対処

 既に陽の光も落ち、ただ街を照らしていたのが月の光と星々の光だけとなっている街において。


「……何?」


「嘘だろう?」


 窓から見える火の手は実に良く確認できた。

 

「何が起きているのだろうか?」


 流石に街が燃えているとなれば、戦闘の手を止めざる得ない。

 僕とせいとかい、……エルピスは互いに戦闘態勢を解く。


「よし、行こうかっ!何があるのか、我らの手で確かめに行こう!」


 そんな中で、エルピスの方は一切迷いなく木刀を仕舞い、代わりに常に持ち運んでいる実剣へと持ち替えて意気揚々と僕に向かって告げてくる。


「……僕は帰っていい?」


 だが、それに対して、僕は普通にもう帰りたいメンタルだった。

 今から、面倒事に首を突っ込むのは面倒だった。


「どうせ、誰かが解決するだろ」


 ここは王都である。

 わざわざ僕がいなかなくとも何とかなる。


「駄目だっ!そんなことでは生徒会の名折れっ!ここは我らこそが誰よりも先に動かなくてはっ!」


「……えぇ」


 だが、そんなことは許さぬとばかりにエルピスの方は大きな声を上げる。


「学生ならもう寝る時間でしょ」


 僕は帰ってもう寝たい。

 寝る前の運動としては、さっきので十分かな。

 少しの時間があれば解決するような事案ならいいけど……。


「……無理だろ」


 ものすごい勢いで燃え盛っている火の手を前にすれば、明らかに早々に終わるような事案ではないことがわかる。


「僕は帰る」


 流石にここから時間かけるのは勘弁である。


「許さぬっ!我らこそが動かなくてどうするというのかねっ!この王都内で生徒会の強さを見せる!それは我らにとって良きことであろう?評価があがる」


「行かなければ、私は模擬戦を再開し、今夜は寝かさないぞ」


 ……こんなに嬉しくない『今夜は寝かさないぞ』が他にあるだろうか?ないだろ、ふざけんな。


「……行くか」


 マジで、本気で、全力で僕に対して戦意を向けてくるエルピスを前にして、早々に折れて現場に向かうことを決めるのだった。

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