第3話
「冬人、ほんとに大丈夫?」
「うん! お昼寝いっぱいして、お友達いっぱい作る!」
こんな感じで、どうだろうか。お昼寝9割、友達作り1割をモットーに冬人頑張らせていただきます!
そう、何を隠そう今日は保育園に初登校なのだ! えっへん! 生憎、今日は入園式があるわけでもといか何もない平日なのだ。
母さんが『男の子が来ちゃうとみんなびっくりしちゃうから、先生が元気満タンな時に行くんだよ』とか言ってた。要するに、女の子は、男の子に慣れてないから興奮しちゃって入園式どころじゃなくなるから、安全性の確保や女の子達が保育園に慣れて準備が完全な状態じゃないと男の子を迎えるのは難しいらしい。
大変らしいね。というか、実際男の子ってどれくらいいるんだろうね。
わかってもどうにもならんけど(笑)
なるようになるしかない!
そんな考えを巡らしていると玄関から母さんが呼ぶ声が聞こえてくる。どうやら、出陣の準備が出来たようだ。いざ行かん鎌倉へ。
「冬人行くよー」
「はーい」
◇◇◇
さぁ、やってきましたねー。
保育園!
母さんここからどうすんの!? 冬人くんノープランでございます。
「……ええ、そうしていただけたら……」
「……はい」
おっと、何か先生と話し込んでいるらしい。たぶん俺のことだよね。何話してるんだろう。たぶん、事前には話し合っていると思うが最終確認だろう。
ま、いっか。とにかく、初めての同い年の子と会うのはワクワクするね。おら、ワクワクす……おっと、何か凄い圧を感じた。やめておけというお達しか。
しかし、精神年齢的には……いや、考えるのはやめよう。俺はショタ。俺はショタ。よし。
いざゆかん、戦場へ。ほんとに、戦場なのだろうか?
「冬人くん、みんなに挨拶しに行こっか」
「はーい」
「あら、いい子ねー」
「えへへ」
先生が前を歩いて案内をしてくれる。そこに俺と母さんがついていく。しかし、他のクラスの子らの気配がしないというか静かすぎる。これも、男の子と女の子が鉢合わせないように保育園側の配慮とかだろうか?
しかしだ。先生の目がちょーっとだけ怖い。
先生怖くありませんこと?
目が草食動物に狙いを定めた肉食動物でしてよ?
「せ ん せ い?」
「は、はひぃ!」
さすが、母上。略してさす母。
しかし、凄い怖いよ? 母さん?
なるほど、なんとなくだが理解した。これは、自衛といい、いろいろ大変そうだな。にしても、どんだけ男性が枯渇してんだ? 先生ぐらいの年、おっと、女性に年齢の話はしてはいけませんね。はい。とにかく、狙われてるのか? それとも単なるショタコンの可能性も拭い切れないぞ? いや、人間は元からショタコン、ロリコンの素質は秘めて入るのか。それを解き放って覚醒させてないだけで、ゴロゴロそこら辺に原石はいるわけよ。嫌だなぁ。そんな原石嫌だなぁ。
「じゃ、じゃあ、冬人くん行きましょうか?」
「うん」
とりあえず、様子見かな。
うーん。あ、こんにちは。あ、こちらさんもこんにちは。
思ってはいたけど、女性の美人率高い気がする。すれ違う先生方がみんな美形だもん。テレビの方は、参考にならないというか、基準が高いからね。うちの母さんと夏美がかわいすぎるだけかと思ったけど、みんなが平均して高すぎる。こりゃあ、面食いの人は最高だろうな。ま、俺の母さんと夏美が一番可愛いのは当たり前なんだがな。
「冬人くんついたわよ。ここが、スイカ組よ」
ここからは、かなり人の気配がする。ゴクリ。心の準備はできた。冬人行きまーす!
ガラガラガラ。
「みんなー。今日から、お友達が増えるよー」
「「「………」」」
あれ? もっとこお、『きゃー』とか『わぁー』とかないの? あ、でも、本気の『きゃー(悲鳴)』はガチ目に傷つくんでちょうどいい塩梅でオナシャス。俺は引かれたいわけやないんや! 惹かれたいんや!
「あ、あれ? み、みんな、新しいお友達よ?」
「「「………」」」
やばい。メンタルがやられた。泣いていい? ガチ泣き5秒前になっていい? え? どうすんのこれ。
とりあえず、先生の顔を見て何かを訴えかけるのが吉と見た。というわけで、顔は先生の方を向き目で訴えてみる。
じーーー。
「……」
「え、えっと、冬人くん?」
じーーー。とりあえず、これで乗り切るしかないのだ。今、女児達をみると居た堪れなさで、超気まずいんすよ。というわけで先生を見ることに集中。耐えてくれ俺の心臓!
「あ、あのね。あのね。……えっとね。あなた冬人くんというのね?」
おっと、これはあの映画のワンシーンを思い出すね。『あなたト○ロって』…おっと、またしても何か圧を感じるぞ。や、やめてくれー、お、俺はまだ消えたくない。
ありゃ、不安そうな顔してる。やばいぞ。こういう時何って言えばいいんだ。普通に『うん』とか言えばいいのか!?
いやでも、そしたらハーレムエンドが着実に近づいてくる気がするのがな。ハーレム君「やぁ」
ひゃー!!
ほら来たよ。言わんこちゃナイチンゲール。
男は度胸、やったろうじゃねえか!
コクリ
この身体ひよりやがったよ。いや、案外よかったのかもしれない。そう、前向きに捉えていこう。
男は度胸。しばっていこう。オー!
「うんとね。えっとね。私ね。えっとね。凛って言うんだよ!」
うなれ、俺の灰色の脳細胞。考えるんだ、ショタらしく無難で、だけど相手の子、凛ちゃんを思いやった返事ができるそんな、オールパーフェクトな答えを!
うおおおおおおおおお!!
ダメだ。思いつかねー。まだ、4歳の頭には無理難題すぎたか。なら、なるようにしかならんぞ!
決して侮るでない我を!
ニコ
とりあえず、笑顔で返すのがいいだろ。俺天才。まじ天才。だがまぁ、リスクはある。凛ちゃんが俺に惚れてしまわないかだ。いや、違うんですって!
自意識過剰とかじゃないんですって! いや、まじで。事実としていったまでですって。
いやだってさ、母さんの顔面偏差値考えてみ?
俺がイケメンじゃないわけある?
なんなら、テレビに出てるアイドルとか目じゃないって。それに加えて、男が少ないわけよ。
モテない方が、無理なワ・ケ・!
さて、どう来るのか。
解説の冬人さんと実況の冬人さんいる?
ワクワク。ドキドキ。
「ふ」
「ふ?」
「「「ふえぇーーん」」」
あ、ありゃりゃ?
泣き出しちゃったよ! ど、どうすんの!?
キモすぎた!? 調子乗りすぎだった!?
だったら、死にたくなってきたんですが!?
この数の女児達を泣かせたという実績ができてしまった。いったいどこの鬼畜野郎だよ。そう俺だよ。
いや、まじどうすんの?
「あ、ありゃりゃ。みんな、大丈夫よー。冬人くんはとってもいい子だからねー。ちょっとびっくりしちゃったんだよねー。はい、よしよし」
「あらあら」
珍しく、母さんも焦ってる。なんだか、焦ってる母さんみたら冷静になってきた。
「冬人くん、冬人くんママさん、ほんとうに申し訳ございません。こちらの判断ミスでした。みんなが落ち着くまでどうかお待ちしていただけたら幸いです……。あ、園長先生、カクジクシカジシクで」
「……ええ、わかりました。そちらの対処は任せますね。冬人さん、六花さん、この度はまことに申し訳ございません。ここでは何ですので、場所を移してお話しの続きでもよろしいでしょうか?」
「ええ」
「ではこちらに」
「冬人行こっか!」
「うん!」
一時はどうなるかとは思ったけど、先生の対応が早くて助かった。ふぅ。
1日目にしてこれはなかなかだなぁ。この先が思いやられるよ。まったく。まぁ、楽しみな事には変わりないけどさ。
考えを巡らしているうちにどうやら着いたみたい。
えーっと何々? ら・い・ひ・ん・し・つ。
ほへぇー、保育園にもあるんだー。
あ、中に入ってる。おー、すごっ。めっちゃ、高いソファーじゃん。何これ何これふっかふっか。まるで、雲みたい。
やばい、楽しすぎて若干思考が退化してた。
「……この度は、ほんとうに申し訳ございません」
「いえいえ、男の子は珍しいですからね。あれくらいの反応よくありますよ」
何やら、母上がお話しをしている。母上なら、大事にしたりも咎めたりもしないだろうし大丈夫かな。さてと、俺は邪魔をしないように空気空気と。そう、今の我は空気と完全に一体となった。見つけれるものなら見つけてみるがいい! はーはっはっはっはー!!
「冬人くん、ジュース飲む?」
「うん」
ですよねー。俺の短い栄光は終了致しやした。ちゃんちゃん。
とりあえず、ジュースいただくとしますか。おー、りんごジュース。うまいうまい。
ここで、耳寄り情報。どうやら、この身体というか若い身体と言った方がいいのかな? は、味覚が敏感ぽい気がする。当社比(冬人の独断)によるとなんか、倍美味しく感じる気がする。あと、社畜時代は食べれたピーマンとかが食べれなくなってる。まぁ、頑張って食べるけど。母上が、一生懸命作った料理を残す事はできようか? 否、できるわけがない。
◇◇◇
扉を叩く音がした。
「し、失礼します。みんな元気になったので今度こそ! 今度こそ大丈夫かと!」
「みんなのとこ行く!!」
NOなど言わせん! 先手を打ってやりましたぜ。ニヤリ。ささ、行きますぞ、母上!
「冬人ま、待ってー」
「あらあら、冬人さん元気ですね」
「冬人くん、こ、こっちだよー!」
「冬人ー、お母さんを置いてかないでー」
後ろから抗議の声が聞こえてくるが、今大事なのは、みんなと仲良くなる事だ! なら、一刻も早い戦線への復帰がみこまれる。挽回のチャンス、逃してなるものか。
「みんな、さっきはごめんね!」
「「「ふ、冬人くん!?」」」
「え、えっとね。えっとね、私達もごめんなさい!」
「「「ごめんなさい」」」
ど、どういう事だ!? 何故、謝り返されたんだろう。ま、まさか、先生この子達を悪者扱いしましたね?
一生怨みますよ。という抗議の目線を向けておこう。
「ち、違うよ、冬人くん! みんなはね、そーだね、仲良くなりたいけどびっくりしちゃって泣いちゃったでしょう? それで冬人くんに迷惑かけちゃったって思ってるんだって。だからね、冬人くん、こういうときはどうしてくれますか?」
おっと、この先生、4歳児になかなかの無理難題を向けてくるじゃありませんか。嫌いでなくてよ!
「みんなと仲良くする!」
「えらい!」
「えへへへ」
「皆さん、冬人くんはみんなと仲良くしたいんだって、仲良くできるー?」
「「「できるー!!」」」
「みんなえらい!」
この先生なかなかに頭がキレやがる。というか、ちゃんと先生してて凄いや。しかし、子供の扱いに慣れすぎてはいませんか。
ほら、頭撫でてあげてるけど、撫で方がプロだもん。まぁそっか保育園の先生だもんな。プロか。
「冬人くん。あのね。えっとね、これからよろしくね!」
「うん! 約束だよ!」
「うん! 約束。指切りしよ!」
「あ、凛ちゃんだけずるい!」
「私も!」「私もする!」「私も!」「するー!!」
「じゃあ、みんなでしよっか!」
「「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」」」
「「「あははははは」」」
そう、こういうのでいいんだよ! 待ってました! 俺の青春。とうとう、始まってしまった。だが、どう思うよ。4歳から青春なんて。でも、こんな世界だもんな。早いことに越したことはないか。
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