第22話 香の副作用*

自慰(***の後)と夫婦間の少々乱暴な行為(☆☆☆の後)の描写があります。夫は、婚外性交に全く抵抗を持っておらず、貞操観念を持ち合わせていません。そういう描写が苦手な方はご注意下さい。


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 アントンは結婚から半年ほど経ち、表面上はリーゼロッテを週1回ほど抱いている事になっている。でもお茶に薬を入れて閨の前にリーゼロッテに飲ませ、愛撫の末に彼女を気絶させて最後まで抱いているように初夜の時から思わせ続けている。


 閨の日は特に決めていない。があった後は気分が昂って乱暴な性交になりがちなので、アントンはなるべくリーゼロッテとの閨を避け、商売女か部下と性交して性欲を発散する事にしている。


 調査対象者と肉体関係を持って情報を引き出すのは、影にとって常套手段である。1回きりなら本当に身体を繋げる事もあるが、1度の性交で得られる情報など大抵、大した事はない。だが実際に調査対象者と何度も性交するのは、性病の恐れもあるし、特に相手が女性の場合、今の技術水準では男性側の影が避妊薬を飲んでも妊娠の可能性が完全にはなくならない。逆に継続的にこっそり避妊薬を相手に飲ませるのも気付かれる危険が高い。だから基本的には意識朦朧にさせる媚薬成分を含む香を使い、調査対象者に特別な関係を継続的に持っていると思わせてもっと大きな情報を得る。


 この類の香は、飲み物に垂らす液体の媚薬よりも自然に性的な絶頂に見せかけて相手の意識を混濁させられるので、任務でよく使われる。ただ困った事に、アントンや部下達の一部は子供の頃から耐性をつけているにもかかわらず、香を嗅いだ後、性欲を我慢できない衝動に駆られるようになってしまった。酷くなると香を使っていないのに、1度性的な興奮を覚えると何度も達しない限り、衝動が収まらない。


 その日もアントンは、昂る性欲を娼館で発散するつもりだった。本当は何度か達してから帰宅する予定だったが、興奮が高まり過ぎて娼婦の肌にいくつも歯形をつけてしまい、最後までしないうちに娼館から追い出されてしまった。


 いくら高額な料金をとったとしても、赤の他人のつけた吸い痕や歯形を見るのが大好きな変態の客ばかり来ない限り、痕が消えるまで商売あがったりである。だから娼婦の身体に吸い痕や歯形をつけるのは禁じられている。ところがその日、アントンは性欲が異常に昂ってしまって娼婦相手に何をしたか分からなくなり、気付いた時には歯形だらけの肌を晒して大激怒する娼婦と娼館オーナーが目の前にいた。


 渋々帰宅した後、アントンは自宅で部下と性欲を発散させようと思ったが、生憎全員出払っていた。


***


 アントンは仕方なく自分の寝室でトラウザーズの前を寛げた。娼館で発散できなかった欲はもう暴発寸前であった。それで彼は知らず知らずのうちに自慰に夢中になっており、扉がノックされたのにも気付かなかった。


 リーゼロッテは、アントンが外出先から帰宅する時、いつも玄関に迎え出ている。その日、帰宅時のアントンの様子がおかしい事に気付いて夫の部屋まで来てみれば、ハァハァと荒い息をするのが聞こえ、リーゼロッテは夫が心配になった。


 リーゼロッテが夫の寝室の扉をノックしても、返事はなく、荒い息が聞こえるだけだった。扉を開けようとしたが、鍵がかかっているようで開かない。仕方なく夫婦の寝室に回って内扉を押してみたら、扉が開いた。すると股間で手を動かしている夫の姿が目に入り、思わず悲鳴をあげた。


 結婚してから何度も閨を経験していると言っても、リーゼロッテは夫の局部をまともに見た事がなかった。


 普段、閨ではリーゼロッテばかり絶頂してアントンは冷静さを保っていたようだったのに、目の前の彼は蕩けた表情のまま、自慰を妻に見られても隠そうともしない。こんな淫らな姿を見られた方が本当は恥ずかしいはずだろうが、あまりの堂々さ加減にリーゼロッテの方が恥ずかしくなってしまった。


☆☆☆


 アントンは、闖入してきた妻にギラギラと欲望に血走った目を向け、乱れた服装を直しもせずに歩み寄って腕を掴んだ。リーゼロッテは突然腕を掴まれたのにも驚いたが、夫の手が臭い上にベタベタしていて気持ち悪くなった。


 アントンは、驚きで固まっているリーゼロッテを寝台の上に乱暴に押し倒し、彼女の首筋を舐めながら名前を呼んだ。


「ああ、ロッティ……ロッティ……」


 アントンはドレスの前身頃をビリビリと破って露わになった胸に噛みついた。思わずリーゼロッテが悲鳴をあげると、彼は彼女の口を手で押さえ、更に赤い歯形を白い肌にいくつもくっきりと残した。


 とうとう我慢できなくなったリーゼロッテが優しくしてくれるように懇願すると、今度はアントンは優しく愛撫したが、その仕方は執拗であった。


 ようやくアントンが我に返った時には、彼女の身体は歯形の痣だらけ、体液まみれで力が抜けており、彼女は気を失っていた。


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