プロローグ 全ての始まり①

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事の発端から、今から半年前。


波音が響き渡る中、


宝来「いやぁ、今回のプラン先は、良い所でしたな…」


宮部「えぇ、有名な所はもちろん…穴場の所までリサーチできたのが今回の収穫ですね。」


彼らは視察先からの帰りで、大型船の展望デッキから海を眺めながら、次の旅行プランの話し合いをしていた。


雲ひとつない青空、波音ともに広がるマリンブルー。まさか数時間後、悪天候によりこの船が沈没してしまうなんて、2人は想像していなかった。


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2時間後…


天候は次第に悪くなり、激しい雨と雷が鳴り出した。


宝来 「宮部君…これは大丈夫かな? なんだかイヤーな予感がするんだが……」


宮部 「取締役!やめて下さいよ(汗)。取締役が言うと大体の確率で何か起きるんですから!取り敢えず船の中へ戻りましょう。」


宮部が宝来を安全な場所へ移動させようとした… その時


荒波が船に乗り出し、床が斜め45度に傾く。


宝来 「……しっしまった……」


あまりの傾きにより、宝来は足を滑らせ、物凄い勢いで海へ落ちてしまった。


ザッパーン!!


宮部「取締役ー!!」


海に落ちた宝来を見た宮部に迷いはなかった。まず急いで救命ボートを海に落とし、2着の救命ボートを持つと自身も海へ飛び込んだ。


ザパンッ!!


宮部 「取締役!俺の手を掴んで下さい!!」


宝来 「ゲッホ ゲホッ…宮部君。ありがとう…助かった…」


宮部は宝来の手を掴み、救命ボートへ引き上げる。それと同時に……


激しい荒波が大型船を飲み込み、海の底へ沈んでしまった。


宝来「そんな…まだ中に人が……」


宮部 「……取締役!救命ボートにしっかりつかまってください!!」


相手を悲しむ暇はなかった。荒波は今度は2人に牙をむき、襲い掛かった。


宝来 「うわぁぁぁぁぁっ」


宮部「…………!!」


2人になす術はなかった。あっという間に荒波に飲み込まれ、海に沈んでしまった。






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ザーン ザーン


心地よい波音。温かい日差しが宝来の顔にあたる。


宝来「………ぅ……」


宮部「取締役!しっかりして下さい!」


先に意識を取り戻した宮部が宝来を揺さぶり、起こそうと必死だった。


宝来 「宮部君…私は大丈夫だ…」


宮部 「…取締役!…良かった…意識が戻った…」


宮部の介助とともに起き上がり、宝来は辺りを見渡す。


白い砂浜に…透き通る水色の海。海辺には彩りとりのハイビスカスが咲き、ヤシの木が高く聳え立っていた。


宝来「ここは……どこかの南国の島か?」


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