覚悟とエロ

 平民であるお前に世界でも最高級の教育機関であるポタモス剣魔学園は厳しいかもしれない。

 そんなことを告げる生徒会長に対して。


「そんなことはわかっていますよ」


 ゲームの主人公たるリアンは堂々たる態度で言葉を告げる。

 その意思は確固たるもので非常に強い意志が込められているように見えた。


「ですが、それでも、俺にはここでやらなきゃいけないことがあるんです。そう簡単に引き下がるつもりはないです」


 そんなリアンは真っすぐに生徒会長を見ながら、強い決意を込めた言葉を口にする。


「そうか……すまなかったな。こんな意地の悪い質問をしてしまって」


 それを受け、生徒会長の方は謝罪の言葉を口にする。


「本当に、平民がこの学園でやっていくのは難しいんだ。これまで、私は多くの平民出身の子が敗れて自信を失ってこの学園を去るのを見てきた。平民という出身ゆえに周りから浮きやすいということでの精神的なダメージもあるのだが、何よりも学園のレベルについてこれずに自信を失ってしまう子が多いのだ」


「そう、何ですが」


「あぁ、そうだ……だから、君に対してこんな試すような真似をしてしまった。すまない。本当に私の勝手だったな。すまない。だが、君なら、大丈夫そうだ。君はここでもうやっていける。君の瞳を見てそう思った。生徒会長たる私が保証しよう」


「ありがとうございますっ!」


「(おー、すげぇー)」


 呑気にゲーム内でも繰り広げられていた会話を見て、一人で歓声を上げていた。


「ところで、君。生徒会に興味ないかい?」


「生徒会、ですか?」


「あぁ、そうだ。新入生の生徒会メンバーを誰にしようか、悩んでいてね。誰を選ぶかは私の選択次第なんだよ。君の実力は今、まだわからない。だが、君から感じられるものは多い。例え、今は弱くとも必ず強くなれるであろう素質があるよ」


「……えっと、平民でも大丈夫なんですか?」


「駄目だな。基本的には」


「えぇっ!?」


「だが、私はそう考えていない。私の代なら平民である君を取り立てることも出来る。私は身分関係なく実力がある者は上に行けるような世界を作りたいんだ。君はその第一歩だとも」


「なる、ほど」


「あえて、厳しい環境に自分を置いてみないか?そんな悪い話じゃないと思うが、どうだろうか?」


「……そう、ですね。確かにそうかもしれません」


 おっ、主人公は生徒会ルートに入ったのか。

 まぁ、ここが一番王道のルートだもんなぁ。アニメ化された時も生徒会ルートだったか。


「これからよろしくお願いします」


「あぁ、任せてくれ」


 生徒会長はリアンの言葉に力強く頷いた後、今度は僕の方に視線を向けてくる。


「アフトクラトル辺境伯家の嫡男の方も生徒会にどうだ?多分だが、お前が一番強いだろ」


「えっ?僕も?」


「あぁ、そうだ。強者を集める。それが生徒会の役目だ。どうだ?生徒会に入らないか?」


「あー」

 

 僕は生徒会長の言葉に対して悩まし気な声を上げながら、自分の視線を生徒会長の体に送る。


「……?」

 

 その中ででも、特に胸元。そのぺったんこな胸元を見る。

 貧乳属性の真面目な生徒会長……めっちゃ魅力的だなぁー。


「受けましょう」

 

 おっぱいを見て、僕は生徒会入りを決意する。


「そうかっ!助かる。アフトクラトル辺境伯家の嫡男……名前はティランだったか?」


「そうだね」


「あいわかった!ちょっと待ってくれ、今、ここで書類を作る」


 僕の返答を聞いた生徒会長は自分が背負っていたリュックから二枚の書類を取り出し、いそいそと書きにくそうにしながら宙で紙に向かってペンを走らせていく。

 そんな中で。


「……なぁ、お前」


 急に自分の方へとすり寄ってきたリアンが僕へと囁き声を一つ。


「んっ?」


「……おっぱいを見ていなかったか?」


 そんなリアンが告げたのは普通に最低な一言だった。


「……当然だろう?」

 

 話の内容が理解出来た僕は彼に対して、囁き声で返す。


「……マジかよ。おっぱいで生徒会入りを決めるのかよ。それでいいのか」


「……傲慢だからこその貴族だよ」


「……そうなのか。それにしても、お前、貧乳属性なんだな」


「……いや?僕はおっぱいであれば、全部が好きだ」


「……そうもそうか」


 リアンはむっつり……というか、女の子の前ではエロい様子を出さないが、男の前だと下ネタを全開にし始めるエロの求道者である。

 色々あって、ゲームではそんなエロの求道者でもありながら鈍感主人公が如く女の子へと手を出さないリアンだが、それでも同じエロ好きの男には著しい親しみを見せるようになる。

 

「……だが、良いな。お前」


「……ふっ」


 こうして、リアンが急に敬語を取っ払ってすり寄ってきたことから、僕はこいつから同類扱いを受けたというわけだろう。

 間違いではまるでないが。

 僕はリアンと違ってちゃんと手も出すエロの求道者である為、ごみクズ度で言えば上だろう。


「あーっ!!!」


 なんてことを考えていた時、また、この場へと新しい声が響いてくる。


「また……また、ティランが新しい女に目をつけているっ!」


 その声の主。

 それは何処に行っていたのか、遅れて自分の元へと合流してきたアルマだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る