一年生の生徒会メンバー

 生徒会入りを決めた僕へと、大きな声を上げながら近づいてくるのは負けヒロインたるアルマだ。


「やぁ」


 そんなアルマへと僕は軽く手を挙げて答える。


「やぁ、じゃないわ!やぁ、じゃ!」


 僕の前にまでやってきたアルマはぷりぷりと怒りながらこちらとの距離を一気に詰めてくる。


「貴方ねぇっ!また別の女の子へと唾を付けたの!?いくらなんでも早すぎるわよ!もう少し限度というものを覚えなさいよ!限度をっ!」


 アルマが僕に向かって告げる言葉は割と正論に近い。

 だが、それを言っているアルマの表情と態度があまりにもガチだった。


「おぉ……勢いがすげぇ」


 それゆえに、そんなアルマの姿を見る自分の隣にいるリアンは引いたような声を上げてしまった。


「貴方は誰よ!?」


 そんなリアンへとアルマは僕に迫る勢いのままで声を上げる。

 なるほど。

 ゲーム中では悲劇的ロマンを繰り広げていた二人ではあるが、残念ながら今回ではフラグ立たなそうだ。

 メンヘラヤンデレを引き取ってくれるかと思ったのだが。


「あっ、俺はリアンです」


「ティランに男友達が出来るのはいいことね。これからも彼と仲良くしてちょうだい」


「おぉう」


 鬼気迫る勢いはどこに行ったのか、急に優しげな雰囲気になったアルマにリアンは困惑の声を上げる。


「お前も生徒会に入るか?」


 そんなやり取りの中で、せっせと書類を用意していた生徒会長がアルマへと声をかける。


「えっ……?」


「知っているぞ、ノイモートン伯爵家の娘であろう?学園に入る前の子供たちが集まる武闘会で優勝した」


「まぁ、そうね」


 そうだったのか、アルマって実力者なのか。

 全然知らなかったよ、僕は。


「お前も生徒会に入らないか?私は強者を求めている」


「誰よ……って言おうと思ったけど、流石に知っているわよ、生徒会長ね」


「あぁ、そうだとも。それでどうだい?生徒会入りは」


「ティエラ」


「おん?」


 生徒会に入るか、入らないか、その二択を聞かれている中で、アルマは僕の名前を呼ぶ。


「貴方は生徒会に入るのかしら?」


「僕は入るぞ」


「なら、私も入るわっ!」


 僕の答えを受け、アルマは力強く宣言する。


「よしっ!はい来た!これで一年生の生徒会は集め終わった」


 あぁ、そうか。生徒会は一学年三人までだったな。

 こんなところで全員集めていいのか?


「ふふふ、これで一年生の生徒会も完璧だ。長年表舞台に立っていなかったアフトクラトル辺境伯家の嫡男。武闘会の優勝者、そして平民出身の才能ある少年。実に納得のいくメンバーだな!」


 まぁ、でもそれだけ聞くと十分過ぎるラインナップか。


「よし!それでは今より生徒会室に行こう!書類へのサインはそこでしてもらおう!」

 

 なんてことを僕が考えていた中、生徒会長は意気揚々と歩き出すのだった。

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