第23話 優しい夫の裏の顔*
脇役同士の婚外性交の話が出てきます。
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アントンは鋼の精神でリーゼロッテと最後までしなかったので、1度達した後もまだ衝動が収まらなかった。今度こそ彼女と繋がって中で子種を放ちたい。興奮ではち切れそうな頭でもリーゼロッテでそれをやっては駄目だという理性は保っていた。でも彼女が気を失っていたので、いつもの媚薬・避妊薬入り睡眠薬を飲ませていなかったのがアントンの頭からすっかり抜け落ちていた。
アントンが駄目元で配下を呼ぶ秘密のベルを鳴らすと、まもなくノックの音が聞こえた。部下のうちの誰かが帰って来ていたようだった。リーゼロッテとの情交は気持ちよかったが、最後までできなかっただけに性欲が収まるどころか、尚更昂ってしまい、来たのが男の配下でも相手にしていいとまで思うぐらいだった。元々、アントンは任務のために男性相手にも肉体関係を結ぶ訓練を受けている。実践でも、何度も男性の調査対象と寝た事や、任務後の昂った気持ちを男の配下と発散し合った事もあり、受け攻めどちらでもいける。
アントンは前を隠しもせずに扉を開けて部下を迎え入れた。扉の向こうに立っていたのは、ペトラだった。
「ペトラ、壁に手をつけろ」
「旦那様、隣の部屋に行った方がいいのでは?」
「いつも通り、彼女は気を失ってるから大丈夫だ」
ペトラが寝台から一番離れている壁へ向かおうとすると、アントンは腕を引っ張って寝台の横に連れてきた。
「ここでやろう」
「でも奥様のすぐ横ですよ」
「彼女の顔を見ながらお前としたい」
「相変わらず、旦那様は鬼畜ですねぇ」
「いいから早く尻を突き出せ」
アントンは後ろ向きのペトラに身体を重ねて動き始めた。2人が繋がっている間、アントンがリーゼロッテの名を呼んでしまい、ペトラは少し機嫌を悪くした。
2人がうるさい上に、飛び散った液体がすぐ横で気を失っていたリーゼロッテの頬にかかったので、取り戻しつつあった彼女の意識を浮上させた。でも達し過ぎたリーゼロッテの身体は言う事を利かず、瞼が重くて開けられない。だが、耳は利くので、信じがたい声と音――あられもない夫と部下のペトラの嬌声と水音――が耳に入ってきた。奥手なリーゼロッテだってこの嬌声と水音が何なのか知っている。リーゼロッテは、怖いもの見たさに重たい瞼を必死に開け、薄目で隣を見た。
すると夫が夢中になって後ろ向きのペトラと一体化しているのが見えてしまい、リーゼロッテは慌てて目を瞑って気を失った振りを続けた。無理矢理閉じた瞼からは、いつの間にか涙が頬まで溢れてきていた。
実は、その少し前からリーゼロッテは、閨の前に例のお茶を飲んでも、目が覚めるまでの時間が徐々に短くなっていた。でも彼女が目を覚ました時にはアントンは夫婦の寝室にいないので、アントンはその事に気付かなかった。
それからしばらくしてアントンがすぐ横で他の部下の女性と身体を繋げている最中にとうとうリーゼロッテは目覚めてしまった。だが、初めて夫とペトラの情事を見た時と同じように、リーゼロッテは胸が痛くなる気持ちを抑えて必死に寝た振りを続けた。
後日、リーゼロッテは、アントンが別の部下の女性とリネン室に入って行ったのを偶然見かけた。以前ならそんなに疑問に思わなかっただろうが、もう2度も夫の不貞を見てしまった以上、アントンが女性の部下と2人きりでリネン室に何の用があるのか疑念しか湧かなかった。鍵穴から様子をこっそり伺うと、アントンとその女性のあられもない声が聞こえたが、鍵穴からは2人の姿が見えず、もどかしくて扉を薄く開けた。すると、アントンが女性の背中を壁に押し付けて情事に耽っている様子が見えた。リーゼロッテは2人には気付かれなかったと思ったが、実はアントンは薄く開いた扉をちらりと見ていた。
その後もリーゼロッテが注意して噂話を聞いたり、観察したりしてみると、アントンは様々な女性と関係を持っていると分かり、胸が張り裂けそうになった。
それから閨の時に必死に正気でいられるように我慢してみると、リーゼロッテが気を失う前にアントンが最後までしていないのにも気付いた。他の女性とは簡単に身体を繋げて子種をばら撒いているのに、妾腹の下賤な出自の自分とは子供を作りたくないのだろうかとリーゼロッテは悲しくなった。
でもアントンは時々――特に閨で――意地悪な事を言う以外、表面上はリーゼロッテには優しかったし、何より初めて会った時の気遣いが忘れられなかった。彼は実家で虐げられていたリーゼロッテを救ってくれた王子様だったのだ。実際問題、離縁しようにも、彼女には虐げられていた実家に戻る当てはなく、外で自活できる術もないし、貴族女性が修道院に入るのには寄付金が必要だ。
だからリーゼロッテは夫の不貞に胸を痛めながらも知らない振りを続ける事を選択した。アントンも表面上、以前と全く変わらず、妻が不貞を知っているのに気付いているようには見えなかった。
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