暴動

 火の手の上がる街。

 そこにやってきた僕とエルピスの視界に入ってきたもの。


「なんで……?」


「むむっ?」


 それは街に向かって魔法を放っている貴族たちの姿だった。


「何をしているの?」


 自分の邸宅もある高級街で多数の王都に暮らしている貴族たちが魔法を使っての大暴れをして、街に火の手を上げさせていた。


「きゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああ」


「退きなさいっ!私が先よっ!?」


「い、いやぁぁぁ」


「お、御屋形様……、どうか、落ち着いて……何故貴方がっ!?」


 そんな貴族たちから逃げるように多くの者たち、特に夫人であったり、使用人であったりが逃げ惑っている。

 そんな状況下において、街の治安を守る騎士団の連中も現場に到着しているが、相手は高位貴族である。

 基本的に低位貴族の三男、四男より構成されている騎士団では、自分たちよりもはるかに偉い貴族たちの大暴れを前にして、武力鎮圧しかできないのか、有効と思われる対策を取れていなかった。

 貴族の魔法を打ち落としたり、瓦礫に挟まった人たちを助けてばかりで、事態の収拾のために動けてはいない。


「来て良かったなっ!これの対処で一番うまく動けるのは我らだったなっ!」


「まぁ、そうだね」


 僕は辺境伯家の嫡男で、エルピスの方は侯爵家の長女である。

 貴族の格としては子供であっても、かなり高い。

 手をこまねいていることしかできない騎士たちとは違い、気兼ねなく暴れている伯爵家の当主であったり、大臣クラスの重要役職に就く貴族であったりを蹴り飛ばすことが出来る。


「私たちで鎮圧するぞ!」


「ほいよっ」


 この世界で無作法でもって大暴れしていいのは僕だけだ。

 治安が荒れれば、美しい女性は育たなくなってしまう。


「……許せないな」


 基本的に僕は処女厨なんだ。

 治安が悪化し、強姦が横行するような世界になってしまえば、この美しい世界に非処女ばかりとなってしまう。

 そんなのは許さない。何としても。

 当然、強姦を受けて悲しみに暮れている女性もしっかりと癒せそうなら癒すが、そもそもとして、そんな犯罪は蔓延っていない方が良い。

 治安を荒らすような下賤な存在を僕は許すつもりなどなかった。


「大人しくなれぇぇぇやぁっ!」


 というわけで、学園の方から高級街にまで飛行魔法でやってきた僕は空から大暴れしている法相の伯爵家の当主の頭を蹴り飛ばして強引に意識を吹き飛ばしてやる。


「「「おぉぉぉぉぉおおおおおお!」」」

 

 地面を転がって、吹き飛んでいく法相を前にして、彼の対処で困り果てていた騎士の連中が歓声の声を上げる。


「鎮圧は私たちに任せてくれ!君たちは人命救助をっ!」


「「「ハッ!」」」


 そして、それに遅れてエルピスの方も地上に降りてきて周りの騎士たちに命令を下す。


「次ぃっ!」


 そんな中で、僕はその他の暴れている貴族へと果敢に攻撃していくのだった。

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