④「過去問やってます」は勉強じゃねーから!
今回は赤本、青本、などなどで過去問をやりまくっているころだと思うので、その話でもしましょう。
もう11月。ラストスパートです。
この時期、私は一般受験を考える3年生全員に最近の勉強の進捗を確認しに行きます。1人1人、1対1で面談形式で。
まずこの時期には、大まかに受験校を決めておいて、その過去問を1年分終わらせているのはマストです。てかこれでも遅いくらいですが、まあ最低限ね?
([愚痴]なぜまだ過去問1年分もやっていない人がいるんですかねぇ。敵を知ることこそ、今後の自分の勉強について、何をやるべきかが見えてくるというのに)
※難関私立・国公立志望はそれでは遅いし足りんよ? もっとやってるよね……? ここではこれ以上言及しませんが。
と、言うことを聞かない悪い子に頭を抱えるのが例年ですが、さすがに10年近くやっていると、生徒にうまく意義も伝えられるようになってきたので、今年はあまりなかったですね。0とは言っていないけど。
話を戻して、この時期の面談で、今後の勉強計画について訊くと時たまこういう答えが返ってきます。
「さらに過去問やりまくっていきます!」
⇒勉強計画の70%以上が赤本! ひどい人は80%!
そういう勉強計画を見せつけられたら私はものすごく不安になり、その意図を訊きます。別に意図があるならいいんですが、何となく「過去問やらなきゃ」というノリでやってる人いるんです。信じられない? いるんだなぁこれが。
……まあ日中授業がある人には無理もないことです。この時期、プレッシャーもヤバいし、そもそも忙しいし、難しいことや気が滅入ることを考えるのはしんどい。
自分の今の状況はともかく過去問をやれば無駄ではないように思えるからまずはそこから、と考えるかもしれなせん。
それにもちろん過去問演習は0%ではいけません。その大学のレベルや出題のされ方に一番近いのはやはりその大学の過去問です。模試のように挑んで欲しいし、その復習も無駄ではありません。できないをできるにするのは勉強で最も重要なことです。
ただ私ははっきり言います。
赤本はあなたの学力を上げる道具ではない。
大事なことなので声高らかにもう一度。
赤本はあなたの学力を上げる道具ではない!!!
だってその問題が出るわけじゃないんですよ?
資格の試験と大学受験の問題は違うんです。資格試験は過去問に似た問題が出るから過去問をやりまくることに意味があることもあります。
大学受験には「過去問使おうぜ」の流れがあるにはあるとはいえ、基本的にはその大学の過去問が次の年に出る可能性は著しく低いです。
埼玉大学の英作文がまんま過去問と同じ問題が出たというニュースで「わざわざ」賛否両論が起きるくらいには、自分の見たことある問題とまんま同じ問題が出るのはレアケースでしょう。
なのに! なぜ! 過去問で勉強した気になるつもりなんだ!
過去問を使っての演習ってのは、単に大学の過去問をやって、正答率を数えて一喜一憂するためにやるものじゃないのですよ。
過去問演習は実施した後にその先を見据えないといけない。
合格点(できれば+5点)を得るために正解すべき問題はちゃんと取れているか?
時間内にその合格点を得点するために必要な作戦は? 円滑な作戦実行のために必要な練習は?
今後どんな勉強をするべきか。これが大事。
当然ながら正答率が足りていないなら、正答率をそこまで引き上げるために自分に何が足りなくて、どのような勉強をするのかをしっかり考える必要があるでしょう。
知識が足りないのなら、間違えた内容だけでなく、その周辺知識の確認を。必要な知識があっても解答を導く力が足りないのなら、その解答力を磨けるような勉強を。時間がかかりすぎているのなら時間を短縮できるように訓練を。
実際にやってみて見えてきた反省点を中心に、自分の持っている勉強道具に戻るか、必要な勉強道具を用意して徹底的に訓練する。
もう網羅的にやっている時間がないからこそ、過去問というのはその学校に合格するために自分に足りていないもの、もっと伸ばした方がいいものを見せてくれるツールですから、それをしっかり分析し、次の行動を決めることが大切です。
なので、結果的に、過去問演習と反省点の復習で1:2くらいの割合になるんじゃないかと思います。
もちろんこれは志望校にもよりけりです。難関校の場合は解答力を磨く必要がある人もいるのでその場合は1:1になったり、逆に基礎磨きが足りないと分かったら1:3になるかもしれない。
そのあたりもまずはやって見えてくるものですが、ともかく過去問をやった後に何をするのかが大切です。
もう一度言いますが同じ問題は出ないと思った方がよいでしょう。ならば次に出る問題と戦うための準備をするために動くべきです。
過去問は自分に足りないものや次に何をするべきかを判断する判断材料の1つなのです。
その判断材料兼練習ツールだけを勉強内容にしては自分の学力に進歩がありません。合格への分析(過去問)⇒改善への行動(対策教材で勉強)⇒合格への分析(過去問)⇒改善への行動(対策教材で勉強)。その繰り返し。
まあ、すごくざっくりとした言い方でしたが、まあそんな感じでバランスを見極めて、勉強を『やってるつもり』にならないことが大切でしょう。
逆に過去問があまりに難しく心が折れる人も多々いると思いますが、だからって今から網羅的に基礎の復習とかやっている時間はないでしょう。
だからこそ過去問の分析の上、範囲を絞って狙い撃ちして自分の「できない」を1つでも多く「できる」にする心構えで行きましょう。
そもそもたった3年でその自分の学ぶ教科を100%完璧にできるなどというのは傲慢なのですから。教える側の人だって本当にその科目の森羅万象を知っているかのように振る舞えるのは長い時間をずっとその教科と向き合ってきた結果なのですから。
(追記 私が生徒に過去問を用いた勉強をする際にどのような説明をしているのか、概略を書いておきます)
私個人として赤本の意義は主に以下の3点だと思います。
①:出題のされ方を知り、次同じ形式で出たときに、時間内に合格点を取るために、時間配分はどうするのか、各問題へのアプローチの仕方をどうするのか、などを自分なりに研究する。『問題の分析』
英語を例にすると、T大学は60分で、
大問1は長文の空所補充と内容が問われる長めの英文。
大問2は長文の空所補充と内容が問われる1より短めの英文。
大問3は4択の文法・語法・語彙問題
大問4は短めの会話文の空所補充
大問5は並び替え(整序英作文)
を解かないといけないとする。
となっている場合、まず重要なのは時間配分でしょう。1には23分? 2に17分。3,4,5でそれぞれ6分半?
いや無理w てなったら方法は2つしかないでしょう。時間制限は伸びないのですから、どの問題に時間を注ぐかの取捨選択。あるいは時間配分の変更。3、4、5は5分!で長文に時間を駆けないと正答率が落ちるかもしれない――
これに関しては、個人の主観でまずいいでしょう。周りの大人や学校や塾の先生は理想的な時間配分をあなたに教えることはできますが、やはり個人によって細かな調整は異なります。
ほら、スポーツ選手だって同じ競技をしてても全員が全員完全に同じ動きじゃないでしょう? 自分の体に合ったテンポがあります。
英語で言えば長文を読む速さはいかに訓練で速くできるとは言え個人差がないわけではない。個人ごとに多少の誤差があるからこそ、自分なりの作戦を立てていくべきです。
もちろん、多少は理想に近づけるよう努力する必要はありますが。
②:①で研究した方法で解きなおしを行い、研究結果通りの動きが実際可能なのか練習をする。
研究成果が正しいかどうかを確認するためにもう一度解きなおしをしましょう。ここで「もう答え知ってるのでこれ」ではなくて、解法を導くすべての手順を実際にやることが大切です。
そして研究成果として出した結論通りに本当にやれるのか? そしてやれたときに「これくらいのスピードで」「こういうふうに」「これくらいの手ごたえがあれば」手ごたえがあると言えるのか、と体得して欲しいです。習得したその感覚が当日の自分を迷いなく動かしてくれるでしょう。
③:今後の勉強について何をやるか決定する。
特に重要なのは復習と分析の際、正解すべき問題と捨て問を分け、正解すべき問題で正解できなかった原因を探ることです。
一番やってほしいのは、正解すべきだったのに間違えた問題は自分の持つどの教材を使えば、あるいは自分がやってきた何を復習できていれば正解できた可能性があるのかを探すことです。全部の問題にやると時間がかかりそうですができる限りやりたいところですね。
そうすればなんの復習が足りていなかったのかが分かると思います。そしてその教材(その自分がやってきた学習)をさらに完成度を高めていくとよろしいわけですね。
仮に『今までのもの』では解けなかった可能性が高い、と思った場合は、新しく教材を足したり、これまでにない勉強方法が必要になる合図です。
上はあくまで一例ですが、このように自分の持っているものと照らし合わせて分析することで、自分でもよりはっきりとなにをすればいいか見えてくるわけですね。
以上を踏まえると、過去問は実施した後の復習にもかなり時間がかかるわけです。
過去問は使い倒すのです。やって終わりではあなたが過去問を購入するときに消費した1500円以上分のリターンはないでしょう。せっかく手元においたのなら、その過去問からちゃんとリターンを得てください。
ちなみにこれは1年生、2年生の模試でも同じです。
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