第7話

 扉を叩く音がした。



「し、失礼します。みんな元気になったので今度こそ! 今度こそ大丈夫かと!」


「みんなのとこ行く!!」



 NOなど言わせん! 先手を打ってやりましたぜ。ニヤリ。ささ、行きますぞ、母上!



「冬人ま、待ってー」


「あらあら、冬人さん元気ですね」


「冬人くん、こ、こっちだよー!」


「冬人ー、お母さんを置いてかないでー」



 後ろから抗議の声が聞こえてくるが、今大事なのは、みんなと仲良くなる事だ! なら、一刻も早い戦線への復帰がみこまれる。挽回のチャンス、逃してなるものか。



「みんな、さっきはごめんね!」


「「「ふ、冬人くん!?」」」


「え、えっとね。えっとね、私達もごめんなさい!」


「「「ごめんなさい」」」



 ど、どういう事だ!? 何故、謝り返されたんだろう。ま、まさか、先生この子達を悪者扱いしましたね?

 一生怨みますよ。という抗議の目線を向けておこう。



「ち、違うよ、冬人くん! みんなはね、そーだね、仲良くなりたいけどびっくりしちゃって泣いちゃったでしょう? それで冬人くんに迷惑かけちゃったって思ってるんだって。だからね、冬人くん、こういうときはどうしてくれますか?」



 おっと、この先生、4歳児になかなかの無理難題を向けてくるじゃありませんか。嫌いでなくてよ!



「みんなと仲良くする!」


「えらい!」


「えへへへ」


「皆さん、冬人くんはみんなと仲良くしたいんだって、仲良くできるー?」


「「「できるー!!」」」


「みんなえらい!」



 この先生なかなかに頭がキレやがる。というか、ちゃんと先生してて凄いや。しかし、子供の扱いに慣れすぎてはいませんか。

 ほら、頭撫でてあげてるけど、撫で方がプロだもん。まぁそっか保育園の先生だもんな。プロか。



「冬人くん。あのね。えっとね、これからよろしくね!」


「うん! 約束だよ!」


「うん! 約束。指切りしよ!」


「あ、凛ちゃんだけずるい!」


「私も!」「私もする!」「私も!」「するー!!」


「じゃあ、みんなでしよっか!」


「「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」」」


「「「あははははは」」」



 そう、こういうのでいいんだよ! 待ってました! 俺の青春。とうとう、始まってしまった。だが、どう思うよ。4歳から青春なんて。でも、こんな世界だもんな。早いことに越したことはないか。

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