第9話 気まずい
気まずい.
誠二が少し散らかした部屋を片付けて秋道さんを部屋に案内して,適当にお茶とお菓子をを出したが,凄く気まずい.お互いに話すことがない.
そもそも,家族(誠二を含む)以外の人をこの家に上げたのは初めてだ.妹が訳が分からない事を言うせいだ.はぁ,まあ僕が呼んだから,強く文句も言えないし.てか早く帰ってこいよ.
「……ねえ,なんか話して春樹君.」
秋道さんは,首を傾げてこっちを見てきた.なるほど,無茶ぶりだな.彼女の手元を見るとお菓子も飲み物もなくなっていた.なるほど,そう言う時間稼ぎは出来ないのか.
「なんか」
「……今回は,春樹君がさ,私を連れてきたでしょ.この気まずい空気をどうにかしてよ.」
秋道さんは,ジッとこっちを睨みつけて,正論で殴ってきた.
話題か,共通の話題は,勉強か,学校か,でもかなり話したし……
「……それはごもっともです.じゃあ,えっと.何で嘘告白したんですか?」
秋道さんは,何とも形容し難い表情になり,深呼吸をしてから
「何で蒸し返すのかな,春樹君」
それも,ごもっともだった.
「あっ,いや共通の話題がこれぐらいしかないじゃないですか.」
「それは,そうかもだけど.何でって,それは,まあいろいろあるの……ごめん春樹君.」
「はぁ,やめましょうこの話.対して興味もないですし」
僕のミスだった.うん,空気が重くなる.ミスった.やはり,コミュ力が足りていない,足りていたら,いろいろ上手にしていた.
「そこは,興味持ってよ.春樹君」
「……」
まあ,うん妹帰ってこないかな.
「ほら,話途切れたじゃん.」
「そんなこと言われても.」
数分間,沈黙が流れた,普段は気にならない空調の音が気になるほどの静かさの中で,秋道さんは再び口を開いた.
「……じゃあ,何?ベットの下でも探れば良いの?」
何で,それを言ったのか全く見当もつかないが,まあ必死に鉄板のネタを探したのだろう.そもそも,今の時代……いや,やめとこ
「何も無いですよ.」
「……ねえ,春樹君.あの二人はさ付き合ってるの?」
なぜ,この話題を初手で提供しなかったのだろうか?秋道さんが一つ前の話題を挟んだ理由は永遠に謎だが,まあ気まずい空気よりましだ.
「妹と誠二ですか?」
「そうそう.どうなの?」
「まあ,3年後ぐらいには付き合ってるんじゃないですか?」
すぐには付き合わないだろう.僕がいろいろやらかして幼馴染と親友を失い人間関係大崩壊をしたせいで,二人とも,多分ビビってると思う.そう予想している.
「えっ,付き合ってないの?てか,何で三年後?」
「いろいろあるんですよ.」
まあ,うん,本当に,はぁ.
「……でも,良いな幼馴染って,私,幼馴染って言える人いないから憧れるな.幼馴染で両片想いってロマンチックじゃない」
秋道さんはそう言いながらご機嫌に笑っていた.普段教室でもそうしていれば良いのになと言う思いと,幼馴染はそんな良くないと主張したい思いといろいろ混ざって
「そうでも無いですよ.」
結果,全ての感情を隠すために無表情になった.
そのせいで再びこの空間が空調の音だけになりそうだったが,タイミングが良い人が帰ってきた.
「……お帰り,お兄ちゃん.あと,楓さん,今日,楓さんの家に泊まっても良いですか?」
ドアを開けるとすぐに妹はそう声を上げた.ああ,確かに妹の寝る場所とか考えてなかったは,でもだとしても
「……急」
そう言いかけて,もっと急に呼び出した自分のことを思い出して黙るしか出来なくなった.
「お兄ちゃんには聞いてない.ダメですか?楓さん.」
そう言いながら妹は,誠二を引き連れながら部屋に入ってきた.誠二がシュンとしていたので,多分怒られたのだと思う.うん,そんな気がする.
まあ,秋道さんが断るだろうし,妹どうしよう.
「……良いよ.親にも確認するけど.大丈夫だと思う.」
「……」
何で?いきなりなのに?何で?
「ありがとうございます.でも,まずお兄ちゃんたち,人生ゲームしよ.家から持ってきたから.そのために,コイツも連れてきたし」
妹は,そう言いながら自分の荷物から人生ゲームの大きな箱を取り出した.いろいろ言いたい事はあったし,思うところはあるが,とりあえず
「……5年後かも知れない」
妹と誠二がくっ付くのは,まだ先だと思った.
そんな事で始めた人生ゲームは楽しかった.
何で,僕はこのメンバーで人生ゲームをしているのだろうと我に返ることや,秋道さんは,何がしたいのだろうかとか,来月には見れない光景なのだろうなとかいろいろ思いながら妹にお菓子を買うためのお金を渡して,秋道さんの家に行く二人を見送った.
棒読み無表情で「好き」ってクラスメイトが嘘告白して来たので全力で言い返したんだけど,何か次の日からグイグイくる 岡 あこ @dennki
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