感覚

 巨躯の悪魔を倒した後、僕はすぐに自然を司る精霊の元へと戻ってきていた。


「やぁ」


『どうかしたか?愛しき人の子よ』


 彼女の元に向かったとき、自然を司る精霊は僕を待っていたのか、すぐに話せる態勢になっていた。


「あの時、僕に何を見せたの?」


 巨躯の悪魔をと倒した僕の次元斬。

 それが成功したのは自然を司る精霊が何かの感覚を僕に見せたことが原因だった。


「自分の知らない感覚によって、他人から施しのように受けたものによる成功とか、ちょっといい気分はしないんだけど」

 

『我は愛しき人の子の師』


「だとしても、だよ。自分がわからないものなのだからね。それは……僕のプライドを刺激する」


 精霊さえも超えてみせる。

 そんな思いを持つ僕が一方的に施されて、それが何かもわからないのは我慢ならなかった。

 利用しているだけ、という言い訳も効かなくなる。


『我が与えたのは自然を見る術。感じる術。理の中に身を置き、その全貌を見るための視野の広さ。その感覚。我ら精霊が持つそれを愛しき人の子にも授けた』


「……精霊の持つ感覚、僕の中にある判然としない何となくの感覚は、精霊のものよりも劣っているのか?」


『そんなことはない、同じだとも』


「……そう、なら、いいや」


 一旦はそれを受け入れよう。

 どうせ、自分でもこの感覚を研ぎ澄ませるために色々とやっていくし。


「聞きたいことは聞けたかな」


『なれば良かった、人の子よ』


「うん、ありがとう。いずれ掴んだ感覚だとは思うが、それは今じゃなかった。そして、今じゃなければあれに勝てなかった。感謝する、助かった」


『うむ。素直でないところも愛しき人の子の個性よ。その感謝を受け入れよう』


「……うん」


 素直だけどね?僕は。


「それじゃあ、僕は上の方に戻るよ。自分の持つ情報は一切与えないまま、こっちに来たからな。上の方が大変なことになっていそうだ」


『うむ。そうであるな、ここから見た感じもかなり大変なことになっているとも。早く行ってあげた方が良い』


「あぁ、それじゃあ、また」


 話したかったことを話し終えた僕は満足して、また、地上の方に戻っていくのだった。

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