事態収拾
僕が上の方に戻ってきたとき、そこには想像通りに騒然とした様子のエルフの国の光景が広がっていた。
「……うーん」
神樹からエルフの国を眺める僕はその様子を眺める。
エルフにとって、悪魔という存在はもうトラウマに近い。
それが再び自分たちの前に立ったという事実はかなり重く、もう地上はかなり騒然とした様相を見せている。地獄のようだと形容してもいいかもしれない。
「この中で説明するのめんどいな」
事態の収拾は良いや。別に僕の仕事じゃないでしょ。
「ポワンは、ぽわーん」
僕はクソみたいなダジャレを口にしながら、辺りを見渡し、ポワンを探していく。
事態の収拾をするつもりはないが、報告くらいはしておくべきだよね。
「おー、いたいた」
ポワンの魔力を探していた僕は彼女のことを割とすぐに見つけられた。
あいつの魔力、というよりも自然を司る精霊に近い王族の血が持つ魔力はかなり見つけやすいからめちゃくちゃ楽だわ。
「よっと」
僕は軽い足取りで駆け抜け、ポワンの元にまでやってくる。
「あっ!?ティラン様っ!さ、さっきのは一体っ!」
多くのエルフたちに周りを囲まれながら、何が起きたのかの説明を求められていたポワンは僕のことを見るなり大きな声を上げ、周りにいる人たちもまとめて、その意識をこちらに向けてくる。
「君の依頼通りだよ。脱走した悪魔を討伐。また、その悪魔が召喚した悪魔も一緒に討伐した。これが事実。二度と、こんなことがないように生け捕りにはしなかったよ。これで報告は終わりだね」
「ちょっ!?それだけですかっ!?」
「それ以上のことなんてないからな。お前から言われていたことはすべて、僕が何とかした。それだけで満足してよ」
「いや、流石にそれだけじゃ、周りの人もそう簡単に納得できな……っ!」
「それを納得させるのは君の仕事でしょ?自分が連れてきた四人は自由に使っていいから、こき使ってあげて」
リアンたちにはもっと、ここで働いてもらわないと。
「それと、あの悪魔が逃げ出せた理由と、それから何をしていたのか。エルフの国の内部に何かされていないか。それらも徹底的に調べておきなよ。別に僕が何かを掴んでいる、とかいうわけではないけど、一応ね」
「ティラン様は手伝っては……?」
「あげないよ?もう十分働いたでしょー。僕は、あとのことは任せるよ。事態収拾、王族として頑張ってね」
「ちょっ!?」
「それじゃあ」
「ちょーいっ!!!」
面倒なことをすべて、ポワンの方に任せ、僕はさっさとこの場を去るのだった。
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