わけ

 僕をドロップキックで吹き飛ばしていったエルフの女性。


「……何で君が玉座に座っているの?」


 ドロップキックを受けて、地面に転がっている僕はそのまま己を蹴り飛ばした女性に疑問の声を投げかける。

 その人物。それは。


「私じゃダメなんですか?」


 僕のかなり見覚えのある女性だった。

 彼女はエルフの国の女王として君臨している長老……の孫娘、ポワンである。

 王族ではあるが、王位継承権はかなり低い。

 決して、玉座に座っているような人間ではない。


「玉座って国王陛下が座る場所なんですけど?」


「国王陛下は私のおばあさまですから。頼んだら軽く貸してくれましたよ。応対する相手が貴方ですからね」


「玉座に孫娘座らせちゃ駄目でしょ。」


「そこら辺の権威、まるで気にしないじゃないですか。誰かが自分の上に立っていたり、とかの状況には眉をしかめますけど」


「まぁ、そうだね」


 それを言われてしまったら僕はもう何も言えない。

 事実だ。間違いなく。


「じゃあ、女王陛下を連れてきてくれない?君がいたら、僕の立場ないじゃん」


「貴方の立場を無くすためにおばあさまには少し退いてもらっているんですよ?何か問題あります?」


「なかったら、呼ばなくない?」


 僕はポワンの言葉に対して、淡々と言葉を返していく。


「ふふふ……それを、易々と私が認めると思っているのですか?」


「えっ?呼んでくれないの?」


「私との話が終わってからです……っ!」


「わぁぁぁぁ」


「待って」


 僕がポワンと話をしていた中で、アルマがその会話へと割り込んで入ってくる。


「何ですか?」


 そんなアルマへとポワンが鋭く視線を向ける。


「なんで、急にこんな話をしているのか、聞いてもいいかしら?いきなり仲間の一人がエルフの王族からドロップキックされた、となったらこっちは戸惑るわよ」


 自分の予想を反して、アルマは冷静さを一切崩すことはなく、ポワンへと疑問の声を投げかける。


「……ッ!この人がっ、私が告白したその次の日、返事も寄越さずトンズラしたからですっ!!!許せるわけがありませんっ!」


 そんなアルマの言葉に、ポワンは圧倒的な怒りをにじませながら答える。

 うん、そんなこともあったね。僕が帰ろうと思っていた前日の夜に告白されたね、僕は。

 でも、返事は寄越した気がするよ?いやだ、って。


「う、うわぁ……」


「おぉう……」


「やばっ」


 そんなことを僕が思う中、心の底からのポワンの言葉にエルピス、ミーク、リアンの三人がドン引きの声を漏らし。


「なるほど」


 そして、アルマはただ一言短く頷くのだった。

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