何のため
ケロッとした態度で答える僕に対して。
「ふざけているのか?」
エルピスは真面目な態度でもって、口を開く。
「ふざけてなんかないさ。我が家は元々、一国の王だった。それを、奪われたことを今でも根に持っているんだよ」
「だが、そんなの遥か昔のことで……」
「加害者よりも、被害者の方が記憶を色濃く残す、というのは普通だろう?」
「……ッ」
「どれだけ時間が経とうとも、うちの人間は常に複雑に思っていたそうだよ。服従しながらもね。常に己の領地が独立出来る時を待ち望んでいた」
「だとしても、それを私が認められるわけないだろう?」
「僕が止められる段階で話を告げると思うか?もう終わったよ」
「……は?」
「既にアフトクラトル辺境伯家は、辺境伯ではなくなった。独立はなったよ」
長年、本当に今に至るまでずっと、アフトクラトル家は独立の為に動き続けていた。
次代に、また次代へと着実に積み重ねられていったそれは今や大きなものとなっていた。
ゲーム本編においては、圧倒的ゲームの主人公補正により、失敗してしまった。
だからこそ、僕はゲームの主人公であるリアンが成長しきるよりも前に、前倒しで独立運動が出来るようにするため、裏で父上が進めていたその運動の後押しを行ってきていた。
その上で、念には念を入れて、リアンをわざわざエルフの国にまで幽閉してしまった。
「エルフの国への滞在。それで、動いたのは何処だ?」
「……ッ!?」
ついでに言うと、エルフの国にエルピスとミークを連れてくるのもデカい。
何て言ったって、二人は武勇に優れる侯爵家令嬢だ。
その二人をエルフの国に留学する際、何かあってもいいようにエルフの国の隣国に良家の軍隊が今もなお、滞在している。
武勇に優れる両家の不在。
それが与えるニンス王国へのダメージはデカい。
両家がいない中で、独立運動への鎮圧のためにアフトクラトル家と本気でやりあえば、普通に他国の介入を、宣戦布告を受ける可能性がある。
父上も、他国との強いパイプは持っているしね。
大切な戦力も欠け、主人公補正もないニンス王国が、用意周到に動いたアフトクラトル家に対抗できるはずもない。
「その上で、お前への協力要請だよ」
独立はなった。
ここまではまだ、ただの前提条件に過ぎない。
「……何を、要請するつもりだ?」
「僕は一番上が良いんだよ」
「……何?」
「父上を追い落とし、僕が王になる。そのため、協力してよ」
「……本気で言っているのか?」
「当たり前だ」
「だとしても、それに協力する私のメリットは何処だ?そんなものないだろう」
「僕が王になった後、エルフの国と国交を結ぶつもりだ……どう?アフトクラトル王国と友好関係を保っておきたいと思わない?」
「……」
僕の言葉に対して、エルピスは口を閉じるのだった。
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