タダ乗り

 アルマたち四人へと自然を司る精霊のウンチの回収をお願いした後。


「さて、と」


 僕は一人、自室に残っていた。

 そこで僕は一つの魔法を発動させる。


「悪魔は何を考えているのか……」


 僕の魔法。

 それによって出現するのはアルマたちが見ている景色をそのまま映した光景だった。

 僕は彼女たちへと見たものをこちらで映像として流されるような魔法をかけていたのだ。

 

「ふむ……」


 彼女たちに自然を司る精霊のウンチの回収をお願いしたのはすべて、自分一人で見て回るには少々無理のある国全体の確認の為である。

 エルフたちは魔法への耐性も馬鹿みたいに高いので、相手の視界にタダ乗りするような魔法は効かないのだが、それがアルマたちになれば簡単に出来る。

 僕がお手軽に、エルフの国を効率よく回るのはこうするのが一番だったのだ。


「悪魔の残滓は、ないな」


 悪魔たちの目的を考えるに、このエルフの国を滅ぼすのを諦めるという選択肢が出てくる可能性はゼロに近いと思っている。

 となれば、あいつがまだここに滞在しているのは確定的。

 何処かに潜んでいると思っているのだが……その手かがりは掴めない。


「……」


 エルフの国で隠れられる場所の候補はいくつあるけど……既にそこにはいないことを確認してある。

 何処にいる……?地上にいないなら、空か、地下か。

 

「……」


 僕は一人、部屋の中で思考を張り巡らせていく。

 問題は別に、悪魔は無能じゃないことだ。僕がいる中であいつが動くはずもない。

 必ず勝てるという算段を打ってから動くはず……あえて、自然を司る精霊の方は不安定なままで維持させている。僕があいつからより多くの学びを得るために。

 そのせいで、悪魔は簡単に自然を司る精霊を暴走状態にすることが出来るだろう。

 ここには僕の現地妻もいる。

 崩壊させるわけにはいかないのだが……。


「考えて、答えが出るようなものでもないな。これは」


 現状で結論を出すのは無理だな、これ。

 悪魔の持っている手札、今、打てる手札が何なのか。

 それが判然としない中で、対策を立てるのは難しい。

 多いんだよなぁ……悪魔どもの手札ってのは。


「後手だな、これは」


 一度、敵が逃げての今。

 既に後手へと回っている状態じゃ不利にならざるを得ない、か。

 今、考えてもしょうがない……出来るだけ情報を集められるように立ち回ることくらいか、出来ることと言えば。


「……ァン?」


 なんて結論を出した瞬間だった。


「はぁ?」


 僕がエルフの国の遥か上空から膨大な魔力を感じ取ったのは。



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