呼び出し
自分の前に立つ爺やと共に僕がやってきたのは王都内にあるアフトクラトル辺境伯家が所有している屋敷であった。
「それで?自分に何の用で?」
屋敷の執務室。
そこで自分の父親であるアフトクラトル辺境伯家の現当主と向かい合う僕は疑問の声をあげる。
「うむ。よく来たな。まずは此度の件の収拾においての尽力、褒めよう」
「あぁ、ありがとう」
ゲーム内における自分の父上は自領の独立を望んでおり、実際にそのような形で動いていた。
僕が悪役貴族として確固たる敵として主人公の前に立ったのは、この辺りの父上の思惑も絡んでいる。
そして、今もこうして目の前にいる父上の方も独立を望んで行動していることだろう。
うん、多分だけど、父上だよね。今回の事件を引き起こしたの間違いなく。
大まか、父上としても僕がサクッと解決してしまったことは想定外だったに違いない。
「それで?次に?」
僕は父上に対して、疑問の声を投げかける。
「そうだな……聞こう。お前はどこまで勘付いている?」
「ある程度は」
父上の言葉に対して、僕は迷いなく答える。
「そうか……随分と勝手に育ったようだな」
「まぁね」
「それで?お前はどう考える?」
「別に何も、勝手にすればいいと思っているさ。父上の方がしくじっていたとしても、僕は一人逃げ仰るよ」
「ほう……?そこまでしっかりと抜かりなくやっているのか」
「父上が問題児だと大変なんだよ」
「そうか……では、何も言うまい。俺が成功すれば、後を継ぐのはお前になるだろう。お前が何も言わぬと言うのあれば、お前で良い。勝手に育ったお前の方が動きやすくはあるだろう」
「愛国心はまるでないけどねぇ?過去の国などどうでもいいが」
「思想まで押し付けるつもりはない。逃げられない立ち位置をお前に押し付けるだけだ」
「ふぅー」
僕は父上の言葉に肩をすくめることで答える。
「それで?お前はどこで気づいた?」
「逆に、何で僕が勘付いていると思ったの?」
「お前の態度を見ればな……嗅ぎ回っていただろう。周りを」
「あらー」
ちゃんと勘付いている……向こうは色々と確認しているんだろうな。
父上は随分としっかりとしているようだ。
「で?お前はなぜ気づいた?」
「いや、幼少期の頃にね。普通に僕の前で話していたでしょ」
「……?待て、お前の前で、ってその時のお前は何歳だ?」
「また一歳とかだったと思うぜ?」
「なるほど……想定外だったな、お前はどうやら化け物だったか……じゃあ、もう一つ聞こう。お前はなぜ、止めた?」
「立場があるんだよ、僕も」
追求してくるような声色の言葉をあげる父上に対し、僕は軽く肩をすくめながら答えるのだった。
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