27:埋める方法

テストの空欄を埋めねばならぬ。この一つさえ埋まれば全答が叶うというのに。エアコンがきいた室内だというのに背中に流れる汗が止まらない。頭の中は昨日見た花火とその明かりに照らされた死体で埋め尽くされている。あれは正当防衛だ。いつもいじめてくるあいつが、昨日はナイフを持って脅してきたので、死に物狂いで抵抗した。気がついたらあいつが倒れていた。しばらく放心していたが、夜空に打ち上がる大砲の音で意識を取り戻した。花火大会の日程なんて覚えてなかったが、あんなに綺麗な花火は初めてだった。むせ返るような鉄の香りがなければもっと綺麗だっただろうが。あぁ、目の前の空欄も2度と虐めてくることのないあいつも埋め方がわからない。適切な方法で埋めなくてはならないのに。時間ばかりが過ぎていく。早く埋めなくては。

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