第5話 無視
いろいろあったが寿司が美味しかった昨日は終わり,今日も怠い学校生活が始まった.家で人のゲーム機をワガモノ顔で使っている,誠二に少しムカついたので.週末妹に来るように連絡してから家を出た.
普段よりゆっくり来たのでクラスには生徒が多く帰ってきており,腫物を扱うような視線でこっちを見てきた.まあ,それは昨日からだから良いとして,少し面倒なのは,夏野 凛が数人連れて,『マジで友達いないの可哀そうだね』とか言いながら近くを通って歩くという何とも言えない嫌がらせをしてきたことだ.その中には,秋道さんもいたが無表情で真顔で顔を背けて歩いていた……なんか大変なのかも知れない.それにしても,夏野さんは,コミュニケーション下手かよ,いやそれは僕もだけど.
そんな中でも,普通に話しかけてくる人物もいる.まあクラスメイトだ.と言って事務連絡とかしか話さないけど.
「帰宅部君,本当に嫌われてるな.」
テニス部の佐々木 海である,誰にでも平等に公平に喋る人格者である.そしてイケメンである.めちゃくちゃモテてるらしい.だろうな.
「テニス部君,何の用事ですか?」
まあ,何かの連絡だろう.恐らく,直接話しかけたくない人が頼んだのだろう.十中八九そうだろうな.
「うん,ああ,委員長が放課後時間があるかって」
佐々木は,そう言って爽やかな笑みを浮かべていた.
委員長が何で伝言ゲームを?いや,普通に話しかけてくるタイプでしょ.違うの?
「……えっ何で?」
何が目的だ?
「いや,多分この状況をどうにかしたいと思ってるんじゃないか?俺も呼ばれたし」
ああ,なるほど,伝言ゲームの法が効率が良いからか.それにしても,これをどうにかしたいか.
「ああ,なるほど,いい人ですもんね.委員長,別に大丈夫って言っててください.」
無理だろうし,自業自得な部分もあるし,良いよ,別に分かってしてたし.
「いや,無理.俺は,止めれないよ.放課後,図書室な.てか携帯連絡なんかめっちゃ鳴ってるけど」
携帯がちかちか光っているらしい.まあ,多分,今朝『いきなり週末遊びに来て』て送ったからそれにキレてるのだろう.どうせ来るから問題ない.妹から何か来るかもと音を出してただが,いつも通りミュートが,まあ電源切ったら良いか.
「多分,妹からだから大丈夫だと思うので,まあ,分かりました,そこで断ります.」
そう言って適当に頭を下げると佐々木は何処かに去っていった.
そんな事があったぐらいで何もない日常を過ごしていた.もともとボッチだったので,対して問題ないし,秋道さんが話しかけてくる気配も無かった.
あっという間に放課後になった.
放課後断りを入れるために教室を出て図書室に向かおうとすると何故か不機嫌で少し口を膨らませている秋道さんが立っており
「ねえ,何で無視するの?」
そう言ってこっちを指さした.
「いや,無視してるのはそっちでは?」
何を言っているのか分からなかったが,無視をされたのは僕だと思う.いや,あれは無視でもない気がするけど.
「それは,そうだけど,そうじゃなくて,携帯のほう.」
携帯?……あっ,無視してる.思いっきり既読無視してる.寿司食べて忘れてた.
「うん?ああ,あっなんか来てましたね昨日.普通に忘れてましたすいません.」
それは,まあ僕が悪いので頭を下げておいた.これも,彼女の策略の一つの可能性もあるが,それは一度忘れておこう.
「……じゃあ,今日は,なんで?」
「今日?」
今日とは何?
「さっき,私謝ったの見てないの?」
あっ,もしかして,今日妹からだけじゃなくて秋道さんからも来てたの?それにも気が付いていなかった.
「……うん,今から」
とりあえず,今から見よう.
僕が電源をつけようとしたときに,秋道さんは
「まだ見てないなら,見ないで.」
そう叫んで僕の右手を掴み携帯の操作を物理的に止めた.
それから彼女は深呼吸をして
「ごめんね,今日は無視して.」
そう言って頭を下げてから,自分の携帯を操作し始めた.
「いや,別に普通にずっと無視でも良いですけど.」
「……それは無理だから.それで何で既読無視や未読無視するわけ?春樹君は」
「忘れてましたし,電源切ってたので」
僕の言葉を聞いて秋道さんは目をパチパチさせていた.それからクビを小さく傾けて
「なんで?学校で使うでしょ.ボッチで暇なんでしょ.」
そんな暴言を吐いていた.
「おい.いや,休み時間は勉強してるので」
「真面目.」
「いや,家で勉強とかしたくないので」
学校で勉強して家で遊んだ方がボッチ的には効率が良い.
「ともかく,今度からはちゃんと見てね,連絡.」
「まあ,出来ればします.」
まあ多分忘れる.
「やらないやつのセリフでしょ.はぁ,帰ろう,春樹君.」
「無理です,放課後用事があるんですよ.」
「えっ?」
秋道さんは目を丸くしていた.
「では,また明日.それと,演技でやってるのか,無理してるのか知りませんけど.なんか大変そうですね.そういうのはしない方が良いと思いますよ.疲れるだけですよ.」
そう唖然としている秋道さんに言い残して図書室に向かった.
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