巨躯の悪魔
自分の前にいる巨躯の悪魔。
文字通り、その名を巨躯の悪魔としてゲーム内でも扱われていた意思なき怪物。
「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「ちぃ……」
そいつを目の前にする僕は歯噛みしながら、魔法を展開。
最初から出し惜しみするつもりはない。
「時空斬」
僕の持つ手札の中で最も威力の高い時空斬。
そいつの制御を端から諦めたような状態で発動させて、開放する。
「ァァァァァッ!?」
空間と空間が歪み、はじける。
綺麗にズラされるはずのその魔法はその効力を発揮せず、代わりに空間を歪めるに留めた。
それでも、歪められた空間内にいるものは大きな影響を受ける。
その体を歪められ、その魂を歪められ、その存在を歪められる。
基本的な敵など、ただこれだけで、空間の歪みに堪え切れず亡くなるような場合がほとんどである。
「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアア」
だが、巨躯の悪魔は一時的にその姿形を歪ませて悲鳴を上げるだけに止め、すぐに元の姿へと戻ってきてしまった。
「あぁ……もうっ!」
僕の戦闘スタイルは至ってシンプル。
最高峰に極めた剣技と魔法。
ありとあらゆる技術と圧倒的な力によって上から押しつぶすという戦法を己の戦闘法としていた。
「……クソ」
そんな僕は自分よりも強い相手と戦うことを想定していない。
あまり格上に勝つための技というのを持っていなかった。
「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
魔法を放った自分を狙いに定め、その大きな腕を伸ばしてくる巨躯の悪魔を前にして、僕は転移を発動させることで悠々と回避する。
「ァァっ!」
「ちぃっ」
だが、そんな僕を狙ってすぐに巨躯の悪魔の口より熱戦が放たれ、再度の回避行動をとることを強いられる。
「ぐぬっ!?」
そして、その次の瞬間には自分の前に巨躯の悪魔の尻尾が迫ってきており、それを腕でガードする僕は殺しきれなかった衝撃を受けて吹き飛ばされる。
そんな僕を狙って、巨躯の悪魔が再度、腕を伸ばしてくる。
「ラァっ!」
それを転移で回避した僕は相手が熱戦を放つよりも前に魔法を発動させてぶつける。
「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
己が発動させた魔法。
天より轟く雷を数発その身に食らった巨躯の悪魔であるが、一切効いた様子も見せずに熱戦を放射。
僕はそれを避ける……不味いな、全然僕の攻撃が効いてくれない。
「……どうしようか」
まるであいつを落とせる気がしない。
このままじゃ……じり貧なんだがっ。
「ちぃ」
現状が不味いことはわかっている。
それでも、何か有効打を打てないでいる僕はただただ巨躯の悪魔の周りを逃げ続けるのだった。
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