襲撃


「わぁーお」


 上空から膨大な魔力を感じ取ってすぐに転移の魔法を発動し、自分の立ち位置を部屋の中から空へと移した僕は空を見上げて感嘆の声を漏らす。

 上空では何が起こっていたか。

 そこでは、一人の悪魔。僕がかつて、捕らえた悪魔が一つの魔法を発動させている最中であった。

 悪魔の引き起こす魔法によって、出来上がっている異次元に通じるゲートホール。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


 そこから低い声が響いてくると共に、この星全体を震わせるような魔力を膨れ上がらせていた。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


「……これは、ちょっと」


 僕が少し頬を引きつらせた瞬間。


「……ッ」


 ゆっくりと、ゲートホールの方から大きな腕が伸びてくる。

 まずは腕が出てきて、次に頭。

 そのまま胴体が伸びて、最後に足。

 

「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 そこに現れたのは巨大な化け物。

 8mくらいはありそうな巨体に完全異形の体。

 

「……悪魔」


 その姿はゲームにも出てくる悪魔の一柱。

 ただし、その悪魔はクリア後に戦うことの出来る。そんな、存在であった。


「ここでそいつを持ってくるかい……ッ!?なんで、出来るんだよっ」


 明らかに、明らかに敵のレベルがおかしい……!こんなタイミングで出てきていいやつじゃないだろっ、お前はよぉ。安売りしてんじゃねぇぞ。


「クソったれも……っ!」


 僕は悪態をつきながら、一切迷うことなくこの場から全力で一気に空へと上がっていく。


「おぉ!来たのですね!憎き、我が敵よ。ですが、今の私は……」


 空へと一気に上がっていく僕を見た巨躯の悪魔は僕のほうにその長い腕をムチのようにしならせながら自分の方に向けてくる。


「無駄」


 それを僕は転移で回避。


「……かぺ?」


「まずはお前」


 巨躯の悪魔を無視し、それを召喚した方の悪魔の前にまでやってきた僕はそいつの首根っこを掴んで魔法を発動。

 今度は生け捕りなんて考えない。

 確実に魔法でもってその命を潰す。

 

「……」


 一度は逃亡した悪魔。

 そいつは何かを言い残すことも出来ずにその生涯を終わらせた。

 無事に逃亡した悪魔の処理を済ませた僕。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 そんな僕の前に立つのはさっさとその生涯を終わらせた悪魔が魔法で召喚してくれやがった巨躯の悪魔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る