3:あいしてる
『 』
「え?なんて?」
花火が散り、魔法は解ける。また、何も言わぬモノへと戻ってしまった。
『キミは確かに歳を重ねたかもしれないけど、何も変わらないね。』
ワタシはこの時期になると、氷魔法で変わらぬまま地下に保存しているソレに彼の魂を呼び戻す。死者の霊を呼び戻すのにはうってつけの時期で、また、彼本人の死体(からだ)だ。2週間この世に滞在させるなど難しいことではない。
「なにか言った?」
『いや、早くキミの家族が見たいなぁって。』
「何言ってるの。これから先、新しいパートナーを見つける気も養子を迎える気も全くないよ。」
わかってるはずだよ。ワタシには貴方しかいないこと。それなのに、何でそんな顔をするの?
『汗、すごいね。』
「年々、気温上昇が酷くてね。将来的には鉄板みたいにアチアチになったりして。」
『じゃあ、ボクにかけられた氷魔法もとけちゃうかな……。』
「それはない!!氷魔法は何があってもかけ続けるから!!」
ふっと彼が笑う。
『じゃあ、ならさ、アチアチになった身体を冷やすのにボクの側にいてよ。』
「うん、そうする。」
『さいごは、キミと花火を観たいな……。』
「ちょうど隣町で花火大会やるって!!浴衣着ちゃう?」
『あぁ、キミの浴衣姿を目に焼き付けたい。』
もう10年以上続いていた。だから、来年もあると信じていた。
『 』
まさか、最期の言葉だとは思わないじゃない。
聞こえなかった空欄部分の声は何で言っていたんだろう。別れの挨拶?愛の告白?あんなにも貴方を愛していたはずなのに、わからない自分に怒りと悔しさと憎しみで心が潰される。
あぁ、これからは独りぼっち。独り。彼の望むように新しいつながりをつくろうとは思えないの。
「ごめんね。」
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