第1話 始まりは海外視察②
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筆記用具を片手に持ち会議室へ目指して走り出す。
バタ バタ バタ
時間がもうない!急げ急げ~!
本当は良くないけど…誰かがいないか確認してから、渡り廊下を小走りしてエレベーターを利用した。そのおかげで時間より早く会議室に辿り着く事ができた。
「良かった…間に合った…はぁ…はぁ…」
渡り廊下を少し走っただけなのに、すぐ息を切らしてしまう。あまりの体力の無さに痛感して少し涙目。……休みの日…散歩でも始めようかな。
「……はぁ はぁ……すーはーすーはー…」
乱れる呼吸を整える為、深呼吸を繰り返し、ゴホンッと咳払いをしてから…意を決してドアを3回ノックした。
コン コン コン
???「どうぞ。入ってください。」
ガチャ
「失礼します。事務課の海原いるかです。
本日はよろしくお願いします。」
部屋の中へ入ると、磯貝部長と先輩の押領司さんと後輩のみふるちゃんが席に着いていた。なんだか珍しい組み合わせ…押領司さんはたしか営業課、みふるちゃんは企画課なのに…
疑問に思いながらも、みんなにお辞儀をして、そっと席についた。
磯貝「うん、みんな集まったようだね。
では、会議を始めましょう。まずは皆さんお手元の資料を確認してください」
机に置かれている資料を見ると、こんな内容が書かれてあった。
『1人女子旅!癒しを求めて南国への7日間』
へぇ…南国への1人女子旅…今回も思い切った企画だな。私たち事務課は情報収集と資料作成かもしれないね。
そう思いながら、次のページを開くと…とんでもない内容が書かれてあった。
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指示書
営業課…押領司ひすい
事務課…海原いるか
企画課…杉町みふる
上記3名は、情報収集、旅行体験および協力者の仲を深める為、1週間の海外視察をしてもらう。
※旅行の経費は全て会社負担とする。
※海外視察により特別ボーナスをあたえる。
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「かっ…海外視察?!」
思わず声が出てしまい、慌てて口を噤む。いや…だって…海外視察は部長クラス以上が行う業務だよ。若手社員に任せるなんて前代未聞よ。
……そうだ!他の2人は!!
みふる「か…海外…1週間の滞在…私…できるのかしら…」
みふるちゃんの方は私と同じ反応で、顔が青ざめて震えている。可哀想に…まだ入社して2年目なのに、いきなり海外視察は鬼畜すぎるでしょ…よしっここは私が…
「みふるちゃん…大丈夫だよ。当日まで現地の言語を一緒に勉強しましょ!最悪、翻訳機能さえ使えばなんとかなるよ!」
みふる「うぅ…いるか先輩っ…優しい…」
「それに主任の押領司さんがいれば…ねぇ押領司さっ…ヒッ!」
みふる「………ひょぇぇ…」顔面蒼白
ひすい「……………(怒)」
押領司さんの方は、青筋をたて無表情になっていた。これは完全に怒っている!美人だから余計に怖く感じる!!
ひすい「……部長…今回の企画はあまりにもメチャクチャすぎませんか?若い女性だけで海外視察をさせるなんて…」
磯貝「……僕も企画を提案した方に抗議をしたさ……だけど…」
部長は苦い顔をして、懐から封筒を取り出し、封筒を押領司さんに手渡した。
磯貝「提案者からの手紙だ…押領司さん、中身をみてくれ。」
ひすい「ありがとうございます。提案者からの…………はぁ……なっ!!なんで知っているの?!余計なお世話よ!」
手紙の内容を見た押領司さんは、最初は驚いた表情をしたものの、だんだんと顔を赤らめて付箋を閉じた。
ひすい「お節介にも程があるだろ(小声)」
彼女は何か小声で呟いてから、はぁ…と溜め息をつき、私たちに深く頭を下げた。
ひすい「杉町さん、海原さん。どうやら今回の企画…私の昇給試験も含まれているみたい…2人が良ければ…協力してもらえないかしら。もちろん嫌なら無理には…」
押領司さん…この海外視察は彼女の今後が決まる…それならなおさら…
みふる「…………」こくっ
「………!…」こくっ
みふるちゃんも私と同じ気持ちだ。
私達で押領司さんを昇給させよう!
みふる「押領司さんの今後にかかるんですね…なおさら協力しないとっ。私、海外視察…がんばります。企画案の作成は任せて下さい。」
「私も情報収集や事務系の処理が特技なので、できる限り押領司さんのフォローをします!この海外視察、絶対に成功させましょう。」
ひすい「…杉町さん…海原さんありがとう…
2人がそう言ってくれるなんて…私うれしい…」
ほんのり頬を赤く染めて笑みを浮かべる押領司さん。あまりの美しさに見惚れてしまった。私が男性だったら完全に落ちていただろうな。
みふる「はわゎ///よろしくお願いします」
(ひゃぁぁ…笑顔素敵だな。押領司さん…)
ひすい「えぇ…あっ私もこれからは、海原さんと同じく下の名前で呼ぶわね。よろしくね みふる。」
私は2人のやり取りを眺めながら微笑んだ。
うん…この3人ならどんな事が起きても、きっと上手くやっていける。海外視察、絶対に成功させるぞ!
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