。とはいかないのが俺なんですねー。俺を甘く見てもらっちゃー困るよ。奇才の異端児とは、俺のことよ!
ま、呼ばれた事ないけど。自称が外せないのは解せないが。全く持って遺憾であります。
さて、何をしようか。
ただ遊べばいいとか思ってるそこの君! 大正解! だがしかーし! ちょびいっとくらい考えてみぃ、俺の精神年齢は20代後半〜30歳半ばほどだ。もし仮に、それくらいの年齢の者、もちろん単独者であることが条件だ。その人が、めっちゃ笑顔で全力で遊具を満喫してる姿を。
普通は、通報or病院の2択確定なのよ。それが俺が遊具を満喫することで現実へと昇華されてしまうのだ。されてしまうのだ!!
わかってい…「冬人くんいくの!」
「ちょ待てよ!」
「うるさいの。つべこべ言わずに来るの」
「えっとね、冬人くんは黙って着いてきて」
「あ、はい」
ダメでした。抵抗虚しく連行されていく冬人くんなのであった。もう、勝てない気がします。このままだと2人となんだかんだで結婚まで行く気がするのは必然? いやね? 2人なら別にいいんだけど、尻に敷かれた旦那さんとかどうよ? いや、普通か。
でもさ、もうちょい2人に対して発言力が欲しいわけでしてね。せっかく2人と仲良くなったのなら2人を守れるくらいに冬人くんはなりたいのですよ。はい。
しかし、2人に少なからず好意を抱いているのは、事実。もしかしてロリのコンの才能が俺にはあったの…か……!? ちょっとショック。
1番あっちゃいけない才能。
だが、日本は古来からロリのコン王国であることは周知の事実。俺でも昔は小学生くらいの子が成人と結婚する事はよくあったという事は知っている。ほんとか知らんけど。
なら、その本能が蘇ったのだ。そういう国民性なのだ。なんか、風評被害がえげつないような。
おかえり本能。グッバイ倫理観。
◇◇◇
「冬人くんは、私の旦那さんやってね」「冬人くんは、葵の旦那さんなの!」
ふっ、モテてすまんな! HAHAHAHA! 世はまさに大色男時代! 4歳児であろうと、その色気は隠せへんねん! がーはっはっはっは!
さて、本題に戻らせていただこう。そう、今はおままごとタイムという事で、冬人くんは砂場へと連こ……げふげふ。遊びに誘われたのだ。ジシュテキにね。
「冬人くんどっちが、えっとね、ママになって欲しい?」
「冬人くんは葵を選ぶの!」
マ、ママだと!? わいのママはんは六花はんと決まっとるさかい。他の女にママは名乗らせへんで!
しかし、女児にバブみを感じないかと言われたら否。1周回って感じたい。むしろ感じさせて欲しい。
だが、あまりにも業が深い。そんなことしてしまえば地獄の業火に焼かれてしまうのも火を見るよりファイアーだろう。どうしたものか。
いや待て逆転の発想だ。2人をママとしてしまえば2人を軽くあしらおおうとどうにかなるのではなかろうか!? 要は楽が出来るのではないか。惰眠への道も一歩近づく。
そうだ。決して、これっぽっちも2人をママにしたいわけではない。ええ、そうですよ。
「2人ともがいい」
やってしまった。だが、後には引けない……っ!
さて、どうなるのか。ドキドキ。
「冬人くんはいけない子なの!」
「えっとね。頑張る!」
「え、えっと……、葵ちゃん、誰からその言葉教えてもらったのかな?」
「お母さんなの!」
おいー! 何教えてはりますの! 葵ちゃんは妹キャラでしょう! 何、お姉さんキャラにしようとしてんの!
ほんと何してくれやがりましたの! 葵ちゃんママさん! 葵ちゃんに変なこと教えちゃ『メ』ですよ。
しかしよかった。葵ちゃん意味わかってなさそう。
ま、あんまり意味はないんだけどさ。
さて、おままごととは何をするべきなのか。全くわからん。
「冬人パパ、ご飯できたの!」
「冬人パパ、あのね。ご飯食べるよ」
おー! ご飯。定番ですなー。
しかし、俺がパパ? あれ? 俺、子供ちゃうん?
「あのー、俺は2人の子ど「「違う!」」あ、はい」
どうやら違うようでした。俺の勘違いでしたわ!!
しかし、2人の子供だったら……は! ませかの百合展開。ここで匂わせてくるか。キマシタワーとか言ってバラ(?)を1面に咲かせたほうがいい? 俺は壁のシミになるべき?
そこら辺のマナーがわからん。百合界隈に詳しい人いないのかね。
そうか。この世界は男子が乏しい。なら、女子同士の恋愛も前の世界に比べて一般的なのではなかろうか。うーん。どうなんだろう。まだまだこの世界の事なーんも知らんと。
「はい。冬人パパ」
「お、おう。いただこう」
「冬人パパ変なの!」
あのですね。葵さんや。あなた思った事、全て口にするのは良くなくてよ。俺なんて自主規制の化身だと言うのに。
「葵ちゃん、えっと、そういうのよくないよ」
我が心の癒し、凛姫。あなたこそが我の伴侶であったのですね。いいですとも。そんな優しいあなたと一生一緒にいたいです。
「冬人パパは、確かに変だけどね。あのね、そういうこと言ったら冬人くん傷つくよ」
前言撤回させていただきます。
あなたも敵でしたか。わかっていましたとも。別に悲しくありませんとも。シクシク。
「でも、なんかおかしいの! 変なの!」
「えっとね、だからそんなこと言わないの!」
そ、そんなこと言ったら葵ちゃんだって変なの!
『なのなの』うるさいの! そうなの!
とは是が非でも口には致しませんとも。だって俺、お・と・なだからな! 子供の戯事などでいちいち傷つきはしませんとも。ええ……嘘です。めちゃくちゃ傷ついてます。冬人くんは、デリケートなハートの持ち主なのです。使用方法、容量を適度に守って優しく接してください。壊れ物です。
さて、今はおままごとに集中集中。
◇◇◇
そんなこんなでどうたらこうたらあって、保育園での1日が終わった。実はおままごとに夏美が参戦してきてちょっとカオスになりはしたが、何とか冬人くんは頑張りましたとも。それはそれは頑張りましたとも。
今は夏美と一緒に母さんが来るのを待っている。
ところで、夏美さんや、ほっぺをつねらないでくださいませ。伸びてしまうではありませぬか。
でも、楽しそうではあるしこのままでいいか。きゃっきゃ言ってる。我が家のお姫様はかわいいですな。全くもってその通りでございます。
にしても、疲れたような? 気疲れなのかな? うーん。物理的には疲れてはないかも。この身体ほんと疲れない。
そんなこんなで母上が保育園へと参られました。
夏美は拙い歩き方ながらも母さんの元へと向かう。やっぱり、小っちゃい子にはお母さんが1番だよね。兄じゃは、流石に勝てませぬ。母は偉大なり。
「まんま!」
「夏美、冬人」
「お母さん!」
母親との感動の再会(10時間ぶりかな?)
涙なしには語れない親子愛溢れる物語。シリーズ第2弾絶賛大ヒット上映中。
◇◇◇
今日の晩御飯はお魚でした。ごちそうさまでした。
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