③ 参考書ルートを完璧にやり遂げたあの子は受からなかった
例えば、授業をしない塾!と有名な某TKD塾が提唱しているのが、参考書をしっかりやり切るという前提で、
「このレベル帯の大学を受けるには、この参考書をやって赤本で演習しよう!」
と提案する参考書まとめ。
『参考書ルート』とか呼ばれているのを聞いたことがある人もいるでしょう。
ちょっと頑張って検索をかければ、そこ以外にも様々な塾さんだったり、個人がそう言った類のものを提案しています。
いやぁ、いい時代になったものだね。だって検索すれば塾の先生がおすすめしなくても、その道のプロがこの参考書をしっかりやれば独学でも志望校を狙える。夢のある話です。
私も同業者として、特に三流講師の私としては世の中でご活躍されている先生方の考え方は非常に勉強になります。鵜呑みにはできないものの、結構仕事場で聞いたことが役に立つことも多いです。
特に、具体的に志望校が決まっている子は、現状の学力を踏まえて、どのような勉強をさせるか考えるときに、参考書ルートを参考に考えることはあります。
もちろんもう一度念のため言いますが鵜呑みにはしてないですよ? 週に1回書店に新刊を見に行ったり、今でも新しくでた、あるいは良さそうな参考書を自分で買って研究してますし。もちろん日々時間を取って情報集めをしています。
私って偉いなぁ(自画自賛)
まあそれはさておき、参考書ルートの話をするときに、思い出す、昔担当していた子がいます。
個人情報を出すわけにはいかないので、あまり具体的なことは言えないのですが、その子は偏差値で言うと60近くの経済学部を目指していました。
ちょうど3年生の初めのころから見始めた彼とは毎週の授業に加え、1か月半に一度、面談をして学習の進度を一緒に確認しながら、やっていきました。
今にして思えば1か月半に一度だと少なかったかな? と反省しているのですが、それは置いておいてほしい。
彼はいわゆる参考書ルートに沿って、しっかり勉強し、10月から過去問演習に入っていました。
進度確認では、口頭質問やテストを踏まえて書く参考書の内容の確認をして、完成度高く仕上げていたことを確認していました。
過去問演習も第一志望だけでなく、受けるところすべて十分な数こなしていたと思います。
そして結果。
彼は滑り止め以外の大学に合格できませんでした。
果たしてなぜなのか。正直原因が最初はわかりませんでした。彼は十分頑張っていたはず……。1冊1冊もちゃんとやっていたと思いますし、勉強時間も十分でした。これは主観ではなく、数字と私以外の客観的評価が証明しています。
受験とは勝負の世界において、負けることもあり得るだろう、と言われればそれまでなのですが、やはり私が担当していた子をちゃんと勝たせてあげられなかったのは悔しいなぁ。
彼には「今自分のやっている勉強を信じて足を止めないことが重要だ」と言い続けていました。
参考書ルートが悪いというつもりはありません。
彼はやることがはっきりしている方が勉強に専念できるタイプだったので、本の内容をきわめる、というシンプルなことをしっかりやって、着実に模試等で結果を出していたのです。あれはちゃんとやれば確かに効果が出てくるものなのでしょう。
では何に問題があったのか。
うーん。いまだに完全にはわからない。
このポンコツぅ!
ただ今にして思えば、彼にはもっとできたこともあったんじゃないかと思いますね。叶うならあの若いころに戻りたいねぇ……え? 話が変わってる? まあそこは気にせずに。
たぶん、彼にはそのルートだけをやっても受かるに至らなかった原因が何かあったのでしょう。
最近、参考書ルートは市販薬みたいなものだと思っています。様々な人が、学力が足りないという病状にとりあえず服用することで効果が出る。
それが特効薬になることもあれば、「ある程度の効果が見込める」となるもある。それは服用する人がどんな状況か、あるいはその年にどんな問題が出るかによりけりだと思います。どうあれ、悪いものではない。
その一方で、そのルートを走りながら、足りないもの、自分には補わなければならないもの、を適宜追加し、よりよい治療方法を目指す。そういう+αの努力をするとより良い場合もあります。
例えば英語読解の参考書をやっているときに、丁寧な和訳で誰もが見て納得できるとしても、前置詞に対する理解が浅ければ前置詞図鑑を読むと、読解の精度が圧倒的に上がった、とか。
ぶっちゃけルート的には前置詞についてそこまで深い理解は求めていないようだったんですが、その子にピタッとハマったみたいですね。
その経験をしたとき、やっぱり常に成績を上げるために何が必要かを考え、その勉強をするのもいいんだなと思いましたね。塾講師としてはそれを見つけてあげられるようにあらゆる施策を行うべきなんだな、と強く感じました。
赤本演習では自分の課題を見つけることと、志望校が出す問題の傾向に慣れ、どのような対策が必要か考えること。それはやりますが。
その時だけじゃなくて、参考書学習をしながらでも、似たようなことをやってもいいかもですね。常に自分の課題を言語化し、必要なことならルートにない内容でも、自分の学力のために勉強しに行く。
ルートとは道。進むことは正しいですが、どのように進んでいくかによって、受験の日にどんなにできるようになっているかは異なります。
過信禁物、とは思いますね。
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