意味
自分が十歳の時に飛び出し、四年間滞在した場所。
そここそがエルフの国である。
ここで僕は四年の歳月を暮らし、己を磨いていた。自分の大切な四年間を捧げた場所がここなのだ。今までの自分の人生を考えると、ここの存在はかなり大きい。
では、何故、そんな重要な場所として、ここをその地に選んだのか。
「……ここに来るのも久しぶりだな」
その理由が今、僕が歩いている先にある。
エルフの国の中心である神樹。
その内部には空洞があり、多くの道が敷かれている。
これはエルフが神樹を削って作ったわけじゃない。元々あったものなのだ。
エルフは元々あった人も暮らせる神樹の内部を王城として間借りしている。
「よしっと」
そんな神樹。
エルフたちに間借りを許している、いわば家主とでもいうべき者が暮らしている地へと僕はやってくる。
「うんしょっ」
僕は自分の前にある大きな木の扉を押して、それを開ける。
扉を開けた先。
そこに広がっているのは水の流れる音が響く大きな空間である。
神樹の中心には一つの巨大空間が。
薄く張られた透明で透き通った水。自然あふれる大地。壁はヒカリゴケに覆われて淡い光を発する木目。
そして、その最奥には一つの空洞が出来ている。
「……」
僕がこの空間の中に足を踏み入れ、水を叩く音が響くと共に、この場所全体が震え始める。
ゴゴゴ、という低い音が響き、それと共に空洞の中から一つのものが近づいてくる。
「久しぶりだね」
そして、空洞の中からやせ細った、一つの長い枯れ木が出てきた。
そんな枯れ木へと僕は声をかける。
『───』
僕へと声を掛けられた枯れ木はその枝の一つを自分の方へとゆっくり伸ばしてくる。
目の前にいる巨大な枯れ木。
圧倒的な威圧感を持つそれは、こう呼ばれる。
「精霊様」
精霊、と。
「数年ぶりかな?」
それこそが。
精霊こそがこの神樹の家主であり、自分が久しぶりに会う師匠でもあり。
そして、僕が今、会いに来た人物である。
「えぇ、久しぶりね」
自分の前に差し出された枯れ木の枝。
そこから一柱の見た目麗しい女性が現れ、自分へと挨拶の言葉を返してくれるのだった。
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