第3話 寄り道,帰り道
しばらく無言で歩いていた.話す事ないし妥当だろう.何がしたいのだろうか?
「ねえ,少し寄り道しない?」
無言だった秋道さんは急に立ち止まりそう言ってこっちを見た.
訳が分からない.出会った事が無いタイプの人類だった.
「……何が目的ですか?」
「ええ,この話,もう何回目?だから私はリベンジの為に.まずは友達から.」
秋道さんは少しこちらを睨んでいた.
「いや,そう言う嘘良いので.」
いや,睨まれる筋合い無いし.
「嘘じゃないのに」
秋道さんは子供っぽく笑っていた.やっぱり,雰囲気が違う気がする.演技か?
「…そもそも寄り道は嫌ですよ」
まあ平行線なので話を変える事にした.
「良いじゃん.寄り道ぐらい,暇でしょ.」
暇でしょって決めつけて来た.
もしかしたら,僕が死ぬほど忙しいかも知れないし,裏でめちゃくちゃモテるような活動してるかも知れないし(何か分からないけど),裏で彼女がいたり,遊んでたりするかもしれないだろ.
まあ,そんな事無いんだけどな.
裏で何かしてる人間は,表でも良い立場にいるし,実は凄いやつなんて,悲しいがいない,多分.
少なくとも僕は違う,一度諦めた人間はもう駄目だ.僕にはそんな事する権利が無い.
でも,とりあえず
「ちょいちょい失礼ですよね.秋道さん」
それだけは確かだった.
「凄い考えてたけど,暇じゃないの?」
秋道さんはじっと顔を見て来た.
「……暇ですけど.」
「じゃあ,良いじゃん.喉が乾いたから駅前……ショッピングモール側でなんか飲もうよ」
駅前で良いじゃん.行かないけど.
「何で遠い方に行かないといけないんですか?それにお金もったいないですし.」
それにお金は持って無かった.
秋道さんは数秒考えて
「ええ,じゃあ,公園で良いよ.自販機のジュースで我慢するから.ね良いでしょ.」
そう言ってこっちをガン見して来た.
「……」
いや,何で.
「じゃあ,春樹君の飲み物も奢ってあげる.」
飲み物でそんな奢られるぐらいで
「……お供させて頂きます.」
気が付けば頭を下げていた.いや仕方ない.無料で飲める飲み物とかしょうがない.
「……じゃあ,行こう.公園そこだし.」
秋道さんが指差した方向には,公園があった.いや,もしかして最初からこれが狙いか.
「意外と策士ですね.秋道さん」
「そう?」
「ちょうど今,公園の目の前ですよね.たまたまですか?」
「たまたまです.」
秋道さんはニヤッと笑っていた.……ペースを奪われてる気がする.めんどくさい.もう,こうなったら,貴族の遊びに,一軍の遊びに付き合って打撃を与えよう.没落貴族に出来る僕の抵抗だ.
「はぁ,まあ良いですけど.自販機に行きましょう.奢って下さい.」
「うわー,遠慮とか無いの?春樹君」
「気がついたんですよ.どうせ貴族の遊びに付き合わされるなら,少しでもダメージを与えようって」
「…だから,違うのに.」
「昨日のは?どうですか?」
少なくとも昨日のは貴族の遊びだろう.
「昨日のは,それは……ジュース2本飲みますか?」
秋道さんは自白していた.やっぱりね.だとしたら今日のこれは何だ?まあ,昨日のは,もう僕も言いたい放題言ったから良いよ.
「……それは大丈夫です.まあ良いですよ.僕も言いたい放題するんので精々貴族の遊びを頑張って下さい.」
「だから,今回は違うだけどな.でさ,今更だけどさ,貴族の遊びって何?」
秋道さんは,自販機でジュースを買いながらそう言って不思議そうな顔をしていた.『今回は』という点を聞き返しても良かったが,流石にジュースに免じてやめて置いた.
「それを飲んでさっさと帰って下さい.」
「えー断る,ゆっくりおしゃべりしよーよー」
秋道さんはジュースを抱え込んで笑っていた.なるほど,何が目的だ.
「……置いて帰りますけど.」
「そしたら私がここで泣き叫んである事,無いこと言うよ.」
最悪だ.悪魔かよ.いや,でも僕に失うものが……いや冤罪は嫌だ.
「……じゃあどうしたら帰りますか?」
「じゃあ,連絡先教えて春樹君」
秋道さんはニヤリと笑った.ああ,この人策士だ.
「……」
多分,これを想定してる,演技派だ.何が目的だ?嘘告白するには手間かけすぎだ.昨日の低クオリティと大違いすぎる.何が目的だ?
「ねっ,良いでしょ.ジュースあげないよ.」
「……」
終わりそうに無いので,僕は連絡先を引き換えにジュースと自由を得た.
「これで,まずは友達に一方近づいたね.春樹君.」
秋道さんはニヤッと笑っていた.
「じゃあ,帰りましょうか.さようなら」
帰ろうよく分からないし,秋道さんは暇なのか?
「待って,待って,春樹君.家どっち?」
「あっち」
指差した方向が同じだった.
「間違えました,あっちです.」
急いで反対を指差しておいた.
「もう,遅いからね.同じ方向だね.もうちょっと一緒に帰りましょ.春樹君」
マジかよ.めんどくさいし,罠がいつあるか分からないし,何が目的だ.
嘘告白する為の準備なら時間かけすぎでしょ
.暇なのか?ああそうか,暇つぶしか.でもだとしたら,一軍メンバーといる時と何故キャラが違う?……いやこっちを侮ってるだけか.だったらやっぱり,普通に暇なのか
「……暇何ですね.秋道さん」
いろいろ考えた結論がそれだった.
「何で?」
秋道さんは小首を傾げていた.
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