謝罪したい

第7話 カオスの前触れ

秋道さんと雑談をしながら帰り道を歩いていた.まあ勉強の話とかだと弾むものらしい.そんなことで歩いていたら,正面から見慣れた服装の青年がこちらに歩いてきた.僕よりも着こなしているのは少し,かなりムカついたが今回は黙っておこう.

「あっ,兄ちゃん.」


「……」

そもそも,何でこの人は,学校をサボって堂々と散歩をしているのだろうか.


「春樹君,弟?」

隣の秋道さんは首を傾げていた.まあ,似てないからだろう.


「まあ,そんなものだけど.何してるわけ?」

面倒なのでとりあえず適当に答えて話を進めた.その間も,秋道さんは,僕と誠二の顔を見比べていた.おもろ.


「散歩してた,ここら辺来ないからさ,それに暇でさ.」


「カギ閉めてるの?」

まあ,こんなもんかと少し諦めつつ,適当に流した.まあ,何もしなければ


「閉めたよ.それで彼女?」

こいつには,空気を読むという概念が無かった.きっちり,素の僕を悪い手本にしていた.まあ,どうせ,秋道さんは,嘘告白してきたのだから適当に流すだろう.


「ふぇ」

なんか,想像以上に動揺していた.じゃあ,なんで嘘告白したんだよ.そして今この謎のアディショナルタイムは何?


「違うけど」


僕が適当に返すと,秋道さんは,クールな雰囲気で

「……彼女じゃなくて,友達だよ,えっと,」

そう言って嘘をついた.友達ではない.


「冬川です.年下だけど,春樹さんの幼馴染で,弟と考えて貰って大丈夫です.」


「……よろしくお願いします.春樹君は,私の友達だからね.」


秋道さんは,もう一回嘘をついたので

「違いますけどね」

ちゃんと訂正しておいた.


「ふえ」

秋道さんは再び動揺して,目をパチパチさせながら,口をパクパクさせていた.


「じゃあ,なんなんすか,兄貴.」


「何そのノリ……クラスメイトだけど.」

変なノリを始めた誠二に大体の真実を伝えた.もっと正確に言えば,クラスの中の陽キャグループの3番目ぐらいの人で,高校生デビューした手前なんか雰囲気とかノリに逆らえず(推定)嘘告白をした(確定)けど思いっきりバレて,何かそれが悔しいのか目的不明だが,めちゃくちゃ謎に話しかけてくるクラスメイトだが,長いのでやめた.


「……まあ良いや.俺もう少し散歩して帰るから,よろしくね.」


「遅くなるなよ.」

そう言いながら,誠二を見送った.


しばらく黙っていた秋道さんはこちらを見て口を開いた.

「……てかさ,春樹君」

口を膨らませて無駄にかわいいのが凄い腹が立った.


「何ですか?」


「私は怒ってるの」


「理不尽なこの社会にですか?」

適当に喋った.


「そんなには,怒ってないから.」


「何にですか?僕に知り合いがいたことですか?見下せなくなったからですか?」


「卑屈,そこまで私は性格悪くないから.春樹君に知り合いがいたのは,なんか嬉しかったよ.」


「じゃあ,何に怒ってるんですか?」


「春樹くんさ,多分だけど,ここら辺に住んでるのでしょ,私の近所に住んでるでしょ」


「……あっ」

なるほど,鋭いな.てか動揺してしまった.ああ,めんどくさ.


「ねえ,言えば良いじゃん.何で隠してたの」


「いや,嘘告白してくる集団は,家に嫌がらせぐらいしに来るかなって」

そこまでの情熱がないことは知っている.


「しないわよ.でも,怒ってるからさ,そのさ」


「勝手に怒っていてください.」

僕には関係ありません.


「何でよ.お詫びにさ,駅にジュース奢ってよ.春樹君.」

何で今日は……もしかして,僕と喋ってるの隠してる.見下して,いやこれは保身だな,あのグループで自分を保つための保身だな.

「……ああ,でもクラスメイトに会うかもですよ.」

とりあえず,何となく探ってみた.


「えっ?」


あっ,当たった.

「いや,多分,この奇行を一人でしてるなら,クラスメイトに他のいつもいるグループの人には見られたくないかなって」

適当な勘であったがこれは当たったな.


しばらく黙り込んでから

「……ごめんなさい.」

秋道さんは,涙目で下を向きながらそう小さく呟いた.


謝るなよ.

「ああ,なるほど.てか,そこまでして僕に話しかける意味ありますか?隠したいなら,話してくるなよ.」


「……ごめんなさい.」

ただ秋道さんは,小さく呟くだけだった.何か地雷を踏んだのか.いや,僕悪く,でもそういう訳にはいかないのか.はぁ,何?僕もただ下を向いていた.



僕はただ黙っていることしか出来なかった.


その状況で,聞きなじみのある声が聞こえた.

「こら,お兄ちゃん.また女の子泣かせるの?なんか全部逆だね.」

顔を上げると少し僕と似た顔の僕を200倍奇麗にして,運動神経をめちゃくちゃ良くした妹が仁王立ちしていた.

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